無意識の気まぐれ、運命のいたずら~『コード・ブルー3』第8話
「藍沢ビール」みたいなデザインの「贅沢麦酒」を美味しそうに飲み
干しながら、アラサー女子2人が夜の部屋で悦ぶ。藍沢(山下智久)
自慢のモノ、ピスタチオの殻のタワーを積み上げながら。ゴクッ。。
やっぱり、無意識の欲望の歪曲だね♪ もちろん、女子の友情を描く
ように見せかけて、その奥に「男」への熱い憧れが現れてる。第4話
だと、その向こう側に白い小僧まで立ってたのだ。象徴表現の道具
立てが一式揃ってる。
以前の葉山浩樹の演出を、今回の田中亮が何気に受け継いだと。
しっとり味わい深いの葉山、フツーの田中、動きが派手な西浦正記。
分かりやすい演出のバリエーションで、いいね♪
☆ ☆ ☆
まあ、緋山は緒方(丸山智己)とデートしたし、その前にも隔離室で
ラブラブだったし、藍沢のタワーは白石(新垣結衣)に譲るんだろう。
今回は白石が密室で眠ってる所に藍沢がこっそり侵入してたほど。
死語を使うなら、夜這いだ♪ 昼だろ!
やっぱり、緋山&緒方、白石&藍沢、冴島(比嘉愛未)&藤川(浅利
陽介)、灰谷(成田凌)&横峯(新木優子)、名取(有岡大貴)&雪村
(馬場ふみか)でカップルは決定か。
で、ヘリ担当の町田(伊藤ゆみ)は、「ヘビ担当」ってことで♪ 「余計
なこと言わない!」(by 冴島)。ちなみにヘビとは、ピスタチオ・タワー
の代わりとなる男性的なモノの象徴。
実際、物語の流れを確認しておくと、白石と藍沢のシーン、町田と
ヘビのシーン、緋山と緒方のシーン、そして、白石&緋山と藍沢
ピスタチオタワーのシーンとなってる。女性的なものと男性的なもの
の対応、その連鎖は明らかだった。解釈とは、こうゆうことだ。
☆ ☆ ☆
ちなみに今、このブログ執筆欄の右側には、「注目のニュース」
3位で、「月9 視聴率の低下が止まらず」という見出しが出てる。
昨日(17年9月4日)アップされた「まいじつ」の記事で、脚本が
悪いとか書いてた。
ドラマの視聴率とか今のテレビ界が分かってる人間なら、逆風が
吹き続けるフジと月9で『コード・ブルー3』が健闘してるのはすぐ
分かるはず。他の連ドラと比べても、今季断トツの首位。
おまけに第8話の平均視聴率は15.4%に急回復(ビデオリサーチ、
関東地区)。裏番組が先週(24時間マラソンSP等)ほど強くなかった
おかげもあるだろうけど、強いのは事実。第9話は15分拡大、10話
(最終話)は30分拡大だ。おそらくその後も狙ってるだろう。実際、
先週話題になった同じフジの『救命病棟』シリーズは延々と続いてる。
そもそも、脚本がどうとか言うのなら、脚本をきっちり読みこなすのが
大前提。安達奈緒子の優秀さは至る所に表れてるのだ。
(追記:緋山に関連する一部の批判については、この記事末尾の
P.S.参照。)
たとえば、今回の灰谷と名取の本質的関係が分かるだろうか。その
先に新海(安藤政信)も結び付ける物語の基本構造が読み取れる
だろうか。
☆ ☆ ☆
白石に自殺かどうかをたずねられて、駅のホームから落ちた灰谷は
こう語ってた。
あの時 一瞬思っちゃったんです
この一歩を踏み出せば 楽になれるかなって
灰谷の無意識的な自殺願望が、気まぐれのように顔をのぞかせた
ということ。運命のいたずらで、結果的には助かったものの、指導医
でスタッフ・リーダーの白石は絶句。
その直後、名取が緒方に告白したのだ。緋山がエボラの疑いで隔離
されてしまったのは「俺のせい」だと。単なる針刺し事故(インシデント)
にしては、名取の落ち込みやその描写は大げさ過ぎる。
要するに、名取は緋山&緒方に嫉妬してたから、「針を刺したのは
単なる偶然じゃなかったかも」と罪責感にとらわれてるのだ。灰谷の
言葉に合わせるなら、次の通り。
あの時 一瞬思っちゃったのかも
この一針を刺せば スッキリするかなって
オレが緋山先生を「刺し」たい。 もちろん、あの場で実際に意識した
ことではないし、日本では未確認のエボラ出血熱(エボラウイルス病)
とは思ってなかったはず(最後、遺伝子を増幅するPCR検査の結果
も陰性、エボラでない)。
灰谷は、自分の無意識の気まぐれで落ちた自殺もどきだと思った。
名取は、自分の無意識の気まぐれで起きた過失致死かもと思った。
こうした関連が分かってると、さらに今回のラスト、新海が藍沢に告白
したのも同じ流れだと分かるはず。灰谷バージョンでセリフを書き直す
なら、次の通り。
あの時 一瞬思っちゃったんだ
この手術をすれば お前を出し抜けるかなって
無意識の気まぐれ、運命のいたずらの主たる被害者は、灰谷だと
自分自身、名取だと緋山、そして新海だと第三者の患者・奏(田鍋
梨々花)ということになる。
☆ ☆ ☆
3人の男の暗くて重い問題を真正面から描くストーリーだからこそ、
藤川の笑いや白石&緋山の仲良し同居で明るく味付けしてあった。
さらに、3つのパターンで共通してるのは、ちゃんと正直に告白してる
こと。灰谷も名取も新海も、自分を見つめて正直に告白するだけの
力は持ってるし、それだけの人間関係も築いてる。心の奥底に抑圧
されたままじゃないから、救いがあるのだ。
「友達」と呼べるかどうかはさておき、話し相手がそばにいてくれると
いう意味では、今回のドラマ全体がホッと安心できる作りになってる。
白石の話は緋山が聞くし、灰谷の話は横峯が聞いてくれる。
もちろん、それは半ば、ハッピーエンド好きのテレビドラマだから♪
本物の現実社会なら、「運命は残酷だ」(by 緋山)。余裕が無いから、
本当の話し相手がいないからこそ、連日のように不幸なニュースが
報道されるわけだ。医療介護関連もそうだし、夏休み明け、9月1日
の子どもたちの悲しい選択も同様。。
☆ ☆ ☆
最後に、医療情報についても確認しとこう。今回、私は初めて字幕
を利用してみた。情報入手としてはすごく便利で、美人ナースの苗字
が広田ってことまで分かった♪ 下垣真香が演じる、広田扶美ね。
あっ、公式サイトにも出てた! ツンツン無愛想な冴島系。
だけど、字幕で映像が制限されるし、録画を一時停止すると文字が
消えてしまう (^^ゞ ウチのテレビだけかね? 仕方ないから再生中
に写メを取って解読。面倒だったけど、手術シーンが全部理解できて
しまった。これだと私が医療関係者じゃないような書き方かも(笑)
まず、エボラ疑惑のジャーナリストの患者・堀内豪に対して、緋山が
名取に「ライン」を取れと指示。注射針を刺して、つながりをつけろと。
橘(椎名桔平)は「プレコーション」と指示してた。「予防措置」を徹底
しよう。
白石が灰谷に電話で指示してた「フェンタ」は、麻酔薬「フェンタニル」。
時間3ミリとは、1時間あたり3mLの注射液ということか。
灰谷と同類の少年、川田慎一君は左脇腹の脾臓の一部、「脾門部」
に「仮性動脈瘤」が出来てたのが破裂。「アレスト」(心肺停止)に。
ところが藍沢たちは「トリプルエー」(AAA=腹部大動脈瘤)の患者に
追われてたから、フェロー3人で応急処置。「アンギオ」(血管造影)室
なんて行くヒマも無くなった。
瞬時の対応として、横峯が思いついたのは、レノア♪ 柔軟剤か!
そうじゃなくて、イケアでもエボラでもなくて、「REBOA」(レボア=
大動脈内バルーン遮断)。カテーテル(管)で血管にセットした風船の
「インフレート」(ふくらますこと)で、血管をふさぐ手術。
実際に「カットダウン」(身体を切開してカテーテルを挿入)して風船
をセットしたのは、名取。見事に成功して、藍沢がチームの大切さを
教えながら褒めたけど、藍沢自身は新海とチームになってなかった
というオチ。これが無いと、単なる平凡で甘口なお話になってしまう。
ちなみにレボアの時、藍沢たちは他の患者の大動脈瘤「ラプチャー」
(破裂)で追われてた。
☆ ☆ ☆
なお、検査結果は、緋山だけじゃなく男性患者もエボラではなかった
ので、念のため。現実でもドラマでも、日本にエボラは発生してない。
世界で騒がれたのは2014年。今年(2017年)の5月にもアフリカ
のコンゴで4人死亡したけど、7月にはWHO(世界保健機関)が収束
宣言した。
エボラと思われる症例(確認済&疑わしいもの)の中で、4人生き
残って4人死亡したから、致死率(case fatality
rate)は50%だとpdfファイルに書かれてる。
緋山が見てた感染症研究センター(同じ名前は実在しない)のHPに
致死率80%と書かれてたけど、世界の様々な文書を見てみると、
数字はバラついてる。要するに数十%で、高いということだ。
☆ ☆ ☆
ただ、死者数を患者数で割った「致死率」とか「致命率」というものは、
厳密に何を何で割った割合なのか統計的に微妙だし、死者数を人口
で割った「死亡率」とは全く異なる。
日本のエボラ死亡率はゼロだし、世界で見ても感染症の中で見ても、
エボラの死亡率はそれほど目立つものではない。
エボラが騒がれるのは、感染したり発症したりした場合に死ぬ確率
(≒致死率)が高いこと、急激に拡大すること、症状が激しいこと、
治療が困難だということなどが理由だろう。発展途上の大陸アフリカ
からの新しい病ということもある。
ちなみに日本で死亡率が高い感染症は、結核、インフルエンザ、
感染性胃腸炎(ノロウイルス、O-157他)。もう一言、日本女性に
ついて付け加えそうになったけど、「余計なこと言わない!」♪
これで「大丈夫」だろう。藤川は「すごい優秀な男」と説明してたけど、
語源的には「とても背が高い男」という意味だ。「丈」とは身長2m。
「エボラ」は語源的に「白い水」という意味らしい。現地の川の名前
「Legbala」(レグバラ?)がフランス語になって、なまったものだ。
おそらく、「エ」が「水」、「ボラ」が「白い」だと思う。フランス語なら
「オ・ブランシュ」。
ちなみに、現地でメジャーなリンガラ語なら「エバレ」(ebale)で「川」。
これは冴島も褒めてくれるかも♪ それでは今日はこの辺で。。☆彡
P.S. 緋山が緒方を隔離用の病室に入れたのはおかしいとか、
「不満が続出」、「現実離れした脚本に視聴者はうんざり」
とか、また「まいじつ」が書いてる。
現実離れはドラマだからある程度当たり前。甘口なのは
確かだが、ツイッター検索をかけてみると、その行為を
批判するツイートは多くない。
逆にオバマ大統領と治療直後の患者のハグに触れる
ツイートは無い。ラストで、白石が緋山に抱きついた
意味も理解されてないということか。発症前の患者との
接触はリスクが低い事も触れられてない。
あれは死んでもいいという緒方の愛の告白だし、エボラ
は空気感染しない。緋山は自宅待機でも良かった状態
だから、病室でなくても他人との接触機会はあった。
「隔離病棟」での厳重管理ではなく、念のための「病室
隔離」。医療のフィクションとして、ギリギリで勝負してる。
P.S.2 京都大学がダウン症用の新物質を「アルジャーノン」
と命名。今日(9月5日)の発表が話題になって、
当サイトの構造式の記事にアクセスが入ってる。
マウス実験が成功とのこと。京都大の発表はこちら。
P.S.3 京都大の英語論文を和訳&解説した記事を翌日アップ。
新化合物「アルジャーノン」、英語論文の和訳
cf. 救命の良心=両親、子ども達のために
~『コード・ブルー3』第1話
「親子の心、共に知らず」、されど共に生きる~第2話
身体の答え、ピアノの答え~第3話
かすかな笑顔、ささやかな花火~第4話
藤色のシオン(紫苑)、他人の命に寄り添って~第5話
過去の負から未来の正へ、脳死と臓器移植~第6話
呵責、責任、罪責感~第7話
大好きなあなたの「死」は見たくない~第9話
仲間と共にトンネルウォーク、光さす出口を探して~最終回
(計 4697字)
(追記 48字 ; 合計 4745字)
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