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カズオ・イシグロ『Never Let Me Go』(わたしを離さないで)、英語原書と英語版ウィキのあらすじ

(☆17年10月20日の追記: ドラマ記事をアップ。

  『わたしを離さないで』第1話、ノーベル賞記念再放送の軽い感想 )

 

 

     ☆        ☆        ☆

最初に正直に言うと、この記事はもともと文学レビューにするはず

だったのに、挫折してしまったものだ。半ば、日記・つぶやきの類の

記事なので、悪しからず♪ 昨日の記事を詳しく書き直した感じだ。

 

本人も含めて全く意外な受賞となった、日系英国人カズオ・イシグロ

(石黒一雄)のノーベル文学賞。金曜日(2017年10月6日)に2つ

の書店で探してみたけど、どちらにも全く見当たらないし、品切れや

売り切れを示す掲示もない。店員に聞こうとしても、たまたま(?)

誰も店内を歩いてないし、サービスカウンターも他の客が占有中。

 

そこで、英語原書の冒頭を読み始めたものの、何とも分かりにくい。

そう言えばイシグロの叔母か誰かの感想も、「難しい」の一言だった。

文体や言葉が凝ってるわけではないし、理屈が難しいわけでもない

けど、雲をつかむような主人公のモノローグ(独白)が延々と続く。

 

状況も人間関係も分かりにくいし、事実と幻想、客観的描写と主観的

思いの区別も意図的にボカされてる。過去を回想してるのか、現在

の思いをつぶやいてるのか、その辺りも微妙。

 

日本語訳で読んでも苦労しそうだから、英語の原文をサラッと読み

流すのは無理だった。仕方なく、途中で英語版ウィキをカンニング

すると、筋書き自体は日本のライトノベルやマンガでもありそうだ。

実際、ヒロイン・綾波レイが複合的なクローンだった人気アニメ、

『新世紀エヴァンゲリオン』ともちょっと似てる。

 

ということは、イシグロ独特の書き方、表現の仕方が、ノーベル賞に

値するということか。。

 

 

     ☆        ☆        ☆

さて、著作権的に違法な情報を除くと、英語の原文を読みたい時の

スタート地点は、amazonかgoogle booksだ。

 

両方を調べると、冒頭は読めることが多いし、グーグルだとかなりの

部分を無料で読めてしまうこともある。特に、英語や古典の場合。

 

171007a

 

Kazuo Ishiguroの『Never Let Me Go』

(邦訳: わたしを離さないで)だと、アマゾンもグーグルも冒頭の

20ページほどが公開されてた。ここでは、アマゾン(英国)の電子

書籍kindle(キンドル)から見てみよう。

 

全体は三部構成で、第一部(1章~9章)、第二部(10章~17章)、

第三部(18章~23章)。2010年のペーパーバックだと、304

ページ。分量的には、普通の長編小説だ。

 

171007b

 

31歳の「介護者」(carer)、キャシー(Kathy)が、自らの経歴

を振り返る形で物語がスタート。既に11年以上で、周囲にはあと

8ヶ月いて欲しいと思われてるらしい。

 

この長さだけなら自慢にはならないけど、自分が担当する「ドナー」

(実は臓器提供用のクローン人間)については、上手く扱って来た

つもり。だから、仕事ぶりに関してはちょっと自慢にはなる。

 

しかし、上手く仕事すること、特に、ドナーを「静か」にさせたことは、

私にとって大きな意味を持つ(means a lot to me)。

もちろん、単なる誇りではなく。。

 

 

      ☆        ☆        ☆

この後まもなく、ヘールシャム(Hailsham)と呼ばれる寄宿学校で

一緒だった仲間、ルース(Ruth)とトミー(Tommy)の話になる。

妙な学校名は、「hail」が「歓迎する」、「sham」が「偽物」だから、

「偽物歓迎」。つまり、クローン歓迎という皮肉。

 

全体の流れが見えない宙づり状態に疲れてしまったので、私は

ここで英語版ウィキのあらすじ(Plot)、人物紹介などを読んで

しまった♪ 『Never Let Me Go』はキャシーが学生時代

に好きだった曲のタイトルらしい。

 

171007c

 

日本語ウィキの3倍くらい詳しい説明になってるけど、ここでは

手短にまとめとこう。以下、内容のネタバレになるのでご注意あれ。

 

ちなみに上の冒頭。小説を直接読むと11年4ヶ月弱の経歴なのに、

ほとんど12年と説明してある。そうした細かい部分についてはあまり

信頼できないかも。

 

 

     ☆        ☆        ☆

 以下、あらすじ(英語版ウィキのプロット)のまとめ。

 

 臓器提供者の世話係であるキャシーは、よく学校(ヘイルシャム)

 時代を思い出す。そこでは、健康の大切さが強調され、芸術作品

 を創ることも重要だった。「マダム」と呼ばれる女性に選ばれた

 ベスト・アートは、ギャラリーに飾ってもらえる。

 

 物語は3人の生徒をめぐって展開される。キャシーの他に、ルース

 とトミー。キャシーはいじめられっ子のトミーの相手をしながら、彼

 への思いを募らせるが、トミーはルースと恋愛関係になる。

 

 ルーシーという保護者(=教官)は生徒たちに、あなた達は臓器

 提供者として生み出された存在だと話したが、みんな静かに運命

 を受け止めた。ルーシーは学校を去ることに。

 

 16歳で、キャシー、ルース、トミーの3人はコテージと呼ばれる

 住居に移動。キャシーは男性と浅い関係を持ってて、自分の性的

 衝動が異常ではないかと心配する。

 

 2人の年上の同居者(クリシーとロドニー?)が、ルースに似た

 女性を見かけて、彼女のクローンとしてルースが作られたのでは

 ないかと話した。5人で探す旅に出かけると、年上の2人が噂話を

 する。ヘイルシャムの生徒だけに特権があって、本当に愛し合う

 カップルは臓器提供を遅らせることができるとか。その後、ルース

 に似た女性を発見したものの、表面的に似てるだけだった。

 

 旅行中、キャシーとトミーは、キャシーが学校時代に失くした音楽

 テープを別々に探す。どうもトミーは、キャシーに特別な思いを

 持ってるようだ。 彼らはテープを発見。さらに、マダムが芸術作品

 を選んでたのは、本当に愛し合うカップルを決めるためではないか

 と考えるようになる。そうした事に気づいたルースは、妨害工作で

 キャシーとトミーの仲を引き裂く。キャシーは一人、去って行き、

 介護者となった。

 

 やがて10年の月日が経過。キャシーはルースの介護者となった。

 もうすぐルースは終わりを迎えるので、トミーも誘ってまた旅に出る。

 そこでルースは、キャシーとトミーの仲を引き裂いたことを後悔し、

 マダムの住所(アドレス)を教える。そして、臓器提供をした後、

 死を迎えた。

 

 その後、キャシーはトミーの介護者になり、愛を育み始める。トミー

 のアートをマダムの家に持って行き、臓器提供の延期を求めた

 けど、無理だった。実は、そんな延期の規定など無かったのだ。

 

 トミーの最後の臓器提供の前に、キャシーは辞めて、彼の前から

 消え去る。小説の最後はキャシー一人で、トミーは既にいない。

 キャシー自身の臓器提供もまもなく始まる。。

 

                 (あらすじ終了)

 

 

      ☆        ☆        ☆

何とも悲しい物語で、SFというより近未来の予測みたいだし、既に

ある程度は現実のものとなってることだ。

 

生殖医療や遺伝子操作技術は、倫理的な歯止めのきかない流れ

になりつつある。より良い人体を求める、果てしない欲望のたわむれ。

 

「マダム」とは明らかに、救い主のように見える存在のことだろう。神

にせよ、最高権力者にせよ。そこに微かな希望を持って、真実の愛

と共に助けを求めると、何の救いも無かった。この辺り、イシグロの

宗教観を示してるのかも。

 

ちなみに去年(2016年)のTBSドラマだと、キャシーは保科恭子

(綾瀬はるか)、トミーは友彦(三浦春馬)、ルースは美和(水川

あさみ)へと変更されてるようだ。公式サイトの相関図より

 

受賞後の放送なら、平均視聴率が6.8%に留まることはなかった

はず。かと言って、今さら再放送しても、時すでに遅しか。。

 

(☆追記: 10月18日から深夜に再放送されることになった。)

 

 

      ☆        ☆        ☆

なお、「Never Let Me Go」の「Go」には、「死ぬ」と

いう意味もある。つまり、タイトルには、「わたしを死なせないで」とか

わたしを逝かせないで」という意味もある。

 

ひょっとすると、「Go」には「役立つ」という意味も込められてるかも

知れない。「わたしを役立たせないで」。つまり、わたしの臓器提供

を止めて、という解釈や深読みも一応可能。

 

まあ、原作を読まずに語るのはこのくらいに留めとこう。

それでは今日はこの辺で。。☆彡

 

 

               (計 3267字)

     (追記 89字 ; 合計 3356字)

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