体内時計と遺伝子の解明~ノーベル医学生理学賞2017、授賞理由(英語原文と和訳)
今年(2017年)のノーベル生理学・医学賞は、残念ながら日本人
研究者ではなく、米国人だった。総選挙や米国乱射事件と重なった
こともあって、メディアの扱いはかなり小さくなってるが、内容は身近
で分かりやすい。約24時間周期の体内時計のメカニズム解明だ。
そこで今回も、英語の公式HPからコピペ&翻訳させて頂こう。世界
レベルの公的発表でもあるし、著作権の問題は生じないと考える。
親しみやすくて味のあるイラストは、今年もニクラス・エルメヘド
(Niklas Elmehed)の作品。許容範囲の引用と考える。
左から、ホール氏(Hall)、ヤング氏(Young)、ロスバシュ氏
(Rosbash)の3人。
cf. 大隅良典教授のノーベル医学生理学賞2016、
受賞理由(英語原文と和訳)
大村智教授のノーベル医学生理学賞2015、
受賞理由(英語原文と和訳)&休養ジョグ
☆ ☆ ☆
英文和訳の前に、プレス・リリース(報道機関向けの発表)の
イラストを使って、話の大枠をつかんでおこう。もちろん、本当は
もっと複雑なシステムとプロセスだ。
上から時計回り(=右回り)に、1、2、3・・・と6つの細胞の絵
が並んでる。日経サイエンスの解説を参考にすると、大体、上半分が
昼間、下半分が夜間のようだ。
まず、1番から。昼の間に、核の中で、時計遺伝子(長くつながった
ギサギザの一部)から、メッセンジャー(伝令)の働きをするリボ核酸、
mRNA(ミミズ1匹みたいな絵)が作られる。次に2番。mRNAから、
PERタンパク質(ひもの塊みたいな絵)が作られる。
3番は夜で、PERが核の中に移動。4番で、PERが遺伝子の働き
をブロック(阻害)。5番で、新たなPERが作られなくなる。6番は
朝で、PERが分解されて消滅。また1番に戻って循環する。
☆ ☆ ☆
では、授賞理由の英文を日本語に訳す。pdfファイル冒頭の主要
部分のみ。
Nobelforsamlingen
The Nobel Assembly at Karolinska
Institutet
ノーベル会議
カロリンスカ研究所・ノーベル会議
The Nobel Assembly at Karolinska
Institutet has today decided to
award the 2017 Nobel Prize in
Phisiology or Medicine
jointly to
Jeffrey C.Hall,Michael Rosbash
and Michael W.Young
for their discoveries of molecular
mechanisms controlling the
circadian rhythm
カロリンスカ研究所のノーベル会議は今日、2017年のノーベル
生理学・医学賞を、ジェフリー・C・ホール氏、マイケル・ロスバシュ氏、
マイケル・W・ヤング氏に合わせて贈ることを決定した。
概日リズムを制御する分子メカニズムの発見に対して。
SUMMARY
要旨
Life on Earth is adapted to
the rotation of our planet.For
many years we have known
that living organisms,including
humans,have an internal,biological
clock that helps them anticipate
and adapt to the regular rhythm
of the day.
地球上の生命は、私たちの惑星の循環に適合している。昔から
私たちは、人間も含めた生物が、体内に生物学的な時計を持って
いることを知っていた。その時計は、生物が1日の規則的リズム
を予期し、適合することを手助けしているのだ。
But how does this clock actually
work? Jeffrey C.Hall,Michael
Rosbash and Michael W.Young
were able to peek inside our
biological clock and eluciade its
inner workings.
しかし、この時計は実際、どのように作動するのか? ジェフリー・
C・ホール氏、マイケル・ロスバシュ氏、そしてマイケル・W・ヤング氏
は、私たちの生物学的時計の内側を垣間見て、その内なる働きを
明らかにできた。
Their discoveries explain how
plants,animals,and humans
adapt their biological rhythm
so that it is synchronized with
the Earth’s revolutions.
彼らの発見は、植物、動物、そして人間が、どのようにして、それらの
生物学的リズムを地球の回転に同調させるのかを説明する。
☆ ☆ ☆
Using fruit flies as a model
organism,this year’s Nobel
laureates isolated a gene that
controls the normal daily
biological rhythm.They showed
that this gene encodes a
protein that accumulates in the
cell during the night,and is
then degraded during the day.
生物のモデルとしてショウジョウバエを利用することで、今年の
ノーベル賞受賞者たちは、通常の1日の生物リズムを制御する
遺伝子を分離した。彼らは、この遺伝子がコード化するタンパク質が
夜間に細胞内で蓄積して、昼間には分解されることを示した。
Subsequently,they identified
additional protein components
of this machinery,exposing the
mechanism governing the self-
sustaining clockwork inside
the cell.We now recognize
that biological clocks function
by the same principles in cells
of other multicellular organisms,
including humans.
続いて彼らは、細胞内で自己保存する時計の動きを支配する
仕組みを明らかにし、この装置の別のタンパク質成分を同定した。
私たちは今や、人間も含め、他の多細胞生物の細胞内でも
同じ原理で生物時計が機能することを認識している。
☆ ☆ ☆
With exquisite precision,our
inner clock adapts our
physiology to dramatically
different phases of the day.
The clock regulates critical
functions such as behavior,
hormone levels,sleep,body
temperature and metabolism.
見事な正確さで、我々の体内時計は我々の生理を、一日の内で
劇的に異なる様相へと適合させる。その時計は、行動、ホルモン・
レベル、睡眠、体温、代謝など、決定的に重要な機能を調節する。
Our wellbeing is affected when
there is a temporary mismatch
between our external
environment and this internal
biological clock,for example
when we travel across several
time zones and experience
“jet lag”.
例えば、私たちがいくらかの時間帯を横切る旅行をして、時差を
経験する時など、外的環境と内的な生物時計の間にズレがある時、
私たちの健康は害される。
There are also indications that
chronic misalignment between
our lifestyle and the rhythm
dictated by our inner timekeeper
is associated with increased
risk for various diseases.
私たちの生活様式と体内のタイムキーパーが刻むリズムとのズレは、
様々な病気リスクの増大と関連しているという指摘もある。
以下、省略。なお、今日(3日)はノーベル物理学賞、明日は化学賞
が発表される予定。日本人の受賞に期待しつつ、ではまた。。☆彡
cf. 重力波の観測 by LIGO(ライゴ)
~ノーベル物理学賞2017、授賞理由(英語原文と和訳)
(計 3539字)
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