重力波の観測 by LIGO(ライゴ)~ノーベル物理学賞2017、授賞理由(英語原文と和訳)
2017年のノーベル賞は、最初の3賞で日本人が受賞しなかった
ので、日本のメディア報道はかなり小さくなってしまった。これが本来
の自然な扱いかも知れないが、年に一度の学問の祭典としては、
ちょっと寂しい感もある。後はノーベル文学賞狙いか。
ただ、今年のノーベル物理学賞の業績は、今後の科学の歴史に
残ると思う。少なくとも50年くらい。あるいは、新たな発見や理論に
よって、今回支持されたアインシュタインの一般相対性理論が否定
されてしまうまでは。
イラストの作者はお馴染み、ニクラス・エルメヘド(Niklas
Elmehed)。許容範囲の引用と考える。左から、レイナー・
ワイス(Weiss、85歳)、バリー・C・バリッシュ(Barish、
81歳)、キップ・S・ソーン氏(Thorne、77歳)の3氏。
賞の1/2がワイス氏(ウェイスという表記もあり)に授与されてる
から、中心人物として特別に評価されてるようだ。
☆ ☆ ☆
では、プレスリリース冒頭、授賞理由の英文を日本語に訳してみる。
ほぼ直訳。主要部分である前半だけ扱うので、全文は英語公式
サイトを参照。医学・生理学賞よりシンプルな英文だと思う。
The Royal Swedish Academy of
Sciences has decided to award
the Nobel Prize in Physics 2017
スウェーデン王立科学アカデミーは、2017年ノーベル物理学賞
を、次の3氏に贈ることを決定した。
with one half to Rainer Weiss
LIGO/VIRGO Collaboration
半分は、レイナー・ワイス氏に。ライゴ/バーゴ共同研究。
and the other half jointly to
Barry C.Barish
LIGO/VIRGO Collaboration
and Kip S.Thorne
LIGO/VIRGO Collaboration
そして、もう半分は、バリー・C・バリッシュ氏(同上)と、キップ・
S・ソーン氏(同上)に。
“for decisive contributions to the
LIGO detector and the observation
of gravitational waves”
“ライゴ検出器と重力波の観測に対する決定的な貢献に対して。”
(注. 上図は添付資料の一部。ブラックホールの合体で生じた
重力波を、4kmの線2本が直交する観測装置ライゴでとらえる。
2方向に分かれたレーザーが重力波で僅かにずれて干渉する。
3000km離れた地点に2つ設置して、場所の影響を除去。
なお、ライゴ観測所は天文台と表記する場合もあるが、イメージ
的にはむしろ、装置とか検出器に近い。)
☆ ☆ ☆
Gravitational waves finally captured
重力波が遂にとらえられた
On 14 September 2015,the
universe’s gravitational waves
were observed for the very
first time.
2015年9月14日、まさに初めて、宇宙の重力波が観測された。
The waves,which were predicted
by Albert Einstein a hundred
years ago,came from a collision
between two black holes.
アルバート・アインシュタインによって100年前に予言されていた
その波は、二つのブラックホールの衝突から到来した。
It took 1.3 billion years ago
for the waves to arrive at the
LIGO detector in the USA.
その波が米国のライゴ検出器に到達するまで、13億年を費やした。
(注. 上図も添付資料の一部。ブラックホールの衝突時に、
重力波の振幅が最大になってる。)
☆ ☆ ☆
The signal was extremely weak
when it reached Earth,but is
already promising a revolution
in astrophysics.
その信号は、地球に届いた時、極度に弱かったが、天文物理学
における革命を既に約束している。
Gravitational waves are an
entirely new way of observing
the most violent events in
space and testing the limits
of our knowledge.
重力波は、宇宙で最も激しい出来事を観測する全く新しい手段で、
私たちの知識の限界を試している。
LIGO,the Laser Interferometer
Gravitational-Wave Observatory,
is a collaborative project with
over one thousand researchers
from more than twenty countries.
ライゴ(レーザー干渉計・重力波観測所)は、20ヶ国以上の
国から1000人以上の研究者を集めたプロジェクトである。
Together,they have realised a
vision that is almost fifty
years old.
力を合わせて、彼らはほとんど50年前からある構想を実現した。
The 2017 Nobel Laureates have,
with their enthusiasm and
determination,each been invaluable
to the success of LIGO.
2017年のノーベル賞受賞者たちはそれぞれ、熱意と決断力を
もって、ライゴの成功にとって計り知れない貴重な存在だった。
Pioneers Rainer Weiss and Kip
S.Thorne,together with Barry C.
Barish,the scientist and leader
who brought the project to
completion,ensured that four
decades of effort led to
gravitational waves finally
being observed.
開拓者のレイナー・ワイス氏とキップ・S・ソーン氏は、プロジェクト
完結リーダーである科学者バリー・C・バリッシュ氏と共に、40年の
努力を重力波発見へと確実に導いた。
それでは今日はこの辺で。。☆彡
cf.「重力波」観測の英語論文、要約(アブストラクト)の日本語訳
体内時計と遺伝子の解明
~ノーベル医学生理学賞2017、授賞理由
(計 2708字)
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