『陸王』第1話、人間本来のミッドフット着地走法は底の薄い裸足感覚の靴で
ドラマ好きのランナーとして一応、初回の2時間SPを見てみたTBS
『陸王』。マラソン・ドラマと言うより、老舗の足袋屋復活ドラマに近い
印象だった。
池井戸潤原作の日曜劇場は、『半沢直樹』も『下町ロケット』も全く
見てなくて、今回もあくまで、マラソンとシューズが目当て。
勧善懲悪、地味な努力による逆転劇や成功、素朴な人情。こうした
ものはノンフィクションや身の回りの現実なら好きだけど、ドラマや
映画、文学といったフィクションで扱われるのは正直かなり苦手だ。
派手な音楽(服部隆之)。説明的で起伏の激しいベタな脚本(八津
弘幸)。わかりやすい演出(福澤克雄)。
素直な私ならむしろ、悪役銀行員やライバル企業のアトランティス
を応援する♪ それこそ本物の逆転、驚きの創造だ。
☆ ☆ ☆
ただ、ある程度の視聴率は取るだろうなと思ってたら、初回視聴率
は14.7%で、まずまずの好発進。あの路線には固定客が多いと
いうことか。あるいは、きねや・・じゃなくて、こはぜ屋の女性従業員
の平均年齢の成功かも♪ まさか50歳代半ばの設定とは。。
見どころの一つ、豊橋国際マラソンは、本物の現役ランナーらしい
サイラス・ジュイがわざとスピードを緩めて、茂木選手(竹内涼真)に
抜かれたシーンが笑えた♪ 役者じゃないから、あれはあれでOK。
ケニア出身、31歳。フルマラソンのベストは2時間09分10秒。
東京マラソン2011で5位に入賞した時の記録。
2015年から2016年にかけて、ドーピング疑惑で資格停止処分
を受けてるけど、風邪薬という主張が認められたのかな。すぐ復活
して、ゴールデンタイムのテレビに起用されてるほどだから。
☆ ☆ ☆
さて、ランナーにとって気になるのは、10年ほど前から一部で地味な
話題になってる、裸足感覚のランニングシューズと走法だろう。
私はドラマを見てる途中、すぐにマラソン足袋のモデルを検索して
みたが、ヒットするのは個人サイトばかりで、「きねや足袋」らしいと
いった感じの事が書かれてる。過去の経験上、情報の信頼性が低い
ので、実際にきねやHPにアクセスしてみると、なぜか『陸王』関連の
記事が読めない状況。アクセス集中でサーバーがダウンしたのか?
しばらく後でアクセスすると、ちゃんと読めた。
「小説及び2017年10月15日放映開始のドラマ『陸王』に
登場する足袋シューズは弊社きねや足袋の“ランニング
足袋 きねや無敵”をモデルにしたものではありません。」
かなり断定的に、ウワサを否定してる。原作者の池井戸潤も、取材
でお世話になったけどモデルではないと何度かツイート。ちなみに、
きねやの「無敵」は、楽天やamazonで5500円くらいで売ってた。
アマゾンのレビューの評価は高いけど、身の回りで見た覚えは無い。
ただ、きねや足袋がドラマの「足袋協力」であることはエンドロール
で確認できたし、「無敵」以外の新しいきねやランニング足袋との
関係は不明(近日発売らしい)。きねやの側で、『陸王』を少し意識
する可能性は一応あると思う。トレール(山道)ラン用に、「山王」を
売り出すとか♪ ないだろ!
☆ ☆ ☆
ドラマの中ではまず、こはぜ屋四代目・宮沢(役所広司)が大きめの
スポーツ用品店で、はだし感覚のランニング・シューズを見つける。
驚いたことに、なぜかここだけ実在する企業、Vibram社のファイブ・
フィンガーズ(5本指シューズ)を使って、店員のセリフにも出てた。
ところがエンドロールには名前がない。複雑な大人の事情だろうか。
日本の代理店的な会社では、ドラマに取り上げられたと報告してた。
ドラマに戻ると、宮沢はその後、小さなスポーツショップに行って、
有村(光石研)の理論的指導を受ける。まとめるとこんな感じの内容。
── 最近、ランナーのケガが増えてるのは、単にブームで人数
が増えただけではない。流行の分厚いソール(靴底)と踵のせいで、
踵から着地するヒール着地になってしまい、衝撃を受けてるからだ。
それに対して、人間本来の走りはミッドフット着地走法。足の真ん中
で足裏全体を使って着地するから、衝撃を吸収できるしエネルギー
効率も良い。
そもそも、人類の歴史でホモ・サピエンスが生き残ったのは、長距離
を走れて狩りに向いてたから。それはミッドフット着地のおかげだと
最近の研究で言われてる。逆に、短距離しか走れなかったホモ・
ネアンデルターレンシスやホモ・フロレシエンシスは滅びた ──
☆ ☆ ☆
上のような、ドラマの脚本・セリフ通りの情報は、日本のサイトを検索
しても全くと言っていいほどヒットしない。ごく一部の情報によると、
原作小説にそれに近い記述があるようだけど、ちょっと違う感もある。
後で原作をチェックしてみたい。
ただ、仮に池井戸潤が小説『陸王』でそう書いてるとしても、それが
学問的に正しいかどうか、根拠があるかどうかは別問題だ。
私は英語でかなり検索をかけてみたけど、ぴったり来る学術情報は
一つも発見できない。リーバーマン教授(Daniel Lieberman)
の『Nature』レター論文(2010年)が可能性として考えられる。
ただ、そこに書いてあるのなら、誰かが引用してる方が自然なのに、
そうした引用は見当たらない。
☆ ☆ ☆
断片的に似た話なら、あちこちの情報にあるから、それらを原作者
か脚本家がつなぎ合わせて創作したのかも。いずれにせよ、10万年
前とかの人類の祖先がどのように走ってて、それが生存競争とどう
関係あるのか。かなり大まかな仮説の域を出ないはずだ。
今現在でさえ、走法の論争はある。ミッドフット着地やフォアフット
着地だと、ふくらはぎやアキレス腱の負担が増えてしまうリスクが
ある点は、リーバーマン教授も認めてることだ。
実は、ビブラム社の5本指製品、ファイブ・フィンガーズには、米国で
訴訟が起きてて(健康効果の誇張)、2014年に和解案を提示した
というニュースもある。
株式非公開で、会社情報もあまり公開してないので、注意は必要
だろう。アシックスやミズノ、ナイキ、アディダスとは違う。ちなみに
ニューバランスは非公開とのこと。。
☆ ☆ ☆
なお、裸足ランのバイブルとなってる『BORN TO RUN』(走る
ために生まれた)の英語原書で、書籍内検索もやってみたけど、
ドラマとほんの少し似た話がヒットした程度だ(アマゾンとグーグル、
両方とも)。
アトランティス社のモデルは、私の愛するアシックスとか、ネットで
言われてるけど、大手企業でシューフィッターを置いてて、有力選手
に靴を提供してるというだけ。
その程度の類似なら他の社でもあるし、「ア・・ス」という名前や「村」
がつく有名人(三村仁司)に注目するなら、アディダスも同様。原作者
がモデル企業を挙げてるわけでもない。
個人的には、試しに足袋タイプのシューズを履いてみたい気もある
けど、指の股の靴ずれが痛そうだし、外見とソックスも気になる。
シューズの内側に、普通の足袋を履くのは目立ち過ぎるだろう♪
どうもこの種の話は、一部の人の趣味や一時的流行のような気が
する。自然派と新しもの好きに、原点回帰をトッピングした感じか。
私は今後も、アシックス派として走り続けるつもり♪
それでは今日はこの辺で。。☆彡
cf. 裸足の原始的ランニングと現代人
~『BORN TO RUN』(朝日GLOBE)
(計 3017字)
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