「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)、数学ⅠA・第3問(高速道路の確率)の解説
先日は国語について記事を書いたので、今日は数学Ⅰ・数学Aに
ついて書くことにしよう。大学入試センターの公式サイトで公開中。
私自身の感覚だと、どれも面白くてよく考えられた問題だ。現代性
や日常性も考慮されてて労作だと思う。しかし、全国の普通の高校
2年生、3年生は、難しい、あるいは大変だと感じただろう。
まだマークシート部分の採点だけなので、いずれ記述式の設問の
採点が終わると事態はますます明らかになると思う。「共通テスト」
なのに、「上級テスト」のような結果になってる。
☆ ☆ ☆
必答2問、選択2問、合計4問で70分という時間は、あの問題文だと
かなり短い。特に、問題1(10ページ)と問題2(8ページ)は文章が
長いから、読むだけでも大変。それぞれ4分の1の時間(17分30秒)
だと、肝心の考える時間が足りなくなってしまう。
だから、最初で時間を使ってしまって、後の方の問題にしわ寄せが
来るのではないか。第2問(Tシャツと2次関数、統計・データ分析)
の中盤以降の正答率はかなり低いし(10%前後が4ヶ所)、以下で
扱う第3問(選択率68%)の正答率も、最初以外10~20%(上図)。
特に最後の設問は、四択(四者択一)だから、でたらめに選んでも
正答率25%のはずなのに、実際は12%。ということは全滅に近い
わけで、流石に「良問すぎた」ということか。
☆ ☆ ☆
とにかく、私が一番面白いと思った第3問(場合の数と確率・統計)
を見てみよう。高速道路の渋滞をなるべく少なくする話で、システム
工学とか応用数学の分野だ。似たような話に、道路の信号の制御
などがある。
図の下のA地点から上のB地点に向かう高速道路では、中央を
真っ直ぐ行く経路(A→C→D→B)がメインだが、3ヶ所に分岐点
がある。渋滞の表示がなければ、上のような確率で選択される。
分岐点で片方の道路だけに渋滞の表示がある時には、そちらを
選択する確率がもとの2/3へと減少する。
☆ ☆ ☆
おそらく、そう書けば多少は正答率が上がると思うが、実際の問題
文はわざと読みにくい表現で書かれてるのだ。もちろん、図に確率
の書き込みはないし、やや凝り過ぎで複雑過ぎる出題かも知れない。
例えば、3地点の調査日を別にする必要はないし、書く必要もない。
「いずれにも渋滞中の表示がある場合」という説明も、むしろ無い
方が生徒の誤解が減るかも。
☆ ☆ ☆
それでは、解答と解説、感想を書いていこう。
(1)は、渋滞中の表示がない場合に、A地点で道路①を選択する
確率。私が図に書き込んだように、答は12/13。問題文を読み
取って、約分する。
(2)は、渋滞中の表示がない場合、D地点を通過する確率。
(A→C→Dと進む確率)=(12/13)×(7/8)
= 21/26
(A→E→Dと進む確率)=(1/13)×(1/2)
= 1/26
∴ (Dを通過する確率)= 21/26 + 1/26
= 11/13 ・・・答
(3)は、渋滞中の表示がない場合、D地点を通過した車がE地点
を通過していた確率。原因の確率の公式(ベイズの定理)より、
(D地点を通過した車が、E地点を通過していた確率)
= (E→Dと進む確率)
÷{(C→Dと進む確率)+(E→Dと進む確率)}
= (1/26)÷(21/26+1/26)
= 1/22 ・・・答
もちろん、原因の確率の公式は苦手な生徒が多いので、直感的に
(21/26):(1/26)=21:1 ∴ 1/22
と出す方が実戦的だと思う。
最後に1と21を足すのを忘れて、「1/21」と答えてしまう生徒が
少なくないだろうが。
☆ ☆ ☆
(4)は、道路①のみ渋滞中の表示がある時、D地点を通過する確率。
(道路①を選択する確率)=(12/13)×2/3
= 8/13
∴ (道路④を選択する確率)=1-8/13
= 5/13
∴ (Dを通過する確率)
=(A→C→Dと進む確率)+(A→E→Dと進む確率)
= (8/13)×(7/8)+(5/13)×(1/2)
= 7/13 + 5/26
= 19/26 ・・・答
道路①を選択する確率が減る時、道路④を選択する確率が増す
のを忘れないのがポイント。
☆ ☆ ☆
そして最後の(5)、(6)。問題設定が難しくなる。
ある日(5月13日)の車を計1560台と想定。各道路の通過台数
は1000台以下に留めたい。
(5)は、まず渋滞中の表示がない場合、道路①を通過する台数。
1560×12/13 = 1440(台) ・・・答
そこで、道路①に渋滞の表示を出すと、①を通過する台数は、
1440×2/3 = 960(台) ・・・答
(6)は、選択肢となる図が4つ与えられてる。
直感的に考えると間違えそうなので、真面目にすべて計算する方
がいいだろう。実戦的には、とりあえず勘で何か答えた後、最後に
余った時間で取り組むべき所だ。
0番と1番は、道路③で1000台制限を超えるので失敗。
2番と3番を比較すると、答は3番になる。
(道路①でA→Cと進む車)=960(台)
(道路②でC→Dと進む車)=960×(7/8)×(2/3)
= 560(台)
(道路④でA→Eと進む車)=1560-960=600(台)
(道路⑤でE→Bと進む車)=600×(1/2)×2/3
= 200(台)
(道路⑥でE→Dと進む車)=600-200=400(台)
(道路③でD→Bと進む車)=560+400=960(台)
∴ (道路①②③を通過する車の合計)
= 960+560+960
= 2480(台)
計算自体は小学校レベルだが、問題文を理解して、4つの図で
この計算をするのは面倒。実質的に全滅状態に近くなったのも
うなづける。
☆ ☆ ☆
念のため、公式サイトの正解も引用。基本的には良問だから、
文章をもう少し簡潔にして、計算量を少し減らせばいい。
この問題、よく読むと、本当は渋滞してないのに「渋滞」と表示する
場合があるような内容になってるのが気になる♪
それでは今日はこの辺で。。☆彡
cf. 「大学入学共通テスト」試行調査(プレテスト)、
数学ⅡB・第3問(数列、薬を飲む量と時間間隔)の解説
「大学入学共通テスト」試行調査、
国語・第1問(部活動)の解説・感想
(計 2536字)
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