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ドラマ原案、イプセンの戯曲『民衆の敵』のあらすじ&英語・ノルウェー語原文

今季(17年・秋)は珍しく、2つも連続ドラマを見始めたが、どちらも

すぐ、記事を書く気がしなくなった。過去12年間で初めてのこと。

『陸王』は単純だし、『民衆の敵』は脚本のバランスがビミョー。共に、

萌え要素はゼロ♪

 

とはいえ、私は一応ランナーだし、月曜の夜は気が緩む時だから、

どちらのドラマも大部分は流し見し続けてる。全く見なかったのは、

『陸王』が1回で、『民衆』は2回くらいか。

 

 

     ☆        ☆        ☆

『民衆』の最近のストーリーは妙に暗くて重いものに変質して来たな

と思ってたら、朝日新聞の寸評が目に留まった。朝日は普通、フジ

月9には冷たい反応かほとんど無視なのだが、今回は意外なほど

好意的にプッシュしてる。記者でなくライターだからか(和田静香)。

 

171212a_2

 

コラム名は「TVがぶり寄り」、タイトルは、「民衆の真の敵とは?」。

 

 ・・・回を重ねるにつれ、見る側が試されるすごいドラマだなぁ

 と感じている。・・・ドラマは後半にきてガラリと変わる。・・・

 主人公は、社会を替えるには権力こそが大切で・・・市長選に

 立候補、当選する。当然、操り人形にしたい派閥に利用され、

 信頼は失墜して孤立する。

 

  ドラマのタイトルは、腐敗を正そうとした男性が民衆に敵の

 烙印を押される、イプセンが19世紀に書いた政治が大罪の

 戯曲と同じ。

 

全く知らなかった私は意表を突かれて、直ちに戯曲(演劇の台本)の

英語原文と英語版ウィキペディアをチェック。真っ直ぐな正論過ぎて、

私の趣味ではないけど、ちょっと興味深かったのも事実だから簡単に

まとめとこう。

 

 

      ☆        ☆        ☆

第8話の視聴率(関東地区、ビデオリサーチ)が5.3%で、最低記録

を更新したと伝えられた今日、ネットで「民衆の敵 原作」を検索すると、

かなりの数のサイトがヒットする。

 

しかし、原作というほどの関連でもないので、むしろ「原案」というべき

だろう。ただし、公式サイトのイントロダクションを見ると、イプセンの

戯曲には触れてなかった。題名だけ借用した、オリジナル脚本だと

言いたいわけか。

 

171212b

 

上は元のノルウェー語の原書で、中央に著者の名前(HENRIK

IBSEN:ヘンリック・イプセン)、一番下には1882年と書いてある。

インターネット・アーカイブで公開中、著作権は消滅済みのはず。

 

題名の『EN FOLKEFIENDE』をGoogle翻訳

すると、「AN ENEMY OF PEOPLE」。つまり、

「民衆の、1人の敵」。

 

1つを表す不定冠詞が付いてるので、「民衆という敵」と解釈する

のは難しそうだ。要するに、主人公のことで、戯曲ならストックマン

(男性医師)。ドラマなら、佐藤智子(篠原涼子)。

 

ちなみに、原題を語順までそのまま直訳すると、

「AN PEOPLEENEMY」(民衆・敵)だから、専門

レベルだと、いくつかの解釈が可能なのかも。。

 

 

      ☆        ☆        ☆

それでは、英語版ウィキのあらすじ(5部構成)をまとめてみよう。

主人公以外の登場人物の名前を入れると、逆に分かりにくいだろう

から、省略する。

 

 第1幕 ストックマン夫妻の自宅の夕食会に、兄弟でもある市長、

     新聞編集者が集まる。街の温泉(健康浴場)が汚染されてる

     という噂について話してる時、噂を裏付ける手紙が届く。

     編集者は新聞記事を書くことに同意。ストックマンは、自分

     が街の救世主だと信じる。

 

 第2幕 ストックマンの家で、編集者との連帯関係が深まる。編集者

     としては、汚染問題を街の政治腐敗をあばく出発点にしたい。

     そこへ市長が来訪。街の破壊につながるわがままで、大きな

     視野を持ってないから、もっと穏やかな方法を勧める。しかし

     ストックマンが拒否したので、市長は、彼と家族に悲惨な結果

     が生じるだろうと言う。

 

 第3幕 新聞社では議論の末、行政の闇の暴露はマイナスの効果

     が大き過ぎて疑問だと、態度変更。ストックマンは、それなら

     自分一人で戦おうと決意。街の集会を開いて情報を広めよう

     と考える。彼の妻はリスクを感じつつも、彼のそばに寄り添う。

 

 第4幕 ストックマンは集会で、汚染情報や、街のリーダーの腐敗、

     街全体の堕落について語る。街の人々は侮辱されたと感じ、

     怒りの声が響き渡る。やがてストックマンは「民衆の敵」という

     烙印を押され、街から追放される。

 

 第5幕 家の窓は割られ、娘は学校から追放される。浴場ビジネス

    の利権を獲得した義父からもアドバイスされたが、ストックマン

    は無視。正しい事を行うのに必要なのであれば、「民衆の敵」と

    しての役割を引き受けようと決心する。

 

 

       ☆        ☆        ☆

あらすじを見た所で、ポイントとなる箇所だけ、英語の原文で読んで

みよう。ここでは、電子図書館グーテンベルクを利用した

 

まず、ストックマンの告発に民衆が激怒する場面。第4幕の終盤。

日本語訳は一番下のみ。

 

171212c

 

 The whole crowd(shouting).

  Yes,yes! He is an

  enemy of the people!

  He hates his country!

  He hates his own people!

 

 群衆全体(叫びながら)

   そうだ、そうだ! 彼は民衆の敵だ!

   彼は自分の国を憎んでる!

   彼は自分の国の民衆を憎んでる!

 

 

ちなみに、ノルウェー語原文は次の通り。単語も文法も英語に

ちょっと似てるので、雰囲気は感じ取れる。

 

 「Han er en folkefiende!

彼は である 一人の 民衆の敵

 

171212d

 

 

      ☆        ☆        ☆

最後に、戯曲のラスト。翻訳は中盤から。

 

171212e

 

 Dr.Stockmann. 

  Yes.(Gathers them round him, 

  and says confidentially:) 

  It is this,let me tell you ─ 

  that the strongest man in the 

  world is he who stands most 

  alone.

 

 Mrs.Stockmann 

  (smiling and shaking her head)

  Oh,Thomas,Thomas!

  

 Petra (encouragingly,as she 

  grasps her father’s hands). 

  Father!

 

 

 ストックマン 

  それは、こうゆう事だよ。 

  世界で最も強い男とは、ほとんど一人で立ってる男なんだ。

 

 ストックマン夫人 

  (笑いながら、頭を振って) 

  あぁ、トーマス、トーマス!

  

 ペトラ

  (父の手を握って、激励しつつ) 

  お父さん!

 

 

ノルウェー語のポイント(世界で最も強い男・・・)は、

 den staerkeste mand i verden,

det er han,som star mest alene.

 

171212f

 

 

      ☆        ☆        ☆

最後の最後は、女性2人の愛情溢れる言葉で締めくくってる。

悲劇か喜劇かはともかく、古き良き時代のヒーロー物語。

 

現代日本だと、ドラマでも現実でもあり得ないだろう。むしろ、身近な

女性2人に冷たく非難されて、思い切り凹んで淋しい終了とか♪

 

実は元の戯曲も、真面目な正論というより、シニカル(皮肉)な笑い

を誘うコメディのような気がする。

 

ともあれ、ノルウェー語が意外と読みやすいのを確認したところで、

今日はそろそろこの辺で。。☆彡

 

               (計 2872字)

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