ひらめきの鍵、ボーッとしてる時の脳(デフォルト・モード・ネットワーク)~NHKスペシャル『人体』第5集
去年(2017年)の秋にスタートした、NHKスペシャル『人体』第4
シリーズ。臓器の複雑なつながりを情報「ネットワーク」としてクローズ
アップするというのが、今期のシリーズのテーマだ。
これまで、腎臓とか筋肉とか、意外な物の重要性を強調して来た
のに、今回は予想通り、「やっぱり脳」という話になった。脳はお飾り
社長(タモリ)ではなく、腸・・じゃなくて超優秀な社長(山中)なのだ♪
「腸」を強調した第4回との2本撮りだったのかも。
当サイトでは過去4回、記事を書いてる。最初のプロローグの回だけ
は無い。
腎臓、赤血球・血圧・寿命の肝「腎」かなめ~『人体』第1集
身体の大半を占める脂肪&筋肉、
命を守るメッセージ物質伝達~『人体』第2集
骨(オステオ)が出す若返り物質~第3集
腸の免疫コントロールと腸内フローラ(細菌)~第4集
で、2018年2月4日に放映された第5回のサブタイトルは、
“脳”すごいぞ! ひらめきと記憶の正体
このタイトルだけでも、この番組がバラエティに近いのが感じ取れる。
実際、タモリと『火花』又吉直樹の細かい掛け合いが笑えた今回は、
民放みたいな軽いノリが散りばめられてた。真面目に教養番組と
して見てると、スルーしてしまうかも知れないけど、あのアドリブも
身近な「ひらめき」の実例だろう。
ちなみにオープニングのタイトルバックは縦書きだから、漢数字で
「第五集」。番組最後では横書きだから、アラビア数字で「第5集」。
国営放送らしい使い分けになってた(細かい・・)。
☆ ☆ ☆
冒頭、お笑い界の天才・又吉のCG(?)に対してタモリが突っ込み。
「ルー大柴かと」♪ 画像はNHK公式サイトより引用。試しに検索
してみると、私の清き一票も含めて、そっくり率78%。これはかなり
高い部類だ。
又吉の脳を世界最高性能のMRIで検査すると、明らかに違う点
が分かった。「発言が少ない」、「俺を1回も笑ったことない」とか
タモリが突っ込みを入れる中、正解は、縁上回(えんじょうかい)と
呼ばれる部分が大きいこと。脳の真ん中のやや後ろ辺りで、言語を
司る縁上回が、平均データより3割増しの大きさらしい。
この場面での又吉の反応が、非凡な頭脳を表してた。いいとこもある
けど、少ないとこもあったんでしょうね、と冷静にコメントしたのだ。
これはメディアや広告、日常会話に限らず、学術研究でも見られる
ことで、自分の主張にとって都合の良い点だけ強調する。都合の
悪い点はスルー。番組のこのシーンは、又吉の素晴らしさだけを
わかりやすく主張したいから、大きい所だけ指摘してた。
☆ ☆ ☆
又吉を使った実験では、小説のストーリーを考えてもらって、いい
ひらめきが生じた時にボタンを押してもらう。10分で3回押して、
そのうち2回で興味深い活動があった。
3回の内、2回というのは、少な過ぎて統計学的にほとんど意味が
ないデータだが、テレビだから良しとしとこう。
上図が、又吉がひらめいた時の脳の様子で、世界初の可視化との
こと。美しいイメージング(画像化)なのは確かで、国際電気通信基礎
技術研究所HPは、お知らせでPRしてた。
この脳活動の形が、ボーッとしてる時の脳と似てるらしい。だから、
ひらめきはボーッとした状態から生まれる。。
☆ ☆ ☆
学問的にはかなりビミョーな論理だけど、実際「又吉調べ」によると、
芸人がひらめく時は散歩とお風呂が多いとのこと。本人も夜、散歩
するらしい。今の監視社会、夜中だと通報リスクもあるはず♪ 何か
事件が起きたら、監視カメラの映像から不審者リストに入れられる。
タモリは一応、早稲田大学で西洋哲学を専修してたから、すぐに
「逍遥学派」という言葉を出してた。逍遥とは散歩のこと。古代
ギリシャの大哲学者アリストテレスは、散歩しながら弟子たちに
講義してたから、逍遥学派(=お散歩グループ)と呼ばれてた。
ここで又吉かiPS・山中伸弥教授が、NHKの人気シリーズの1つ、
『ブラタモリ』を話題に出せば良かったのに、誰も出さず。番組に
集中し過ぎた状態で、ひらめきが生まれなかったようだ♪
その代わり、山中教授は、iPS細胞のアイデアはお風呂でハッと
思いついたと話してた。人生でたった1回だけの閃(ひらめ)きだと
自嘲してたけど、ノーベル賞に輝けば十分過ぎるだろう。
20年前のそのアイデア自体はひらめきだけど、今回の番組のこの
場面で話すことはひらめきではない。視聴者にとってはなるほどと
思う話だけど、本人にとっては昔から分かってた事で、ハッとする
ような直感的な新しさはないから。
☆ ☆ ☆
散歩、お風呂、朝の起床後など、ボーッとしてる時の脳の状態は、
「デフォルト・モード・ネットワーク」(初期状態のつながり)と説明
されて、ドレクセル大学のジョン・クーニオスという研究者の映像が
登場。
この人は別に、この概念の提案者とか発見者ではないし、日本では
ほとんど無名のようだ。めぼしい記事は、ウォール・ストリート・
ジャーナル(WSJ)のこの記事くらいか。ジョン・クーニ「ア」スと表記
されてる。とにかく、世界的にもメジャーではなさそうだし、英語の綴り
もなかなかネットで発見できなかったほど。
綴りはJohn Kouniosで、おそらく下の論文が最初の
重要な業績だと思う。『Neuropsychologia』(神経心理学)
電子版で2007年、雑誌で2008年に発表。
The Origins of Insight in
Resting-State Brain Activity
(安静状態の脳活動における、ひらめきの起源)
☆ ☆ ☆
ここでは、「ひらめき」という言葉は、「Insight」(インサイト、
直感)とか、「Aha!」(ア-ッ)と表記されてる。
英語版ウィキで「default mode network」の項目を
読むと、この人の名前は見当たらないし、ひらめきにピッタリ相当
する英単語もなかなか見当たらない。
公平にまとめると、ボーッとした初期状態の脳に色んな活動や機能
があるのは昔から分かってたけど、ひらめきに注目したのが、この
人達の研究。ただし、広く共有された主張ではないし、ボーッとした
状態こそ素晴らしいというような話にもなってない。
まあ、眠ってる間でさえ脳が活動してるという話もあるし、何かに
意識的に集中することだけが大事ではない、といった感じか。
私の場合、ランニングが脳活動を支えてる気がする。走ってる途中
とか、走った後のボーッとした時にひらめくというより、普段の脳の
動き全体へと、静かにパワーを与えてると思うのだ。体調管理という
側面も含めて。。
☆ ☆ ☆
なお、脳のネットワークを織りなす神経細胞のつなぎ目、シナプス
は、こんな図で説明されることがほとんどだろう。
たまねぎみたいな形が神経細胞(ニューロン)の端で、その接合部
あたりをまとめてシナプスと呼んでる。隙間だけならシナプス間隙だ。
英語版ウィキを見ると、シナプスの他のタイプも色々と載ってた。
番組では、神経に切れ目が入ってる理由として、ヴァリエーションを
もたらすためだと説明してた。1000億個の細胞が数十~百種
のメッセージ物質をやり取りすることで無限の組合せができると。
1回の時間は僅か1万分の1秒程度。
しかし、メッセージ物質をどれか一つ選択するためには、その直前
の電気信号(その他)に違いがあるはず。それなら、その電気信号
などのヴァリエーションだけで十分な組み合わせ数になるはずだ。
☆ ☆ ☆
したがって神経の切れ目と伝達物質には、組合せの多様化以外に、
複雑な役割や意義があるはず。問いを投げてたゲストの菅野美穂
も、その辺りがまだしっくり来てない様子にも見えた。
まあ、単なる進化プロセスの偶然で、遠い将来には神経はつながる
のかも知れないけど。実際、人工知能やコンピューターの配線は
基本的につながってるはずで、つながってても非常に優秀な活動が
可能だ。他にも、機械と人間が融合していけば、全体としてはかなり
つながってることになる。
とりあえず、今日はもう時間も字数も残ってないから終わりにしよう。
ではまた。。☆彡
cf. 母と子のネットワーク、生命誕生~『人体』第6集
ガン細胞のメッセージを逆用、健康長寿~最終回
(計 3351字)
(追記 48字 ; 合計 3399字)
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