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ビリー・ワイルダー監督「映画の8割は脚本で決まる」、英語原文~『コンフィデンスマンJP』第4話

今回も虚実入り乱れる妖しい内容だった、『コンフィデンスマンJP』。

もともとドラマも映画もフィクション(虚構)だが、信用詐欺というもの

がテーマだから、作り物っぽい怪しさを前面=全面に押し出してる。

 

おまけに今回は完全な「劇中劇」。ドラマ『コンフィデンスマン』という

劇の中で、映画『立ち上がれ つわものどもよ』という劇を作る構図。

おまけにその映画は偽物という設定で、別の「本物の映画」まで

作って最後に上映してた♪ まさに「映画マニア編」。

 

まずは恒例、冒頭でダー子(長澤まさみ)が読み上げる「名言もどき」

を見てみよう。非営利の個人サイトのレビューにおける限定的引用

なので、著作権などの問題は生じないと考える。

 

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 映画とは、国と国の垣根をなくすこと。

 映画とは、世界の言葉を持っていること。

 映画とは、みんなが見るもの。

 映画とは、人間を知ること。

                 淀川長治

 

 

      ☆       ☆       ☆

日曜洋画劇場エンディングの「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ♪」とか、

独特の語り口と表情で、日本一有名な映画解説者と言っていい、

ヨドチョー(本名・よどがわながはる)。その格言もどきだけど、普通に

検索をかけても信頼できる明確な出典は見当たらない。

 

おそらく脚本家の古沢良太は、(わざと?)ネット検索の先頭辺り

で表示されるサイトから引用してるんだろうと想像する。だからこそ、

いかにも作り物っぽい本を開く趣向になってる。

 

今回も、検索してすぐ表示されるサイトにほぼ同じ言葉が載ってる

けど、出典となる本・テレビ・新聞などの媒体は何も書かれてない。

 

ただ、ある映画ファンブログによると、『淀川長治が遺してくれたこと

~映画が人生の学校だった』(佃善則、海竜社)に、

 「映画は人の垣根も国の垣根もとりはらってくれる」

という言葉ならあるらしい。それをもじったような言葉が、一部の

サイトで拡散してるということか。

 

まあ、彼が言ったかどうかに関わらず、言葉や民族、文化を超えて

楽しめるのは、映像芸術の強み。小説よりは普遍性があるわけで、

もっと垣根が低いのは音楽だろう。

 

もちろん、垣根の低さは逆に主張の大まかさにもなるわけで、小説

ほど細かい主張はできないけど、それはむしろ長所になってる。

 

 

      ☆       ☆       ☆

とはいえ、ヨドチョーの名言もどきよりも、俵屋フーズ社長の俵屋

(佐野史郎)が語ってた台詞の方が正確だし、実力派の脚本家の

考えに近そうだ。

 

 「ビリー・ワイルダーは言いました。

  映画の8割は脚本で決まる。

 

私はあんまし映画を見てないけど、この監督の名前は覚えてた。

マリリン・モンローの代表作の一つ『七年目の浮気』(1955年)

だけ、勉強のつもりで鑑賞したことがある。白いロング・スカートが

風でフワッと浮いて肉感的な美脚が見えるシーンは有名。現在だと

セクハラ騒動を恐れて撮影できないかも♪

 

上の名言の原文と出典は、珍しく一瞬で発見できた。監督名

Billy Wilderで英語のウィキクォート(引用句のウィキ)を

検索すると、上の方にすぐ掲載されてる。『ニュー・ハリウッド:

70年代の米国映画』(1975)という本が出典で、執筆は

Axel Madsen。

 

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 Eighty percent of a picture is writing, the other 

 twenty percent is the execution, such as having 

 the camera on the right spot and being able to 

 afford to have good actors in all parts.

 

 映画の80パーセントは脚本。残りの20パーセントは制作で、

 カメラを正しい位置に置くとか、全ての役に良い俳優を用意

 できることなどだ。

 

8割が脚本だというのは、監督として謙虚な姿勢を示す言葉だし、

自分が英語の脚本執筆を苦手としてたことと関係あるのかも。

ドイツ語圏の出身のようで、例えば『七年目の浮気』だと、もともと

別人が書いてた舞台劇にワイルダーが少し手を加えただけらしい。

ニューヨーク・タイムズの記事が参考になる

 

ちなみに、ウィキクォート以外には信頼できる根拠が見当たらない

ので、ウィキが間違ってる可能性も一応あり。グーグル・ブックス

で書籍内検索をかけても発見できないので、念のため。

 

 

      ☆       ☆       ☆

ドラマに戻ると、個人的には脚本とか演出(今回は金井紘)以上に、

長澤まさみの演技がいい♪ 派手な外見だけでもハマリ役だし、

大げさな演技やセリフ回しも新鮮。

 

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上は、ダー子が映画館で『紳士は金髪がお好き』を見た後の実技

練習♪ リアルサウンドがYahoo!に配信した記事は、『七年目

の浮気』を劇場で観て・・と書いてたけど、勘違いだろう。画像検索

して、『紳士は金髪』だと判明。ただし、「そして枕元にある聖書を

読むでしょう」という字幕に相当する英語のセリフは確認できてない。

 

とにかく、上写真の実技練習では『七年目の浮気』の白いドレスを

着て、モンローになりきってる。左側のカーテンと壁を区切りにして、

左の部屋から右の部屋に移動しながら姿を変える演出も地味に

光ってるけど、それ以上に光るのはやっぱりブロンド女優のお色気。

 

と言っても、実は中国人のカンフー忍者らしい(笑)。マギー・リン

来日時の空港の出迎えだと、「我需要你」(私はあなたが欲しい)、

「我愛你」(私はあなたを愛してる)、「我很喜歡你」(私はあなたが

大好き)とか、ボードに簡体字や繁体字で書かれてた。

 

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上は、エキストラを大勢集めた立ち回りシーンでの、女忍者の

カンフーポーズ♪ 動きの流れの中でピタッとポーズを決める辺り

は流石、様になってる。左手の指、左足の先まで完璧。周囲や

背景に邪魔な下っ端たちが映ってないのは、演出やカメラの技か。

 

女優以外に、いつも感心してるのが美術スタッフさん達の仕事で、

今回なら映画マニア向けの銀座カフェバーの内装はグッジョブ♪

ただ、それは誰でも気づくから、ここでは何気ない看板を確認しよう。

 

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「スワンソン」という妙な名前はおそらく、カツラの「スヴェンソン」を

パロったもの。だからこそ、ハゲ頭が光ってるようなデザインだし、

その左側に佐野史郎の光るおでこが映ってる♪ 後の撮影シーン

では、リチャード(小日向文世)の帽子(ハンチング)がカツラみたい

に飛ぶ昭和ギャグも登場。まさか看板までは、脚本にないはず。

 

手の込んだドラマ作りの出資者となったフジテレビもマニアックで、

短期的には大赤字だろう。2815円以上の♪

 

 

     ☆        ☆       ☆

もちろん脚本も確かにテクニカルで、プロフェッショナルな出来栄え

だった。視聴率9.2%の8割ではないにせよ、3割くらいは脚本の

おかげかも。というか、古沢自身が相当の映画マニアか。

 

俵屋フーズの缶詰「うなぎのカレー煮」で、国産と偽って、実は外国

産のうなぎが使われてるのを告発しようとした宮下(近藤公園)は、

俵屋に脅迫されて告発文を破り捨てる。

 

たまたまそれを知ったダー子達は、まず俵屋から3億円の出資を

引き出した後、映画に出演させる。ところが最後の上映会では、

撮影フィルムが大幅に編集されて、宮下が俵屋に復讐する形に

なってた。撮影時の俵屋の偉そうな台詞が、会社での傲慢な言葉

と重ねられたわけで、劇中劇の特徴の一つ。

 

それでいて、単純で堅苦しい勧善懲悪ストーリーにはなってない。

あくまで、ダー子達は面白がってるし、だからこそ最終的に赤字と

いうオチ♪ 初回に書いたように、本来の意味での「コンフィデンス

マン」、つまり「失敗した自信過剰の詐欺師」で終わってるのだ。

 

 

      ☆       ☆       ☆

脚本には最近の時代状況も加味されてる感がある。俵屋のセクハラ、

パワハラは日本でも延々と話題になってることだし、水かけの暴力は

韓国の「水掛け姫」を意識したものだろう(脚本じゃなくて演出かも)。

 

ただし、「♯Me too」とか「With you」の運動とは決定的に

距離がある。ダー子は自分から「女」を武器にしようと頑張ってて、

周囲の男はむしろ止める側。おまけに最終的に、「女」が「男」(ボク

ちゃん=東出昌大)に負けるという屈折したオチもつけてた。

 

一部の視聴者からのクレームは覚悟の上。クリエイターとしての、

間接的な意思表明だろう。このくらいは表現の自由の範囲内だと。

これもまた、多様性の一つとして許容すべきだと。

 

ますます窮屈になって、反発・反動も増えてる現代社会。適度な

落とし所を探ろうとする穏やかな姿勢で、いいね♪

 

なお、生卵一気飲みと「エイドリアン!」でお馴染み、映画『ロッキー』

は、たまたま先日アマゾンで見てレビューを書いたばかりだ。

それでは今日はこの辺で。。☆彡

 

 

 

cf. confidence man の本当の意味、

  「失敗した」信用詐欺師♪~『コンフィデンスマンJP』第1話

 セドラチェク「欲望は満たされることを望まない」~第2話

 ゴーギャン「芸術は、盗作か革命」、英語&仏語~第3話

 マジンガーZ「パイルダー・オン!」の意味と語源~第5話

 シュリーマン名言のドイツ語原文を発掘♪~第6話

 マザー・テレサ名言「家族を愛しなさい」、英語~第7話

 ヘプバーン名言、レヴェンソンの詩でなく言葉(英語)~第8話

 ブルーン「スポーツは人格を作り上げるのではない」英語~第9話

 ジッド「真実を探しているものを信じよ」仏語と意味~最終回

 

              (計 3632字)

    (追記 163字 ; 合計 3795字)

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コメント

スワンソンはグロリア・スワンソンから。

投稿: | 2018年10月28日 (日) 23時43分

> 名無しさん
  
はじめまして。一口コメントどうもです。
なるほど、私は映像と語感で解釈しましたが、
昔の女優の名前だと。
  
それは有力な仮説ですが、もしそうなら、お店を
紹介する本の見開き2ページに説明がある方が自然。
私が放映当時、あの本の映像をチェックした限りだと、
往年の女優の名前だという説明は見当たりませんでした。
   
まあでも、脚本家の発想はそうかも知れません。
またいつか映像を見る機会があったら、
あらためて細かくチェックしてみます。
   
なお、当サイトはコメントに名前を求めているので、
よろしくお願いします。。

投稿: テンメイ | 2018年10月29日 (月) 02時09分

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