フランスの保守系『figaro』(フィガロ紙)、是枝裕和監督のパルムドール賞に冷たい安倍内閣を批判(仏文和訳)
このニュースをネットで読んだ時、「フィガロは左派だったかな?」
と疑問に思ってすぐ検索したが、やはり保守系だ。ということは、
自国の代表的な賞を冷たく扱う外国を批判してるのか。あるいは、
芸術に関してはやはりリベラルな主張になるということか。
すぐにフランス語で検索して、原文をチェック。日本の報道その他
だと「有力紙フィガロ」とかいう言葉ばかりが目立つが、実際に読むと、
自国のメディア仲間である『ル・ポワン』誌の後追い記事だと分かる。
ポワンは5月20日付け(最初)、フィガロ(LE FIGARO)は
22日付け。下はポワンHPで、実は日本人女性らしき特派員の
名前がある。もともと、フランス人記者の感想ではないのかも。
以下、フランス語の原文と和訳を最初の3分の1ほど書いてみる。
全訳は著作権の問題があるし、フランスは英語圏と比べてかなり
厳しい国なのだ・・・というのは言い訳が8割だ♪ それより、眠いし
時間もないもんで。
ちなみに私は是枝裕和監督の才能(映像、脚本)は認めるが、彼の
政治的姿勢には距離を置いてる。というより、彼の姿勢に限らず、
政治的なもの一般に対して、距離を保ってる。あくまで中立的な観点
から、フランスメディア2つの主張を具体的に確認するだけなので、
念のため。たまに書いてるフランス語記事の1本だ。
☆ ☆ ☆
Une affaire de famille: la palme de l'embarras
pour le gouvernement japonais
『家族の問題』(邦題 万引き家族):
パルムド困惑賞を日本政府に
Alors que Hirokazu Kore-eda a reçu la
prestigieuse récompense au Festival de
Cannes, le Premier ministre nippon,
d'ordinaire louangeur envers se
ressortissants primés à l'étranger,
est resté silencieux.
ヒロカズ・コレエダがカンヌ映画祭の名高い賞を獲得。
ところが日本の首相は、沈黙したままだった。いつもなら、
自国民が外国で受賞すると称賛するのに。
Et pour cause, le cinéaste ne cesse de
dénoncer la politique de l'archipel dans
ses films ou dans ses interviews.
これでは、その映画人が作品やインタビューで日本列島の
政治を告発し続けるのももっともだ。
☆ ☆ ☆
Le gouvernement japonais n'a pas pour habitude
d'être avare en éloges envers ses ressortissants
récompensés par un prestigieux prix a l'étranger.
日本政府には、外国で賞を獲った自国民への
称賛を惜しむ慣習はない。
Des Nobel de médicine 2016 Yoshinori Oshumi,
(注.原文のミスのまま) et de littérature
l'année suivante, Kazuo Ishiguro aux récents
médaillés d'or de la délégation nippone aux
Jeux olympiques de Pyeongchang, tous ont
été félicités, puis reçus par le Premier
ministre Shinzo Abe.
2016年ノーベル医学賞ヨシノリ・オースミや翌年のノーベル
文学賞カズオ・イシグロから、ピョンチャン五輪日本選手団
が最近獲った金メダルまで、まず祝辞を受け、さらに招待も
されてる。
Hirokazu Kore-eda, lauréat de la palme d'or au
71e Festival de Cannes pourrait bien passer
outre la coutume d'après nos confrères du Point.
ヒロカズ・コレエダは、第71回カンヌ映画祭のパルムドール
受賞者だが、我々の同業者『ポワン』によると、これまでの
慣習を破ってしまうことになるだろう。
Et pour cause, Une affaire de famille, son
long-métrage primé, se veut très critique
vis-à-vis du gouvernement conservateur.
彼が受賞した長編映画『家族の問題』(万引き家族)が、
保守内閣に対して批判的であろうとするのももっともなこと。
D'autant plus que le cinéaste s'est montré virulent
à propos de la politique culturelle du pays du
Soleil-Levant par le pasée.
この映画監督は以前、日が昇る国の文化政策に関して
辛辣な態度を示していたのだから。
☆ ☆ ☆
フィガロの記事は最後に、菅・官房長官のうわべだけの賛辞を
皮肉った後、外見の醜さにコメントして締めくくってる。
日本の大新聞なら、左派の朝日でも書かないし、毎日・東京でも
まず書かないだろう。もし書いたら、差別発言としてかなり批判を
浴びそうな文章だ。政治にうるさく、表現の自由を尊重するフランス
の感覚だと普通なのだろうか。
なお、フィガロの部数は2017年で30万部。日本の三大紙の
10分の1から30分の1程度で、日本の週刊誌くらいの数だ。
ここ5年で部数は急減。有力紙といっても、メディアとしてそれほど
の余裕はないはず。
だからこそ、大隅(Ohsumi)氏のつづりを「Oshumi」
と間違えてるし、英国在住のカズオ・イシグロ氏まで安倍首相
に招待されたような(間違った)記述になっているのではないか。
まあ、文脈的には招待を表してる動詞「recevoir」
は、意味が広いので、フランス語的に間違いとまでは言えない
のかも知れない。
ともあれ、そんな話より、映画の中身について語りたいものだ。
それでは今夜はこの辺で。。☆彡
(計 2524字)
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