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後ろ生けと鏡に映るもう一人の自分、力学の意味~『高嶺の花』第2話

 いいか もも

 人前で花を生ける者には 技術が必要なのだ

 後ろ生けは 自分からは見えない

 想像力で補え

 はい

 もう一人の自分が 向こう側で見ているように

 

 

      ☆       ☆       ☆

人気、注目度絶頂の石原さとみ主演ドラマで、第2話視聴率は

9.6%(ビデオリサーチ、関東地区)。第1話が11.1%だから、

それほど下がったわけでもないけど、第2話で早くも2ケタを切ると

色々言われてしまう。いわゆる有名税か。

 

私はオンエア中、録画しながらチラ見してただけで、正直あんまし

面白くなかった。録画を消去して、レビューも止めようかなと思った

けど、クセのある野島伸司の脚本がそこまで退屈なはずもない。

特に、重要そうな台詞が2ヶ所聞き取れなかったのが気になってた。

 

そこで録画をじっくり見直してみると、やっぱり面白かった。あるいは

深いという方がピッタリ来るかも。最重要ポイントは「もう1人の自分」。

これは、「力学」という言葉との対比をつけるなら、「光学」の話なのだ。

どちらも、中学・高校で習うニュートン物理学。

 

 

      ☆       ☆       ☆

180720a

 

私がオンエア中に聞き取れなかった1つ目の単語が、「後ろ生け」。

文字通り、花の「後ろ」で「生け」ることで、ある程度以上の実力者が

人前で実演する時などの技だ。指導する大谷美香の草月流特有の

技だというウワサも出てるけど、未確認。

 

画像は無料動画のキャプチャーより。非営利の個人サイトにおける

限定的で好意的な引用なので、許容範囲と考える。

 

さて、後ろ生けには当然、練習が必要で、ドラマではもも(石原さとみ)

の向こう側に鏡が置かれてた。左右反転はともかく、客の側からどう

見えるかが分かるし、鏡に映ったもう一人の自分が客のようにも感じ

られる。文字通り、自分という主体が「客」体化するのだ。

 

 

      ☆       ☆       ☆

つまり、後ろ生けとは、向こう側にいるもう一人の自分を想像しながら

自分をコントロールすること。その意味では、別に本物の鏡に映った

自分でなくても、代わりになる存在でもいいはず。

 

180720c

 

それこそ、リチャード(笑)・・じゃなくて、お家元=父さん(小日向

文世)だ。上の画像は、お披露目の席でももが花を生け終えた直後。

義妹のなな(芳根京子)は感動、客席もスタンディング・オベーション

する中、家元は厳しい目でにらむどころか、後で花を折り棄ててた。

 

この家元の視線が、鏡に映るもう一人の自分の代わりだということ

は、上の映像と前後するように昔の映像が映ったことからも明らか。

元々、鏡には、もも自身と家元が並んで映ってたのだ。しかも当然、

家元の姿の方が大きくて、主導的だった。古き良き時代の「父」。

敬愛する秩序の体現者。

 

180720b 

 

 

     ☆       ☆       ☆

だからこそ、ドラマの中盤で、ももはななに語ってた。他の女性を

妊娠させて結婚をドタキャンした昔の婚約者と再会、心が揺らいで

しまった後。ななにポカーンとされながら、まるで独り言のように。

 

 そう そうよ お姉ちゃんには打ち込める世界が・・

 後ろ生け もう一人の自分が見えないの

 エッ?

 鏡には映ってる

 でも偽者なの 今 鏡に映る自分は

 お家元は 父さんは気づいてるはず

 

「今」、鏡に映る自分が偽物でも、父親は、もう一人の自分みたいに

向こう側から自分を見て、コントロールして来る。

 

そう考えると、父親の陰謀らしきものも、ももに対するコントロールの

1つだと分かるわけだ。要するに、華道の家元にふさわしくない男と

結婚しようとする長女を、「力学」的に力づくで別れさせたということか。

 

月島流の師範代・真由美に、婚約者の男を誘惑させて、妊娠して、

ももの結婚を破談に持ち込む。私は3話以降のストーリーやネタバレ

情報は知らないけど、2話から解釈するとそんな感じのはず。運転手

の高井(升毅)も、父親の腹心としてすべて理解してそう。

 

 

      ☆       ☆       ☆

ももには父親以外にも、「もう一人の自分」が存在する。それこそ、

高嶺の花のキャバ嬢(笑)に急接近中の冴えない自転車屋、直人

(峯田和伸)。

 

冴えないのはルックスと収入だけで、実は将棋の達人みたいだし、

ひきこもり中学生・宗太が今どこにいるかも把握できる超能力の

持ち主♪ さらに、お祭りで太鼓も叩いてた。よそ見しながら。

 

180720d

 

このシーンは、実はももが鏡に向かってる時と同じ構図になってる。

ももの向こう側に、身近な「もう一人の自分」=直人がいて、父とは

逆に、優しくコントロールしてくれる。

 

実際、舞台の上に誘い込んでくれて、一緒に楽しく太鼓を叩いてた。

ところで浴衣って、汗びっしょりでも大丈夫なの? クリーニング代が

心配♪ 小市民か!

 

とにかく、「割と簡単」に失恋を「忘れさせて」くれると、直人が左側から

言ってくれたから、ももは安心して納得するのであった。まあ、ドラマ

の主人公2人だし♪ コラコラ! ちなみにリアルな峯田は、両方

イケるらしい(笑)。いや、本人が凄い過去を暴露してるとのこと。

私が忘れさせて欲しいくらい、ヤバイ光景の(実話?)エピソード。

 

 

      ☆       ☆       ☆

一方、私がもう1つ聞き取れなかった台詞は、スナック喫茶のママ・

佳代子(笛木優子)の「偉かったわね♪」。

 

お店を貸し切り状態にして、ももが拓真(三浦貴大)と再会。時々

会おうと言う拓真に指輪を返して、何とか追い返した後、佳代子に

「ぶっ飛ばしそうになるのを止めて欲しかった?」と問われて返答。

「違う。たぶん、逆」。

 

つまり、不倫もとサヤの関係を承諾するのを止めて欲しかったと

いうこと。で、何とか思い止まったから、佳代子は「偉かったわね」

と優しく褒めて、ももは素直に喜んでた。もちろん、まだ未練たっぷり

だけど。

 

 

      ☆       ☆       ☆

その少し前、拓真との会話がまた意味深で分かりにくかったのだ。

 

 だから もし良かったら

 これからも時々こうして会おう?

 ああ

 なんだ・・

 エッ?

 力学だったんだ 私

 何ならフラれたことなかったし

 力学的に苦しくなってただけなんだなって

 勝ち負けっていうか

 しかもシチュエーション最悪だったし

 

 

      ☆       ☆       ☆

力学というものを私が中学・高校で学んだ時、かなり違和感があった。

というのも、「力」というのはそれまで、人間その他の内部から湧き

出るイメージがあったし、物が動くのも、それ自体のパワーによる

ものだと思ってたから。

 

ところが、少なくとも初歩的ニュートン力学では、力は基本的に外部

から加わるもの。何かが動き始めるのは外から力を与えられたから

で、しかも一瞬の作用が多い。その後、何も力が加わらなければ、

そのまま動き続けることになる。

 

つまり、ももの台詞は、自分が揺らいだのは自分自身の心の真実

だと思ってたけど、単なる一時的な外力によるものだったと言ってる

わけだ。急にひどい仕方でフラれるという外力、妊娠した別の女性

に負けるという外力。それで自然に心が揺れただけだと。

 

もちろん、これは一理あるけど、むしろ哀しいウソに近い。本当は、

ももの心そのものがまだ彼の方に動いてるのだ。それを認めたく

ないから、わざと素っ気ない「力学」のたとえで自分を納得させよう

と頑張ってる。

 

でもそれは無理があるから、楽しいお祭りの最中にもふと、涙が

出ちゃう。女の子だもん・・♪ 古っ! って言うか、寒っ! いや、

私はスポンサーの花王の洗剤アタックNo.1を愛用してるもんで。

アタックNeoだろ!

 

 

      ☆       ☆       ☆

眠いとつい、どうでもいい軽口を書きたくなってしまうから、そろそろ

終わりにしよう。最後に、演出の大塚恭司が狙いすまして撮ってる

こだわりカットもご紹介。肖像権に配慮したトリミング画像。

 

180720e_2

 

ももの正面だけでなく、両サイドにも大きな鏡を配置して、「もう1人

の自分」どころか「無数の自分」を映し出してるのだ。光速の反射で

増殖する、n個の鏡像。ただし、どこにも本物はいないし、どんどん

小さく曖昧になるだけ。おまけに、こちらを見てもくれないのであった。

オーソン・ウェルズの名作映画『市民ケーン』を思い出す所だ。

 

折角の石原さとみのキャバ嬢姿、もうちょっと可愛くてセクシーな

ドレスにして欲しかったな・・とか思いつつ、ではまた明日。。☆彡

 

 

 

cf. 傷つけられた時に哀しむ人は、愛の人、いい女です

     ~『高嶺の花』第1話

  「犯罪者は外見で判断できる」、ロンブローゾ~第5話

  華道の様式、天・山・海・心と流れ菱(京都・神宮流)~第6話

  ハンナ・アレント『責任と判断』とゲイン・ロス効果~第7話

  エリアス『時間について』と、子どもの頃の自分~第9話

  黄色い高嶺の花は、純潔な太陽の光~最終回

 

             (計 3290字)

      (追記 128字 ; 合計 3418字)

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