数学甲子園2018予選、正答率の低い3つの問題の解き方と感想
(☆追記: マスバトルの記事の1本目をアップ。
数学甲子園2018本選Math Battle、
問題と解き方1(英語の問題) )
☆ ☆ ☆
数学甲子園2018の本選(9月16日)の
様子を、FRESH LIVEの動画が中継。
初の試みとして(?)、ライブ中継中だけ、
参加者が挑戦したMATH BATTLE
(マス・バトル)の全問題が公開された。
ところが予選の20問については、中継の
途中に3問解説しただけ。正答率が低い
問題の代表のようで、残り17問について
はまだ分からない。
一昨年は簡単だったけど、去年は難化。
今年はさらに難化して、平均点が大幅に
下がったとのこと。ひょっとすると、女子
選手がかなり減った(らしい)ことと関係
してるかも(単なる統計的な一般論)。
全体(2425人)の平均点は、4.3点。
本選出場者(159人)の平均は11.8点。
20点満点は0人、19点が2人。最も多い
点数(400人近く)は1点。来年は多少、
易しくなると予想する。
予選問題がすべて公開されるのがいつに
なるのか分からないけど、順番として先に
予選を3問だけ解説しとこう。以下の解答
は、数学検定協会の(?)スライドの略解
を参考に、私が少しアレンジしたものだ。
入力に使用してるのはPCだけど、スマホ
によるアクセスが多いと思われるので、
1行の字数を少なくしてある。
☆ ☆ ☆
番号順ではなく、ライブ中継の紹介順に
見て行こう。まず、全体の正答率7.6%、
予選通過者の正答率22.6%の問題。
問題10
すべての辺の長さがaである正四角錘と、
1辺の長さがaである正四面体があります。
この2つの立体の正三角形の面をぴったり
とくっつけてできる立体は、何面体ですか。
解答
1辺の長さは1として一般性を失わない。
まず正四面体の2面がなす角α
(0°<α<180°、図の∠OMC)
について、余弦定理より、
cos α = 〔{(√3)/2}²+{(√3)/2}²
-1²〕 / 2・{(√3)/2}²
= 1/3
∴ sin α = (2√2)/3
次に正四角錘の正三角形の面同士が
なす角β(同上、図の∠AMC、前の図
と頂点の名前は合ってない)について、
余弦定理より、
cos β = 〔{(√3)/2}²+{(√3)/2}²
-(√2)²〕 / 2・{(√3)/2}²
= -1/3
∴ sin β = (2√2)/3
よって、対応する正三角形をくっつけた
時、新たに隣接する正三角形のなす面
の角α+βについて、加法定理より、
cos (α+β) = (-1/3)×1/3
ー {(2√2)/3}×{(2√2)/3}
= ー1
0°<α+β<360°より、
α+β=180°
よって正四面体において、くっつけた
面の両隣の2面は、正四角錘の2面
(共に正三角形)と平らにつながって
一体化。一つの面へと統合される。
それ以外にも、元の2立体それぞれ
から、くっつけた1面が消滅。
∴ (くっつけて出来た立体の面の数)
=(正四角錘の面の数ー1)
+(正四面体の面の数ー1)-2
=5
したがって新たな立体は五面体。・・・答
感想
実はわりと有名な話のようで、検索する
とあちこちに類題や解説がある。上図は
岐阜大学のpdfファイルより。幾何学的
(図形的)な議論を詳しく書いてた。
私が参加者なら、簡単すぎて
(5ー1)+(4ー1)=7面
はあり得ないと考えると思う。
その後、飛ばして別の問題に行くか、
直感的に6面とか5面と記入して、
チェックは後回しにするか。
正四面体を「2つ」合体させた立体を
2個作って、片方は90°回転させて
正方形の面でくっつけると、1辺2aの
正四面体になるとか解説。興味深い。
☆ ☆ ☆
続いて、最も難しかった問題。全体の
正答率はわずか1%。通過者8.2%。
全体の「無答」率は70.4%。
問題6
x=ω+2i を解にもつ整数係数の
n次方程式のうち、次数が最小でxの
最高次数の係数が1であるものを
求めなさい。ただし、ωはω³=1を
満たす虚数、iは虚数単位を表します。
解答 (記述式なら不完全)
ω³=1より、
(ωー1)(ω²+ω+1)=0。
ωは虚数だから、ω²+ω+1=0。
ω=xー2iを代入してωを消すと、
(x-2i)²+(xー2i)+1=0
iで整理して、 x²+xー3=(4x+2)i
両辺2乗でiを消すと、
(x²+xー3)²=ー(4x+2)²
∴ x⁴+2x³+11x²+10x+13=0・・・答
感想
ある程度以上の数学好き、理屈好きなら、
直ちに論証不足だと気付くはず。実際、
私は動画を見ながらすぐ突っ込んだ♪
「次数が最小」ということの説明がない。
ただ、予選は最後の答だけ出せばいいし、
ωでさえ3次方程式の解だから、4次で
十分低いと考えて済ませるのが実戦的。
本選での解説では、美人教師っぽい(笑)
田中さん(?)が(わざと)間違えて、6次式
を提示。ω³=1を利用してωを消したもの。
男性が突っ込んで、「最小」の解説をしてた
けど、あれでは不十分。とりあえず求めた
候補の方程式を因数分解したりして考察
しても、「他に」もっと低い次数の方程式が
ないことまでは示せてない。
「モニック多項式⇒整数解以外の
有理数解を持たない」という話を付け
加えてたけど、使い方などの説明は無し。
☆ ☆ ☆
では最後の3問目。全体の正答率は
5.3%。通過者39.6%。これはわりと
普通の問題で、もう少し時間があれば
解けた人が多かったと思う。
問題10
1からn(n≧2)までの相異なるn個の
整数の中から無作為に2個選びます。
大きい数をX、小さい数をYとするとき、
Xの期待値を求めなさい。
解答
まず、2個の選び方は全部で nC₂通り。
つまりn(nー1)/2通りで、これらは
同様に確からしい。
その内、X=k (2≦k≦n)である
組合せは、Y=1,・・・,kー1の時
だから kー1通り。
∴ (X=kである確率)
=P(X=k)
=(kー1)/{n(nー1)/2}
=2(kー1)/n(nー1)
∴ (Xの期待値)
= E(X)
=∑k・P(X=k) (ただし1≦k≦n)
={2/n(nー1)}∑k(kー1)
={2/n(nー1)}×
{n(n+1)(2n+1)/6ーn(n+1)/2}
=2(n+1)/3 ・・・答
感想
私の第一感だと、大きい数と小さい数と
言っても、ほんの少しの差でいいから、
XもYもn個の自然数の平均値
(n+1)/2に近いと考えたくなるけど、
Xはかなり大きくなってる。
ちなみにYの期待値は(n+1)/3で、
Xの期待値の半分。大きく離れた2つの
期待値の平均が、全体の平均に一致。
要するに、2つの数の差の平均が
(n+1)/3で、その半分だけ全体平均
より大きいのがXの期待値、半分だけ
全体平均より小さいのがYの期待値か。
なお、この話は、「順序統計量」とか
「ベータ分布」へと一般化されるとのこと。
自然数、整数みたいな離散的な確率変数
だけでなく、連続的なものも考える。
ともあれ、今日のところはこの辺で。
参加者とスタッフの皆さん、どうも
お疲れさま。。☆彡
cf. 数学甲子園2017予選、
全20問の問題、解き方、感想
同・本選Math Battle、
問題と解き方(abema動画)
同・問題と解き方2
同・問題と解き方3
2016本選1st Stage、全問題
16予選、全20問の解き方、感想
16(Abemaライブ)、前半感想
2015準々決勝、全問コメント
15予選、全20問の解き方、感想
14準々決勝、全問コメ&問題10
13予選ポイント、問題15解説
12、予選問題&3日ぶりのラン
数学選手権にチャレンジ (11)
(計 2972字)
(追記62字 ; 合計3034字)
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コメント
今年も私は会場にいました。テンメイとほぼ同じ感想を持ちました。やはり、、「他に」もっと低い次数の方程式がないことまでは示せてない、と私も思います。
投稿: gauss | 2018年9月18日 (火) 01時19分
> gauss さん

こんばんは。毎度どうもです。
凄いですね。「参加」回数の最多記録かも♪
専門家でもやっぱり、そう思いますか。
高度な背景的知識を使えばあれで証明になるのかな?
・・とも思ったのですが、個人的「感想」として
つぶやいてみました。
証明はやろうと思えば出来そうな気もしますが、
需要が無さそうだし、とりあえずスルーしときます
投稿: テンメイ | 2018年9月19日 (水) 00時28分