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同調圧力、大勢順応の社会実験(朝日新聞)~心理学者ソロモン・アッシュ、英語原論文

個人とか少数派が、多数派に対して自立・独立を保つのは非常に

難しい。

 

「みんなに合わせるた方がいい」といった感じの無言の「同調圧力

が重くのしかかるからだ。今の普通の英語は peer pressure

(仲間圧力)だけど、日本語の「同調」と綺麗に対応するのはむしろ

conformity pressure。子どもはもちろん、大人でも、逆らう

と孤独を感じるし、仲間外れやイジメの候補者にもなる。

 

ここ5年で一気に少数派となってしまった一般人ブロガーの私も

常に、プレッシャーを感じてる。ツイッターその他、SNSで大勢の

人と短い言葉を素早くやり取りする方がいいかな・・とか思って

しまうのだ。

 

実際、長くて難しい文章は確実に読まれなくなってる気がする。

逆に、芸能人の人気ブログは、写真、絵文字、行間の空白だらけ

なのだ。よく行く書店の客がどんどん減って来たのも、そうした

状況と関連するものだと思う。

 

新聞というメディアも、電子媒体はともかく、紙媒体だと着実に

少数派に向かってる。だから、新聞記事についてブログで記事を

書くのも流行遅れだけど、今回の話は世界的・歴史的に有名で

分かりやすいものだから、あえて長めに書いてみよう。

 

簡単には同調圧力に屈しない姿勢を、執筆自体で示すためにも。。

 

 

     ☆       ☆       ☆

さて、朝日新聞が最近、心理学者ソロモン・アッシュの実験を扱う

記事を2本載せたのは、リベラル・メディアとしての姿勢が反映

したものだろう。反安倍、反自民、反多数派という政治的ポリシー。

少なくとも2本目は、記事タイトルも内容もハッキリそうなってる。

 

1本目は18年10月11日の朝刊・科学欄ミニコラム「ユリイカ!」。

アルキメデスみたいに、面白いことを「発見した!」という意味で、

コネタとはいえ、確かに面白いことが多い。

 

181023a

 

今回のタイトルは、「子がロボットに同調?」。執筆は浜田祥太郎

記者。子どもが人型ロボットに同調しやすいという研究結果が世界

でニュースになったのは、今年の夏(8月)。Digital Trends と

いう米国ネットメディアは、こんな記事を9月2日にアップしてた

 

181023b

 

「ロボットは子どもに同調圧力を加えることができる。ただし、

 我々(大人)は影響を受けないとすぐに考えてはならない」。

 

モニターの左に線が1本、右に3本映ってる。右の3本の内、

左の1本と同じ長さの線はどれか?

 

もちろん、正しい答えは左端だけど、先にロボット達が間違った

線を選ぶと、素直な子ども達は悪影響を受けてしまうらしい・・

と私が書くと、つられる読者がいるかも♪ 本当の答は真ん中だ。 

 

 

     ☆       ☆       ☆

朝日新聞に戻ると、2本目の記事は堅い内容が多いシリーズ、

「日曜に想う」。今回は「大勢順応という時代のわな」。

 

執筆は、編集委員・大野博人。政治的な好みや評価はさておき、

左派の知識人としては優秀だと思う。記事の右下に一部分だけ

見えてる挿し絵は、皆川明「見送り」。大きなものはしばしば、

やさしい表情で影響を与えて来る。イラストレーターの意図は

ともかく、読み手としては、意味をそう解釈しても良さそうだ。

 

181023c

 

冒頭、「赤狩り」(共産主義者・社会主義者への弾圧)の批判は

軽く聞き流すとして、その後の実験のまとめはわりと正確だ。

おそらく、自分で元の英語論文を読んでるのだろう。

 

 1951年の米国・・・大学の教室に集めた7人から9人の学生

 に2枚のカードを見せる。1枚目には直線が1本、2枚目には

 長短の異なる3本が並んで描かれている。このうち1本だけが

 1枚目の直線と同じ長さだ。

 

  学生たちは、その1本が3本の中のどれかとたずねられる。

 長短はかなりはっきりしている。ふつうならまちがえる率は

 1%にとどかない。

 

  だが、グループの学生のほとんどが「サクラ」で本当の被験者

 が1人だけだとどうなるか。「サクラ」は事前に指示されたとおり

 同じ誤った答えを口にする。そのときただ1人事情を知らない

 学生の反応は?

 

  多数派に引きずられて答えを誤る率が36.8%にも上った。

 だれも同調を強要していないし、答えが違っても罰則はない

 にもかかわらず、である。

 

 

     ☆       ☆       ☆

さて、ここからが少数派ブロガーの頑張り所。朝日の記者が

読んだと思われる英語の原論文をネットで検索。サラッと読んで

みた。すると、上のまとめでも、まだ重要な点が色々と抜けてる

ことが分かった。

 

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Googleが示してる「被引用数: 3065」という数字は、

有名な学術論文の中でも非常に多い。普通は3ケタ以下だ。

 

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Opinions and Social Pressure

  by Solomon E. Asch

 (意見と社会的圧力 ソロモン・E・アッシュ)

『SCIENTIFIC AMERICAN』、VOL.193、N0.5

所収。全体で5ページの短い雑誌論文

 

 

     ☆       ☆       ☆

心理学の論文は、図・表・写真がわりと親切なことが多い気が

するけど、この論文は特に親切で分かりやすい。本文を読まなく

ても、図と写真に添えられた説明だけで大まかに理解できる。

 

181023f

 

181023g

 

半円形に男性が7人座って、右端に実験を行う1人が立ってる。

ハーバード大学・社会関係研究所。他の場所もあったらしい。左

から6人目の白シャツの男性のみが何も知らされてない本物の

被験者で、残りはサクラだ。

 

181023h

 

孤独な本物の被験者が苛立って迷う様子が連続写真で分かる

・・と書きたい所だが、著者アッシュが編集してるものだから、

控えめに見とくべきだろう。私なら、かなり早い段階で笑い出す

と思う♪ 苦笑ではなく、あまりに奇妙な事態への素朴な笑いだ。

 

ただし一応、被験者に疑われないための配慮はあったらしい。

1セット18回の内、6回はサクラも正しく応答。それらは除いて、

残り12回を実験結果として分析したとの事。

 

 

     ☆       ☆       ☆

朝日が書いてた、「誤る率が36.8%」というのは、回数の

割合のようだ。本物の被験者の内、(つられて)一度でも間違えた

人の割合は75%と書いてる(上図の下)。

 

3本の線の内、1本はやや微妙な長さだから、単純に自分の

判断で間違えた場合も入ってるはず。与えられた考慮時間の

長さも気になる所。

 

それにしても、4分の3の大学生が間違えるというのは、なかなか

興味深いし、我々も注意すべきだろう。そもそも、123人もの

本物の被験者を実験してる間には、ネタバレ的な情報もれもあった

と考えるのが自然。余裕で多数派に逆らい続けた学生もいたと思う。

にも関わらず、大部分が間違えてるのだ。

 

 

     ☆       ☆       ☆

ちなみに、実際の世の中は遥かに微妙で、ハッキリした正解は無い

ことのが普通。ただ、周りが全員一致するという奇妙な状況も滅多に

ないから、同調圧力に負ける割合がどう変化するかは微妙だろう。

 

ハッキリした正解がない場合は、同調圧力に屈する、譲歩すること

こそ「社会行動的な正解に近いもの」だと言えなくもない。典型的

なのは株式投資の世界で、多数派の動きを僅かに先取りした者が

儲かる。同調の判断と速度がポイント。SNSでの人気獲得の

場合なら、同調を形成する能力や魅力も大切になる。

 

ともあれ、その辺りのレベルからは、単純な心理学実験を超えた

複雑な問題になるだろう。もっと残酷な行動を扱うミルグラムの実験

(アイヒマン実験)も気になりつつ、今日のところはこの辺で。。☆彡

 

 

 

cf. フィトゥシ「街灯の定理」と、

   古いジョーク「街灯の下で鍵を探す」

 

          (計 2984字)

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