16歳の天才、藤井聡太の将棋観など~憲法学者・木村草太との対談
今日はまだ正月明けの1月6日。仕事と雑用に追われる中、
短い感想記事を書いとこう。朝日新聞・朝刊(19年1月3日)
に大きく掲載された、インタビュー形式の対談。
「藤井聡太七段に憲法学者・木村草太さんが聞く」。
藤井はかなり率直でシンプルな言葉で語ってて、表面的には分かり
やすい内容。ただ、ちょっと突っ込んで考えると、どうゆう意味なのか、
どんな心境なのか、よく分からない点も色々ある。私ならもっと
掘り下げて質問したのに・・という思いもあった。
本当は木村も聞き返したけど、藤井の回答が曖昧
だから編集でカットされたのかも知れない。あるいは、まだ高校1年
の少年だから、問い詰めるような語り口はなるべく避けたのかも。
☆ ☆ ☆
まず興味深い藤井の発言は、
「学校で学んだことが将棋に役立つことはありません。ただ、
ずっと将棋のことを考えていても精神的に行き詰まって
しまう。学校に行くことで、バランスが保たれるのかなと」。
バッサリ斬られて、名古屋大教育学部付属高校の先生方も苦笑
してるだろう♪ 学校は気分転換みたいなものか。まあ、たかが
気分転換、されど気分転換。後のひらめきにつながる、脳の大切
な休養とも言える。
私自身は高校時代、もうちょっとポジティブに学校生活を見てた。
担任の先生と面接した時、将棋について聞かれて、色んな事が
間接的に良い影響をもたらしてる気がすると答えたのを覚えてる。
ランニングや自転車と知的活動との関係も同様。
☆ ☆ ☆
続いて、一番不思議な会話の部分。
木村 「・・・最近のインタビューに、将棋で考えている時に
必ずしも盤面を頭に思い浮かべていない、とありました。」
藤井 「詰将棋の場合・・・見た瞬間に解けることがあります。
意識的な思考を始める前に、バックグラウンドというのか、
そこで既に読んでいて、ひらめきにつながるのかなと。
読む中で常に盤面が用意されていると、その処理が大変
です。」
見た瞬間といっても、高速で盤面が動いている感覚はあまりない
とのこと。前意識的、無意識的な思考(みたいなもの)ということか。
ただし、手を読む時に、
「必ず言語は使います。読む前にその局面における目的設定や、
ある程度の方針を決めます。」
これは意識的なものだろうから、要するに意識的・言語的な思考と
無意識的・前言語的な思考の両方をミックスしてるということか。
そんな微妙な感覚をこの若さで抱いて、口にできる辺りが、やはり
天才的なのだ。
私が突っ込んでたずねたいのは、「見た瞬間」ではなく、じっくり時間
をかけて考える時にも、盤面が動かないことが多いのか?という点。
もしそうなら、その間の意識状態はどうなってるのだろう。目は閉じて
ないから、盤面や対局室の様子は一応、知覚してるはず。
私も含めて普通の人なら、こう指すと相手がああ指して来るから・・
といった感じで、盤面のイメージと言語を使いながら考えるはず。
凡人の凡人たる所以(ゆえん)か♪
☆ ☆ ☆
それと関連する次の指摘も面白い。初めて聞いたものだ。他の棋士
たちはどう思うのか、気になる所。口にするかどうかはともかく、異論・
反論が少なくないはず。
「盤を頭の中に浮かべるのは結構大変なことで、棋士でも完全に
浮かべている人はそんなにいないんじゃないでしょうか。」
私は正直、9×9の盤面と手駒に40枚の駒があると、モヤモヤした
感じがある。そこを曖昧なままごまかしたり、盤面を目で見ることで
補ったりしながら、何とか考えるわけだ。簡単な詰将棋や数学の問題
なら、頭の中だけで脳トレすることもある。
一方、対戦ゲームの根本的問題である、先手と後手の損得について。
「先手の勝率が高いという印象は受けるのですが、その原因が、
初期配置におけるわずかな得によるものだとは、個人的には
考えづらい・・・心理的な要因があるのかもしれません。
・・・神様に聞いてみないと。でもやはり、先手必勝か引き分け
である可能性が極めて高いと思います。」
私は高校時代、相手の駒を飛び越えて前に進む「飛び将棋」が
流行った時、それが後手必勝だということを数学的に証明したこと
がある(完全な場合分けを利用、ルールによって違う)。もちろん
実戦でも後手必勝を示して、すぐに流行が終わってしまった。
ただ、AIが名人に勝つ今でも、先手必勝の理論的証明はされて
ないはず。コンピューター将棋の統計でも、先手必勝という話は
聞いたことがない。
まあでも、唯一の正解はたぶんあるだろう。それをAIが示した時、
人間が読解できるかどうかはさておき。。
☆ ☆ ☆
一方、全然違う話で、最近気になったこと。
「安田純平さんが帰国されたニュースです。ジャーナリストが
紛争地に取材に行くことの意義や、自己責任という声も
上がったみたいで・・・・・・。その責任を問うのは、どうなのか
と思っていました。」
リベラルな学者の木村も、リベラル新聞・朝日の記者(構成・村瀬
信也、村上耕司)も喜んだはずだが、流石にこの対談では社会
批判、保守・右派批判の方には向かってない。
代わりに直後、「将棋は自由度の高いゲームなんだよということを伝え
たい」という言葉を掲載。取材も自由度の高い活動だという、編集サイド
の意図もあるのかも。
ちなみに私なら直ちに、「自己責任というのは安田氏自身が強調して
いたことですけど、その辺りはどうお考えですか?」と問いただす所。
それがあるからこそ、帰国後の記者会見でも控えめな態度を
示してたわけだ。
藤井は、「本人ならともかく、周囲が責任を問うべきではないと思い
ます」と答えるかも知れないが、過去の数々の発言や経緯を知らない
可能性もある。藤井がよく読む新聞の国際面にはほとんど載ってない
ことだから。
☆ ☆ ☆
案外、藤井のそうした感覚は、最後の言葉と関係してるのかも。
心に残っている、あるいは好きな棋士の言葉。
「『感想戦は敗者のためにある』です。・・・厳しい勝負の世界
だからこそ、生まれた文化なのかなという気がします。」
勝ちまくってる人間がこの言葉を口にして、さほど嫌味に感じない
ところが、彼の人徳と若さ。ただ、10年後の彼ならもう、この
言葉を口にせず、自分の胸の内だけに秘めるかも。
ちなみに感想戦とは、勝負がついた後、「あそこでこうやってれば
違う展開になってた」といった議論を延々と続けること。
そろそろ時間が来たから終わりにしよう。今週は計14993字で
終了。年末年始にしては多かった。ではまた来週。。☆彡
(計 2633字)
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