海軍兵学校の数学試験(算術)~明治36年度(1903年)の問題と解説・解答
たまたま今週末はセンター試験が実施されるけど、これはテレビ
がキッカケで書くもの。ある意味、ドラマ関連記事だ。
NHK大河ドラマ『いだてん』第2話で、海軍兵学校の試験前に
数学の勉強をする姿が少し映されたので、試しに検索したら、
国立国会図書館デジタルコレクションで公開されてた。所官立
学校入学試験問題集、東華堂。著作権は消滅済み。
その時はドラマレビューに追われてあまり調べなかったけど、今
調べ直すと大量の情報が公開されてて驚くほど。赤本みたいな
解説の本まで出版されてる。明治時代の受験生も、今とそれほど
変わらない状況で受験勉強してたということか。
以下では、先日のレビューで問題の画像だけ掲載した明治36
年度の試験を扱う(試験日は7月8日)。要するに『いだてん』
主人公が受験した頃という大まかな意味であって、金栗四三の
受験年度を正確に選んだわけではない。そもそも彼は身体検査
(視力)ですぐ落とされてるし♪
万が一、ある程度のアクセスがあるようなら続きの記事を書く
かも知れないけど、流石にそれはないと思う♪ そもそも私自身、
この種のものは今まで1回しか見たことがない。10年前くらいに
コメント欄で解き方の質問を受けた時が最初で最後になってた。
☆ ☆ ☆
2時間で7問の「算術」試験(現在の算数)。カタカナはひらがなに
変更、漢字も現在の形に直す。文章の書き方は、意外なほど今と
変わらない。
第一問
1107,3075,7421の最大公約数を求む
解答 それぞれ素因数分解すると、
1107=3³×41
3075=3×5²×41
7421=41×181
よって最大公約数は、41 ・・・答
感想・補足
実戦的には、一番小さな1107をまず素因数分解して、
41を見つけて、他の2つの数を割ってみるのが賢い解き方。
その後で、記述式の解答をキレイにまとめる。
第二問
0.425÷(3と2/5)+(4と7/12)×
(2と3/11)-(10と5/24)
を最も簡単なる分数に直せ。
解答
(与式)=(425/1000)÷(17/5)
+(55/12)×(25/11)-245/24
=1/8+125/12-245/24
=(3+250-245)/24
= 1/3 ・・・答
第三問
(12.3123123・・)÷(3.4555・・)
の値を小数点以下五位まで計算し以下四捨五入せよ
解答
x=12.3123・・とおくと、
1000x=12312.3123・・
下の式から上の式を引いて、
999x=12300
∴ x=12300/999=4100/333
また、y=3.455・・とおくと、
10y=34.55・・
∴ 9y=31.1
∴ y=311/90
∴(与式)=(4100/333)÷(311/90)
=(4100/333)×(90/311)
=41000/11507
=3.563048・・・
≒3.56305 ・・・答
感想・補足
解説本を見ると、割る側の数を単に3.45として解いてた。
循環小数を表す数字の上側の黒い点を、単なる汚れと勘違い
したわけか♪ 当時はコンピューターを使えないから、桁数の
多い単純計算の能力は重要だったのだろう。
ちなみに当時の日本では、小数点は「.」(点)ではなく
「,」(コンマ)を使ってたようだ。フランス式の表記法。
☆ ☆ ☆
第四問
昨日の正午に正しき時刻に合せ置きたる時計が今日の
正午には十一時五十二分を示せり 此(この)時計が
明朝午前八時を示す時の正しき時刻を問う
(但し今日の正午には合せ置かざりしものとす)
解答
この時計が23時間52分進む間に、正しい時間は8分
多く進む。つまり時計が1432分進む間に正しい時間
は8分多く進む。
時計が今日の11時52分から明日の8時まで進むという
ことは、時計が20時間08分(=1208分)進むということ。
その間に正しい時間は、
1208×8/1432=1208/179
=6と134/179(分)
多く進む。
秒まで考えると、6分44秒164/179。
よって求める時刻は、今日の正午から
1208分+6分44秒164/179
だけ進んだ時刻。
したがって、午前8時14分44秒164/179 ・・・答
感想・補足
解き方は、時計を基準にするか、あるいは正式な時刻を基準に
するか、どちらでもOK。答は変な数字だから、念のために別の
解答書を読んで確認した。一応、今だと小学校6年生の算数で、
難関中学の入試問題に相当する。あるいは日テレ『頭脳王』♪
ただ、今の大学生でも8割くらいは、間違えるかほぼ白紙だろう。
問題の意味を取り違える学生も多いはず。それを言うなら、現在
のAIも問題文の読解に苦労しそうだ♪
☆ ☆ ☆
第五問
金五百二十五円を甲乙丙三人に分ちその所得甲と乙
との比が5:4 乙と丙との比が3:2なる様にせよ
解答
5:4=15:12。また、3:2=12:8だから、
連比でまとめると、
(甲の金):(乙の金):(丙の金)
=15:12:8
=225:180:120
よって甲225円、乙180円、丙120円 ・・答
☆ ☆ ☆
残り2問はルートと三乗根の筆算だから、後で別記事にする。
立方根の手計算は今までやったことがないし、平方根の計算も
小学校6年か中1の頃、1回か2回やっただけなのだ。しかも
参考書の真似をしただけで、理屈は理解してなかったと思う。
なお、「算術」は単なる算数だから、他に代数や平面幾何など
の問題もある。制度の全体はまだ把握してないけど、かなり優秀
な生徒でないと受験する気さえしないだろう。兵学校とか軍隊の
体育会系イメージが大幅に変わった。文武両道とはこうゆう事か。
とりあえず今日のところはこの辺で。。☆彡
(計 2297字)
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コメント
数学を眺める視点が、いつも豊かで嫉妬しています。残りの2問が待ち遠しいです!!
投稿: gauss | 2019年1月16日 (水) 17時46分
> gauss さん
いつも、ありがとうございます。
偶然と気まぐれでやった事ですが、これは有意義でしたね。
立方根の筆算が分かったのは単純に嬉しいし、
明治時代とか軍隊の見方が大幅に変わりました。
昔の言葉や文字、文化の初歩的勉強にもいいと思います
投稿: テンメイ | 2019年1月17日 (木) 22時44分
第四問ですが、
昨日正午:
正しい時刻=時計の示す時=12:00
今日正午:
正しい時刻=12:00
時計の示す時=11:52
明朝八時:
正しい時刻=8:00
時計の示す時=ア
という問題なんでしょうか。
時計が遅れているはずですが、
24時間経て(昨日正午から今日正午)8分遅れ
よって
20時間経て(今日正午から明朝八時)
8 x ( 20/24 )= 20/3分遅れなはず
合計14と2/3遅れとなる
つまり 正しい示す時は=7:45.333...
と思うんですが。
投稿: とくめい | 2020年9月 3日 (木) 16時34分
> とくめい さん
匿名(とくめい)の質問コメント、どうもです。
失礼ながら、それは問題の解釈が違っています。
たぶん、かなりの受験生が同じように誤解したでしょう。
時間に追われているし、そう考える方が簡単ですからね。
「明朝八時:
正しい時刻=8:00
時計の示す時=ア
という問題なんでしょうか。」
そうではありません。正しくは、
「明朝:
正しい時刻=?
時計の示す時=8時」
という問題なのです。
「此(この)時計が明朝午前八時を示す時」の
「正しき時刻」をたずねる問題なので。
正しい時刻がすぐには分からないので、
時計を基準にして考える方が良いのです。
なお、結果から逆に考えると、
正しい時刻が20時間と(14+134/179)分進む間に、
時計は(6+134/179)分遅れます。
面倒な計算ですが、ご自分でやってみてください。
もともと8分遅れていたから、合計して、
遅れは(14+134/179)分。
だから、時計の時刻はちょうど8時を示すのです。☆彡
投稿: テンメイ | 2020年9月 3日 (木) 19時12分