大森兵蔵『オリンピック式陸上運動競技法』&『いだてん』第9話
名作ドラマ『ビーチボーイズ』のファンとしては、竹野内豊というと、
旅する孤独なエリート青年・海渡のイメージがある。
初回は電車で田舎のビーチに到着・・というより漂着♪ 最終回
はまた一人で、わざわざ広海(反町隆史)と反対方向に旅立つ。
その後のSP(スペシャル)でも、南の海でイルカと旅を続けてた。
ところが『いだてん』第9回だと、遥かなシベリア鉄道の旅に出る
のはいいとして、愛妻・安仁子(あにこ : シャーロット・ケイト・
フォックス)とイチャイチャ、ベタベタ♪ おまけに咳はゴホゴホ。
金栗四三(中村勘九郎)じゃなくても、単なる変なおじさんに見える。
「とつけむにゃあ」(とんでもない)変人だなと思ってたら、ちゃんと
大河ドラマの最後のミニコーナーでフォローが入ってた。実は
やっぱり、当時のスポーツ系知識人として優秀だったらしい。
早速、主著を読んでみると、なるほど確かに中身のある解説書で、
今読んでも十分役に立つと思った。一部の妖しい箇所を除けば♪
☆ ☆ ☆
上が『オリンピック式陸上運動競技法』。明治45年(1912年)
6月の発行だから、ちょうどストックホルム五輪に合わせた出版。
案外、本の宣伝もあって選手2人の付き添いになったのかも♪
運動世界社とは、今の社名ならスポーツワールドとか。
値段は20銭。貨幣価値は数千倍ほどの違いだから、500円
~1000円くらいで、今のマニュアル本の価格とほぼ同じだ。
白黒で90ページほどの小冊子だけど、「国際競技会委員・
米国体育学士」の肩書も付いてるから需要はそれなりにあった
はず・・・とか書きたい所だけど、自信はない(笑)
今だと、国立国会図書館デジタルコレクションで公開中。
無料で登録不要。便利すぎて逆に怖い時代かも。昨夜のNHK
でも、速くて手軽で大量の情報が悲劇を生んでしまった実例を
紹介してた。。
☆ ☆ ☆
上図は短距離走で使うスタート地点。「地面」に斜めのくぼみを
掘って、「後崖」と書いてる後ろ側の壁面を蹴ってスタートしてた
らしい。
今は地面の上側に器具(スターティングブロック)を取り付ける
のが普通かな。いや、そろそろ、陸上トラックの面の下側から
器具が自動で浮上しても不思議はないけど。。
☆ ☆ ☆
前置きの「運動家気質」(スポーツマンシップ)の項に、面白い
ことを書いてる。当時の一般社会だとまだ、かけっこは相手に
勝つのが目的だから、相手の邪魔をするのも珍しくないらしい。
「かぶせる」とは、身体を相手のちょっと前側にピッタリ寄せて、
走りを妨害することじゃないかな。テレビや映画のカーチェイス
で、逃げる車を強引に止めるような感じ。
もちろん論外で、勝利よりもレコード(記録)への挑戦が重要。
「競技会は個人間の競争でなく競技者全部の協同事業」
と明記してある。今の感覚でも立派すぎて、単なるキレイ事
に聞こえるかも♪コラコラ!
そう言えば、東京マラソン2019でまさかの棄権に終わった
大迫傑選手は、記録より勝負が信条だったね。そう言いつつ、
記録で1億円もらって、マラソンの勝負は勝ててなかったりする♪
理想と現実は違うのであった。
☆ ☆ ☆
この写真(?)、CG合成ではないわけね♪ 無いだろ! いや、
ずいぶん極端な前傾だから。モデルが三島弥彦(生田斗真)
だったりして。
画質は荒いけど、今とそれほど違わない姿に見える。陸上は
最も原始的なスポーツなのだ。特に短距離。次が、レスリング
やボクシング、重量挙げかな。マラソンはビミョーだね♪ 原始
時代には給水所もないし、貴重な食糧の浪費だし。
☆ ☆ ☆
笑えるのが、上の「百米突」(100m)の漢字♪ そこか! いや、
それよりも、徒歩競走の説明。
「・・・出発直前の瞬間に於て最も新鮮なる空気を充分に吸入
貯蔵して置くのは、殊に確守す可き要件である。而して
出発後に於ては、途中僅かに一回の呼吸を以て百米突
全距離を走了し得るやうにならなければならない。稀に
一呼吸もしないものさへあるが。」
息を止めて走れと♪ そのまま「息が止まる」人もいると(笑)。
オイオイ! 瞬発系の「無酸素運動」でも、無呼吸ではないこと
くらい分かりそうなものだけど、実は検索してみたら今でも誤解
は少なくないみたいだ。「短距離は無酸素運動だから息を止めて
走る」とか。
無酸素とは、酸素の代謝が(ほとんど)間に合わないことを指す
表現で、呼吸しないわけじゃないし、呼吸に意味がないわけでも
ない。そもそも、走らなくても呼吸は必要なんだから。
口をふさいで実験すればすぐ分かる・・とかテレビでコメントしたら
炎上するかも(笑)。危ないわ! まあでも、私も平泳ぎの潜水で
25m泳いだ記憶はある(1回か2回、飛び込み無し)。ただ、自分
で危ないと感じたから、すぐ止めた。賢明な判断で、いいね♪
☆ ☆ ☆
最後に、1500mを超える「長距離競走」の「概則」。
「・・・週約2回の野外横断走を行って耐久力の維持発達に
努める外は、短距離競走を練習して速力増加に主力を
注ぐべきである」。
ロードとかクロスカントリーに加えて、短距離トレーニング
をしろと。そう言えば私も高校陸上部時代、短距離ダッシュの
練習してたな。あと、100m飛ばして100mジョグでつなぐ、
インターバル・トレーニングとか。今やると、足を痛めそう (^^ゞ
情けない。。
そうそう。100年前にもう、「ジョグ」という言葉が使われてた。
考えてみると、走る競技で一番変わったのは靴で、他は結構
変わってないのかも。。
☆ ☆ ☆
時間が無くなったから、そろそろ終わりにしよう。ドラマのサブ
タイトルの『さらばシベリア鉄道』は、昭和歌謡曲へのオマージュ
(敬意を込めた模倣)ね。作曲は5年前に他界した大瀧詠一、
歌は太田裕美。歌詞は別れた直後の男女のやり取りなのか。
シベリア鉄道の長旅、トイレはどうにでもなるとしても(コラッ♪)、
洗濯物はどうしたのかな・・とか心配しつつ、ではまた明日。。☆彡
(計 2451字)
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