98%のゴミ(ジャンク)の中に宝物、遺伝子を制御するトレジャーDNA~NHKスペシャル『人体Ⅱ 遺伝子』第1集
ボーッとテレビを見てる間は思わなかったけど、録画を見直すと中身が濃かった。タモリも驚く長い企画♪、NHKスペシャル『人体』。秋冬の第Ⅰシリーズに続く第Ⅱシリーズは、「遺伝子」。
下は番組公式HPより。といっても、今現在、別のページの方が詳しい内容があるのに、リンクをつけてない。第Ⅰシリーズでも、サイトのつながりや使い分けが分かりにくかった。
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また石原さとみがゲストになってたのは、ディレクターかプロデューサーの好みということか♪ 彼女の名前や顔を見た途端、IT長者を思い出す人も少なくないはず。巨大な「宝物」はいつも、目立たない部分に隠されてるのだ(笑)
川井憲次のテーマ曲と坂本美雨のボーカルも、すっかり耳に馴染んでる。坂本も、父親が坂本龍一、母親が矢野顕子だから、まさに遺伝子の力の象徴だろう。といっても、両親があまりに有名なミュージシャンだから、マイナスのプレッシャーも強いはず。
いずれにせよ、小市民には関係ない話だな・・と思ってたら、番組の最後にちゃんと救いがあった。単なる一般市民にも、突然変異のおかげで、ヒーローDNAが隠れてるかも知れないのだ。体内の宝くじみたいなものか(笑)。私も1億円当たらないかな。。
ちなみに番組の途中で、久保田祐佳アナが、司会の山中伸弥教授とタモリ、ゲストの石原と鈴木亮平に対して、皆さんは素晴らしい才能に恵まれてますが・・とか言った時、誰も否定しなかった♪ フツーに首を振ったり、手を振ったりするような小市民は、そもそもあのステージに登場できないのであった。大物DNAの有無の差か。。
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さて、今回もっとも衝撃的なインパクトはやっぱり、番組の冒頭だろう。今までゴミ(ジャンク)扱いされてたDNAの部分が、顔の形に関わってるとのこと。既に犯罪捜査でも活躍してるらしい。
上は鈴木の顔。DNAから再現したというより、DNAから予測した顔が右側で、かなり似てるとは思う。ただ、石原で再現しなかったのはなぜなのか、ちょっと引っかかるのだ。石原の顔の予測だと、あんまし似てなかったのかも。
上は犯罪捜査の例で、この場合はある程度候補者が絞られるから、このくらい似てれば十分だと思う。もちろん、直接的には裁判の証拠にならないだろうけど、(任意)捜査の手がかりとしてなら利用可能。
ちなみに、この研究を行ってる中国科学院のタン・クン教授(Kun Tang)の論文はこんな感じだ。高精細の3Dイメージを使って、人間の顔の形との遺伝的つながりを発見する共同研究らしい(2013年)。
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ところで、遺伝子とDNAという2つの言葉は、「遺伝子=DNA」のように直接結びつけられることがよくある。しかし、それだと大まか過ぎて、今回の番組には合わない。
4種類の塩基、A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)が30億ほど並んで作る2重らせんがDNA(デオキシリボ核酸)。
その内のわずか2%が、たんぱく質の設計図となる「遺伝子」(上図の青く光る箇所)であって、他は今までジャンクDNAとか言われて来た(上図の黒い部分全体)。つまり、無用のゴミ扱い。ところが、DNAの98%を占めるそのゴミの部分に、実は遺伝的な現象と関わる宝物(トレジャーDNA)が隠れてることが分かって来た。
トレジャーとは、英語のtreasure(宝物)。ただ、英語で検索すると、「treasure DNA」という表現は(ほとんど)見当たらない。「DNA treasure」が少しある程度だった。
とにかく、それならその部分も遺伝子と呼ぶべきじゃないか? そう言いたくなるけど、今の所そうではないことになってるらしい。理屈上は、どんな物質を作るか決める型枠としての「遺伝子」と、その物質の量やタイミングを制御する「トレジャーDNA」との違いがある。
上図の右側が、遺伝子。その働きをコントロールするボタン(図の左側)みたいなものが、トレジャーDNA。ボタンを押す回数やタイミングで、作られるたんぱく質の量やタイミングが変わって来る。目の幅、鼻の高さ、唇の厚さなども、それによって違って来るらしい。
そう聞くと、多くの人が遺伝子を操作したくなるはず。だから生命倫理の考察が重要だと。まあでも、指揮者や意識の高い人達が中心となって考えたり議論したりして決めるより、時代の空気や流れが大まかに決める類のことじゃないかな。。
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ちなみに、石原さとみの解析結果は次の通り。耳がいい(聴力、わずか1.6デシベル)。耳たぶが小さい。数学的思考が得意(だからIT長者か・・笑)。蚊に刺されるとかゆみを感じやすい(私と同じ)。刺激は求めない。落ち込みにくい。乗り物にやや酔いやすい。骨折が治りにくい。粘り強い。う~ん、全体的に私と似てるから、相性いいってことか♪
コーヒーが好きなのも、私と一緒。石原のカフェイン分解能力は普通らしいけど、人間全体の46%は能力が高いとされてた(まだ研究中)。トロント大学のアーメド・エルソヘミー教授(Ahmed El-Sohemy)の論文は次の通り。やたらコーヒーにこだわって研究してるのは、本人が大好きってことか。あるいは、ネ・・じゃなくてコーヒーの大企業(笑)から多額の援助を受けてるとか。
コーヒーと、酵素CYP1A2の遺伝子型と、心筋梗塞のリスクについて。結論としては、コーヒーを飲んだ時、カフェインの代謝が遅い人たちだけは心筋梗塞のリスクが増したそうだ。私も毎日たっぷり飲んでるから、調べて欲しいね。ここ数年、心臓の調子が悪いし。
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最後に、科学的に重要な注意点は次のことだろう。流石はノーベル賞に輝く山中教授、情報バラエティ的な番組とはいえ、しっかり押さえてた。
つまり、例えば「耳たぶが小さい」という特徴なら、関与するDNAの数も少ないし、環境の影響も小さいから、1ヶ所のDNAだけでかなり決定される。
ところが、鈴木が喜んだ「はげにくい」という特徴だと、関与するDNAが多いし、環境や生活習慣の影響も大きいから、油断すると「ダメ、ダメ、ダメ」(山中♪)なのであった。はげの研究は複雑で難しいと。教授も、あれ、ちょっと・・って感はあるね。
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それにしても、病気になる遺伝子とかDNAだけじゃなくて、病気にならない遺伝子やDNAを研究すべきだという考えには一理ある。ただ、年とっても元気で生活できるための研究が伴わないと、医療・介護の負担や問題が膨らんでしまうはず。あるいは、高齢者をサポートできる実用レベルのロボットを開発するとか。下はニール・バージライ教授(Nir Barzilai)の研究論文の一つ。長寿達成のカギの発見。
しかし、山中教授はフルマラソンのタイムもどんどん上げてて凄い活躍だね・・と感心しつつ、今日はそろそろこの辺で。。☆彡
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