秋葉原殺傷事件、加藤智大の文芸作品「人生ファイナルラップ」を読んで~NHK『事件の涙』
今日は全然違う記事を書く予定だったけど、帰宅直後にテレビを見て気が変わった。私が見たのは22時15分くらいからだから、30分番組の後半のみ。NHK『事件の涙』。たぶん、初めて見たと思う。新聞の番組欄のサブタイトルは、「平成最悪の通り魔・秋葉原殺傷」。11年前、2008年(平成20年)、加藤智大(ともひろ)、漢字変換はできない。
「平成最悪」ということは、それ以前だともっと悪い通り魔殺人があったということか? 今のところ、事件発生までの30年間では最悪だろうという産経新聞の記事くらいしか分からない。ウィキペディアの項目の注に、過去ログのアーカイブ(保存庫)へのリンクが付いてた。
ちなみに通り魔ではなく、大量殺傷なら、そのちょうど7年前の池田小事件で8人死亡してた。加藤が犯行日として6月8日を選んだのは、池田小事件を意識したものだろう。宅間守・死刑囚は、本人の望み通り非常に早く、判決確定後わずか1年で執行されてる。
もちろん、最多で最悪なのは、3年前の相模原事件(19人死亡)。あまりに大きな事件だからか、精神鑑定に時間がかかったからか、まだ裁判は始まってない。
☆ ☆ ☆
さて、NHKの番組。私が見始めたのは、昔の職場の同僚らしき男性が語るシーン。あえてここには書かないが、名前も顔もハッキリ出してた。仮名かも知れないけど、ハッキリと長めに外見を映してたから、本人が覚悟を決めてるのだろう。加藤の行為への疑問や当惑を語る一方、自身は上の身分に昇格して普通に働いてるようだった。加藤が見たら、どう感じるか。
死刑囚がテレビで自分の番組を見れるのかどうか知らないけど、死刑囚が文芸作品を世に出すのは別に構わないらしい(検閲がどうなのかは不明)。
NHKが終盤に映した画像を見て、エッと驚いた。加藤の作品らしき「ラップ」みたいな詩が映されたのだ。「人生ファイナルラップ」。番組的には、加藤に手紙を出し続けてた男性が、そのラップをネットで見て、あきれる様子が強調されてたけど、私はその内容にひかれたから、直ちに検索。
☆ ☆ ☆
すると、すぐにその作品の全文(らしきもの)がヒット。多分、本物だろうと思うけど、ツイッターと掲示板と個人サイトくらいしか出て来ない。信頼できそうなマスメディアはヒットしないのだ。
もっと探し回ると出て来るのかも知れないけど、仕方なくツイッターの画像を2つチェック。同じ内容で、「大道寺幸子・赤堀政夫基金 死刑囚表現展」応募文芸作品紹介〔2018〕と書いてる。これが去年の秋に、拡散したらしい。
私は元ネタの公式サイトを探してみたけど、2017年くらいまでしか情報が見つからなくて、肝心の2018年の情報はまだ発見できてない。ただ、かなり前から続いてる死刑囚関連の真摯な活動のようで、少なくともイベントのようなものは開催されたようだ。その時の配付パンフレットか展示物のコピーが拡散してるのか?
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いずれにせよ、出典が曖昧すぎるし、内容もきわどいものだから、ここでは画像は掲載しない。全文引用も避けとこう。
ただ、NHKも、その作品を誉めるネットのつぶやきを放映してたように、加藤のラップは一応、形が出来てるし、内容もある(良し悪しとか倫理的・道徳的評価は別)。
「ファイナルラップ」という言葉は、一般にスポーツの周回競技で使われるもので、例えば10周するレースの10周目とか、そのタイムを指す言葉だ。加藤はその言葉に、自らの「最期のラップ(ヒップホップ的な言葉)」という意味を重ねてる。例えば、今日が最後かと思ったら違ったとか、今週執行かと思ったらまた違ったとか、そういう毎日なんだろう。
ある意味、人間だれでも、毎日「ファイナルラップ」とも言える。ひょっとして終わりか・・と思ったら、また大丈夫だった♪・・という日々の連続なのだ。自分がいつ死ぬのか、ほとんど誰にも分からないはず。一部の末期患者は別として。。
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加藤のラップ(らしきもの)は、前置き(?)は別として、5つの段落(or章、節)で構成されてる。最初が、「母の夢は絵に描いた餅」となってるのは、偶然ではないだろう。母の期待が重かった、あるいは重かったと思いたい、ということ。まあ、最後の方には、「精神分析するやぶ医者」なんて言葉もあるけど。これは専門家の片田珠美への皮肉かな?
とにかく、第一段落は、各フレーズの最後が「チ」の音で揃ってる。ちゃんと韻(rhyme:ライム)を踏んでるのだ。私はやぶ医者ではないけど、「血」と解釈したくなるし、「チッ」という舌打チにも聞こえる。
第二段落は、「残りの人生あと何周?」と自問した後、「シュウ」で韻を踏もうとしてたのに、また「チ」に戻ってしまった感じだ。第三段落も同様で、「シュウ」から始まったのに、すぐ「シ」「シン」「シイ」へと変化。これは当然、「死」のイメージか。その辺りに、秋葉原事件を思わせる言葉が並んでるけど、引用は避けとこう。関係者にとっては、文芸だからといって聞き流せない、軽すぎるふざけた言葉だろうから。
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第四段落はまた「シュウ」で始まった後、今度はすぐ「イヤ」の韻を踏む。最初はタイヤで、その後は事件をリアルに描写するかのような言葉が並ぶ。ただ、私には、死刑は「嫌」と聞こえる。もっと生きたいと聞こえる。実際、第二段落から第五段落まで、先頭の句は「残り人生あと何周?」。宅間守と違って、すぐ執行して欲しいという願いは見当たらない。
最後の第五段落だけは、たった4つのフレーズで終了。「何周?」の後、「裁判所で決する雌雄」「二度殺される死刑囚」「それを喜ぶ一般大衆」で終了。どう読んでも、死を覚悟して諦めた人間の言葉とは思えない。実際、再審請求を出してるようだ。まあ、普通に言動を見る限り、死刑を回避できるほどの重い精神障害は感じ取れない。彼よりも遥かに怪しい死刑囚や被告は、他に何人もいる。
とはいえ、問題なのは、「犯行当時」の精神状況だから、その後の文芸作品は(ほとんど)関係ないのも事実。とりあえず、彼を神格化した模倣犯が続かないことを祈ろう。そのためにも、彼の知的能力に対する評価は書かないことにする。マスメディアが作品に触れないのも結局、そういった配慮が大きいのだと思う。
それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 2605字)
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