チコちゃん「月に兎がいるのはなぜ?」出典、仏教説話集「ジャータカ」316原文(パーリ語&英訳)
千葉の台風被害をNHKテレビで見てたら、番組が『チコちゃん』に変わって、いきなり難問が登場した。月に兎がいるのはなぜか? そもそも月に兎はいないんだけど・・と突っ込んだ視聴者が多かったはず♪
お釈迦様の前世について語る仏教説話集『ジャータカ』(Jataka:本生話、本生経、前生譚)とか言われても、全く聞いたことがなかったけど、話の内容はなぜか聞き覚えがあった。たぶん私は、子どもの頃に『今昔物語集』で読んだんだと思う。
ブリタニカ国際大百科事典によると、世界でも『千一夜物語』、『イソップ物語』、『グリム童話』などに影響とのこと。そんなメジャーで身近な仏典があったのか。。
☆ ☆ ☆
で、その月に兎という発想の元になった仏教説話。これは全547話の中の316番とされてる。あらすじはこんな感じだ(私の要約)。
兎が、カワウソ、山犬(ジャッカル)、猿に言った。特別な日だから、困ってる人に施しをしよう。僧侶がやって来たから、カワウソは魚を勧めた。犬は肉、猿はマンゴーを御馳走した。ところが、うさぎ自身は草しか手に入れてない。そこで、自分の身体を焼いて食べてくださいと、火に身を投げた。
この時、僧侶の姿が変化。実は、帝釈天という天の神で、兎の命は助かる。さらに帝釈天は、ウサギの立派な心掛けに感心して、月にウサギを描いた。このウサギこそ、後のお釈迦様だった。。
☆ ☆ ☆
ジャータカの中でも、この話は世界的に有名みたいで、英語で検索しても色々ヒットする。ただ、『ジャータカ』原文の英訳を発見するまでには5分くらいかかった。
ちなみに、昔話の一つだから、いくつかヴァージョンがあるのかも。小林信彦氏の論文「兎が火に飛び込む話の日本版」が使用してる原文(byファウスベル)だと、少し違ってるのかも(比較検証は省略)。ファウスベル版からの英訳に近いのはこれか? 下に引用したのは、フランシス&ネイルの訳。
上が英訳の冒頭部分。著作権は消滅済みか、気にしてないらしい。「SASA-JATAKA」というサブタイトル。いきなり「seven red fish」と書いてるから、別のエピソードかと思ったけど、正しかった。カワウソが手に入れた魚(サケ、レッドフィッシュ)が7匹なのだ。
英訳で全文を読むと、翻訳ではないけど日本語のまとめとして上手いのは、『きょうの世界昔話』というサイト。個人サイトのようだけど、しっかりしてるし、有名らしい。他に、英語版ウィキペディアの短いまとめもいい。
逆に、日本語のウィキペディアのあらすじは、曖昧で色んな話が混ざってるし、出典もハッキリさせてない。引用は避けた方が無難。
ちなみに、英文で全体を読んで初めて分かったのは、物語の外側に、大きな枠組があること。施しに熱心な人と弟子たちの前で、仏陀が昔話をするという形なのだ。最後に、実は自分の修行時代の姿(菩薩)がウサギだと、オチをつけて。
あと、ウサギが火に身を投げる前に、自分に付いてる虫たちを逃がすという辺りも芸が細かい。カワウソと犬(食料を盗んだような感じ)、猿より格上だなと思わせる、丁寧な作りになってるのだ。
最後に、パーリ語の原文(アルファベットによる表記)。これは15分以上探したかも。有名な原典だから絶対にネットにあるはずだと思って頑張ると、ようやくそれらしきものが出て来た。
もちろん、私にはほとんど読めないけど、段落分けも単語も、英文と似た部分があるから比較は一応できる。興味のある方は、リンク先をご覧あれ。一番最後の文だけ、英語とパーリ語で比べると分かりやすい。
なお、仏と神の関係も興味深いけど、もう字数も時間も無くなった。今日はあっさりこの辺で。。☆彡
(計 1545字)
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