カプレカ数の求め方と証明~3ケタ495、4ケタ6174(『はじめアルゴリズム』)
たまたま知った数学マンガ『はじめアルゴリズム』の第1巻・無料公開部分(笑)を読んでると、天才少年はじめが自動車2台のナンバープレートの数を引き算し始めた。
9541-1459=8082
左辺は、1,4,5,9の4つの数を並べて出来る最大の4ケタ数と、最小の4ケタ数との引き算になってる。
ちなみに私の母は、走ってる車のナンバープレートを見て、前の2ケタと後ろの2ケタをすぐ足す脳トレを時々やってた。それはさておき、天才少年の操作を、引いた結果の数値の8082で再び行うと、8820-0288=8532
もう一度繰り返すと、8532-2358=6174
この後は、7641-1467=6174となって、右辺は再び6174になる。計算プロセスに、いわゆるループ(循環)が出来て、変化がなくなるのだ。
☆ ☆ ☆
「このループする数を『カプレカ数』と言い『6174』は4ケタでは唯一の数である」という説明を読んで、私は早速、証明開始。考え方は単純で簡単、高校数学レベルだけど、場合分けが非常に面倒で長くて、全部やる気はしない。
試しに、日本語版ウィキペディアで紹介されてる数学論文を読んでみると、やっぱり具体的な説明は省略されてた。そこで、4ケタはあきらめて、1ケタ、2ケタ、3ケタのカプレカ数を求めてみよう。
1ケタは0のみ、2ケタはなし(00は除く)、3ケタは495のみ(000は除く)であることが証明できる。同じやり方で、4ケタも求めることができるし、6174のみであることが証明できるはず(0000は除く)。
ちなみに、日本語版ウィキはカプレカ数の定義を2つ載せてて、2つ目が上で見て来たものになってる。英語版ウィキで「Kaprekar number」を見ると、上で見て来たものとは別の定義のみ扱われてた。フランス語版ウィキの「Nombre de Kaprekar」も同様。
上で見て来たような数は、英語だと、「Kaprekar's constant」(カプレカの定数)と呼ばれてる。フランス語も同様の表現。4ケタの場合、最大で7回、最大数ー最小数の操作を繰り返すと、6174になるそうだ。「Kaprekar's routine」(カプレカの操作)という項目で、樹形図の形でまとめられてた。
では、順に解説してみよう。私が参考にしたのは、大阪経済大学・西山豊氏の論文「6174の不思議」。試しに、検索してすぐ出るサイトの説明を読むと、西山論文とも私のこの記事とも内容的に違ってた。なお、一応以下では、「カプレカ定数」のことを「カプレカ数」と書く。
☆ ☆ ☆
(1) 1ケタのカプレカ数
その数を仮にa(1~9の自然数)と書くと、a-a=a。すなわち、a=0。よって、1ケタのカプレカ数は、0のみ。
(2) 2ケタのカプレカ数
その数を仮にab(a,bは1~9)と書く。また、以下、この記事でアルファベットを複数並べて書く時には、かけ算ではなく、2ケタや3ケタの並びを示すものとする。
a≧bの場合、ab-ba=ab ∴ ba=0 ∴ a=b=0
b≧aの場合、ba-ab=ab ∴ ba=2ab ∴10b+a=2(10a+b) ∴ 8b=19a
よって、bは19の倍数だから、b=0しかなく、この場合もa=b=0となる。
以上より、2ケタのカプレカ数は、00を除くと存在しない。
☆ ☆ ☆
(3) 3ケタのカプレカ数
① 各ケタの数がすべて同じ場合
aaa-aaa=aaa となるから、a=0。つまり、その数は、000となる。
② 2つのケタだけ同じ数の場合
まず、aabのタイプについて(a≠b)。a>bなら、aab-baa=aab ∴ baa=0 a>bだから、これをみたすa,bの組はない。
一方、b>aなら、baa-aab=aab ∴ baa=2aab ∴ 98b=209a これをみたすa,bの組もない。
よって、aabのタイプはない。同様に、abaのタイプも、baaのタイプもない。したがって、2つのケタだけ同じ数である、3ケタのカプレカ数は存在しない。
③ 3ケタとも異なる数の場合(仮にabcと書く)
(ア) a>b>cの場合 abc-cba=abc ∴ cba=0。左辺は正のはずだから、これはあり得ない。
(イ) a>c>bの場合 acb-bca=abc これまでと同様の式整理で、a+109b+c=0。左辺は正のはずだから、これもあり得ない。
(ウ) b>a>cの場合 bac-cab=abc 整理して、89b=100(a+c)。左辺は100の倍数にはならないので、これもあり得ない。
(エ) b>c>aの場合 bca-acb=abc 筆算で引き算する時の1ケタ目を考えると、a+10-b=c(b>aだから2ケタ目から10借りる)。2ケタ目より、9=b。3ケタ目より、(b-1)-a=a。
連立一次方程式を自然な流れで解くと、b=9,a=4,c=5 すなわち、abc=495。
(オ) c>a>bの場合 (エ)と同様の計算で、解なしとなる。
(カ) c>b>aの場合 (エ)と同様の計算で、解なし。
(ア)~(カ)より、3ケタとも異なるカプレカ数は495のみ。
以上、①~③より、3ケタのカプレカ数は、000を除くと、495のみ。
☆ ☆ ☆
上の連立方程式を立てる考えは、西山氏の論文に書かれていたもので、参考になった。
ただし論文では、4ケタを一般的に扱おうとして、「詳細は省略するが」と書いた後、直ちに唯一の解を求めていた。しかも、方程式を立てる際に必要となる、等号付き不等号と等号なしの区別(≧と>、≦と<)の話も、サラッと省略。細かい話だが、上のケタから10借りるかどうかに関わるので重要。論文はその後、パソコンでしらみつぶしに調べる作業に移ってる。
つまり、上で私が3ケタについて行ったような証明をもし4ケタで書いたら、単純な話とはいえ、面倒で長い解答になってしまうのだ。
私としては、1ケタ~3ケタについて、この程度示したところで終わりとしとこう。後はコンピューターかAIにお任せ♪ 実は、上手い式変形がないかと色々試してみたけど、平凡な人間の知性では思いつかなかった。今日のところはこの辺で。。☆彡
cf. 『デート』第9話、「どんな数字も各位の2乗を足すと1か89になる」ことの証明
(計 2551字)
| 固定リンク | 0
「数学」カテゴリの記事
- パズル「ナンスケ」の解き方、考え方10~難易度4、ニコリ作、朝日新聞be、2023年2月25日(2023.02.26)
- パズル「絵むすび」26、解き方とコツ、考え方(難易度3、ニコリ作、朝日新聞be、2023年2月11日)(2023.02.12)
- 1~7の数字を並べた整数A、Bの和が9723になるのは何通りか(高校・場合の数)~開成中2023年入試、算数・問題5の解き方(2023.02.04)
- 桜(ソメイヨシノ)の開花予想と、気温の時間積分(1次関数、2次関数)~2023年共通テスト数学ⅡB・第2問〔2〕(2023.01.29)
- パズル「推理」、小学生向け7、カンタンな解き方、表の書き方(難易度5、ニコリ作、朝日be、23年1月28日)(2023.01.28)
コメント