吉野彰氏のノーベル化学賞2019、受賞理由(リチウムイオン電池の開発、英語原文と和訳)
日本時間10月9日・夜の受賞から既に丸1週間経過してしまったが、今年も日本人研究者がノーベル賞を受賞したので、記念記事をアップしとこう。日本人としては27人目、化学賞では8人目となる快挙。
ニクラス・エルメヘド氏のイラストは本人に似てるし、独特の味もあるが、吉野彰・旭化成名誉フェローの絵はちょっと髪の毛が目立ってる♪ 実際の本人の頭髪は白髪で、頭皮の肌色やライトの光に溶け込んでるので、それほど目立たない。京都大学・考古学研究会時代の写真を見るとイケメンにも見えた。名城大学教授という肩書は最近のもので、実際は企業内研究者だ。
☆ ☆ ☆
では以下、いつものように、ノーベル賞公式サイト(英語)より引用。基本的には直訳に近い英文和訳を心掛ける。ちなみに冒頭の紋章、「スウェーデン」というスウェーデン語は入ってない。ただし、その下の英語にはスウェーデンと書いてある。日本語の紹介では普通、国名を入れて、スウェーデン王立科学アカデミーなどとされる。
王立科学アカデミー 2019年10月9日
スウェーデン王立科学アカデミーは、2019年のノーベル化学賞を次の方々に贈ることを決定した。
ジョン・グッドイナフ 米国オースティン・テキサス大学
スタンリー・ウィッティンガム 米ニューヨーク州立大・ビンガムトン校
アキラ・ヨシノ 日本・東京・旭化成株式会社 日本・名古屋・名城大学
“リチウムイオン電池の開発に対して”
彼らは充電可能な世界を創り出した
2019年のノーベル化学賞は、リチウムイオン電池の開発に贈られた。この軽くて充電可能でパワフルなバッテリーは今、携帯電話からノートパソコンや電気自動車まで、あらゆるものに利用されている。それは太陽と風力のエネルギーを大量に蓄えることも可能で、化石燃料のない社会を可能にする。
(注.以上が見出しと前置きで、以下が本文。)
リチウムイオン電池は世界的に、我々がコミュニケーション・仕事・研究・音楽鑑賞・知識の検索で使う携帯電気製品の電源として利用されている。リチウムイオン電池はまた、長距離走行可能な電気自動車の開発や、太陽・風力などの再生可能な資源エネルギーの蓄積も可能にした。
☆ ☆ ☆
リチウムイオン電池は、1970年代のオイルショックの時期に発明された。スタンリー・ウィッティンガム氏は、化石燃料不要のエネルギー技術につながる方式の開発へと尽力した。彼は超伝導体の研究を始めて、非常にエネルギーに富む素材を発見し、リチウム電池の革新的な正極(カソード)の作成に利用した。これは、分子レベルでリチウムイオンを入れる(含有する)空間を持ち得る二硫化チタンから作られていた。
このバッテリーの負極(アノード)は部分的に、金属リチウムから出来ており、電子を放出する力が強かった。その結果、1つの電池で2ボルトを超えるほどで、文字通り凄いポテンシャル(可能性=電位)を持っていた。しかしながら、金属リチウムは反応しやすく、その電池はすぐ爆発するので実用的ではなかった。
ジョン・グッドイナフ氏は、金属硫化物の代わりに金属酸化物を使って作れば、より強力な正極になるだろうと予言した。組織的な研究を経て、彼は1980年、リチウムイオンを含有したコバルト酸化物が4ボルトを産み出すことができると実証した。これは重要な突破口で、遥かに強力な電池につながるものだった。
☆ ☆ ☆
グッドイナフ氏の陽極を土台にして、吉野彰氏は、商業的に使える初のリチウムイオン電池を1985年に生み出した。負極に、反応しやすいリチウムを使うのではなく、石油コークスを用いたのである。これは、正極のコバルト酸化物と同様、リチウムイオンを含有できる炭素材料である。
その結果、電池は軽くて長持ちするようになり、性能が低下する前に数百回の充電が可能となった。リチウムイオン電池の利点は、電極を変化させてしまう化学反応を用いず、負極と正極の間を流れて行き来するリチウムイオンを用いていることである。
リチウムイオン電池は、1991年に初めて市場に出て以来、我々の生活に革命を起こして来た。それは、無線でつながる化石燃料のない社会を創り出し、人類に偉大な利益をもたらしている。
吉野氏を支えた旭化成(チーム&会社)と愛妻・久美子さん、グッドイナフ氏を支えた水島公一氏にも拍手を贈りつつ、今日の所はこの辺で。。☆彡
(計 1819字)
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