数学甲子園2019予選、解き方と感想3(問題7~12)
一昨日に続いて、数学甲子園2019予選の第3弾解説をアップする。過去の2本は以下の通り。
数学甲子園2019予選、正答率の低い問題16の解き方と感想
2019予選、解き方と感想2(問題1~6)
(☆追記: 予選、解き方と感想4(問題13~15,17~20))
今回は直ちに本題に向かおう。
☆ ☆ ☆
問題7 次の等式を満たす正の整数a,bの組をすべて求めなさい。
ab=(aのb乗)
解答 (1)a=1の場合
与式は、b=1。
(2)a≧2の場合
① b=1の時
与式は a=a となるから、
aは2以上の任意の正の整数。
②b=2の時
与式は、2a=a² ∴a=2
③b≧3の時
まずb=3と仮定すると、
(与式右辺)ー(与式左辺)
=a³ー3a=a(a²ー3)>0
また、b=k(≧3)で
(与式右辺)ー(与式左辺)
=(aのk乗)ーka>0と仮定する。
b=k+1の時、
(与式右辺)ー(与式左辺)
=(aのk+1乗)ー(k+1)a
=a{(aのk乗)-ka}
+ka²ー(k+1)a
=a{(aのk乗)-ka}
+a{k(aー1)ー1}>0
以上、数学的帰納法より、b≧3の
時、与式は等式として成立しない。
したがって、(1)(2)より、
(a,b)=(k,1),(2,2)
(kは任意の正の整数)・・・答
感想 実戦では答だけ出せばいいから、正答に似たものなら多くの参加者が書けたと思う。ただ完全な正答となると、かなり減るはずで、部分点をどうつけるのかが気になる所。中堅大学の記述問題としてなら適度なレベル。
☆ ☆ ☆
問題8 右の図は、ある四面体の展開図で、△AECは正三角形です。AB=5、AC=12、BC=13、∠ABD=90°のとき、この四面体の体積を求めなさい。
略解 △ABCを底面として四面体を組み立てると、上の頂点で点Dは点Eと重なる。また、Dから底面の延長上に下ろした垂線の足をHとすると、直角三角形DHBは底面と垂直になる。さらに、BH=AC/2。
∴DH²=DB²ーBH²
=(12²ー5²)ー6²
∴DH=√83
∴(体積)=△ABC×DH/3
=10√83 ・・・答
感想 個人的には適度な図形問題だと思うが、正答率は極端に低かったとのこと。立体のイメージが難しかったのか、あるいはうっかりAD=13で計算してしまったのか。△ABDは、△ABCより僅かに小さい。
☆ ☆ ☆
問題9 tan18°×tan54°の値を求めなさい。
解答 tan18°=aとおく(0<a<1)。
tan36°=2a/1-a²
tan54°=tan(36°+18°)
=(-a³+3a)/(-3a²+1)
一方、tan54°=1/tan36°
=(1-a²)/2a
∴ (-a³+3a)/(-3a²+1)
=(1-a²)/2a
∴ 5a⁴ー10a²+1=0
0<a<1より、
a²=1-2√5/5
∴ tan18°×tan54°
=a×(1-a²)/2a=(1-a²)/2
=√5/5・・答
感想 時間が短い実戦だと、これは途中で捨てたと思う。tanの倍角公式、加法定理、余角公式を使うのだろうということは分かるけど、組み合わせ方にちょっと迷ってしまった。sin、cosの3倍角の公式も思いつくから、なかなか方針が一つに定まらない。
☆ ☆ ☆
問題10 数列{an}を、
a₁=1,
(n+2)an₊₁=nan+4n+2
(n=1,2,3,・・・)
によって定めるとき、第n項
anを求めなさい。
解答 漸化式の両辺をn+1して、
bn=(n+1)nan とおく。
b₁=2,
bn₊₁=bn+4n²+6n+2
∴bn=2+∑(4k²+6k+2)
(1≦k≦n-1)
=n(n+1)(4n-1)/3 (n≧2)
上式はn=1でも成立。
∴an=(4n-1)/3 ・・答
感想 時々ある漸化式の変形で、サービス問題に近い。このレベルの問題で時間が数分だと、ちょうどいい差がつくと思う。以前はこのくらいのレベルの問題ばかりが並んでたから、逆に簡単すぎて疑問を感じてた。
☆ ☆ ☆
問題11 2つの袋A、Bがあります。Aの袋には10、20、30、40、50のカードが1枚ずつ入っています。Bの袋には0、1、2、5、10のカードがそれぞれ10枚、4枚、3枚、2枚、1枚入っています。
A、Bの袋から無作為に1枚ずつを取り出し、2枚のカードに書かれた数の積をXとするとき、Xの分散を求めなさい。
解答 Aの袋のカードはどれも確率1/5。Bの袋においては、0のカードは積が0になるから計算不要。1、2、5、10のカードを取り出す確率は、それぞれ1/5、3/20、1/10、1/20。
∴(Xの平均)=(10+20+30+40+50)/25+3(10+20+30+40+50) /50+(10+20+30+40+50) /10+(10+20+30+40+50) /10=45
(x²の平均)=(100+400+900+1600+2500)/25+3(100+400+900+1600+2500) /25+(100+400+900+1600+2500) /2+(100+400+900+1600+2500) /10=9130
∴ (Xの分散)
=(X²の平均)ー(Xの平均)²
=9130-2025
=7105 ・・・答
感想 これもわりと適度な問題だと思うが、正答率が極端に低かったとの事。問題文を読むだけで面倒そうに感じるから、パスした生徒が多かったのかも。あるいはx²の平均の計算に苦戦したのか。上の解答の式は、長く見えるけど計算はカンタンで、割り切れて正の整数になる。私が解いた時には、2種類のカッコは最初の1回だけ書いて、後は空欄のまま計算した。
☆ ☆ ☆
問題12 3次式f(x)が次の条件を満たすとき、f(x)を求めなさい。
f(0)=0,f(1)=1,f(x)+6f(x-1)+f(x-2)=f(2x-1)
解答 第3式にx=0とx=1を
代入し、第1式と第2式を利用
して簡単にすると、
5f(-1)+f(-2)=0
f(-1)=0
∴f(-2)=0
よって因数定理より、
f(x)=ax(x+1)(x+2)
とおける。x=1を代入して
1=6a ∴a=1/6
∴ f(x)
=x(x+1)(x+2)/6 ・・答
感想 これは完全なサービス問題。ただ、先行する11問で余裕が無くなってる状態だから、計算ミスしやすいかも。
というわけで、今日はこの辺で。。☆彡
(計 2535字)
(追記26字 ; 合計2561字)
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