『頭脳王2020』、アラビア語の解読(「世界で一番長い川は?」)&世界最古のなぞなぞ(くさび形文字)
日本テレビ『頭脳王2020』の問題&解説記事。今年はこれで終わりにしよう。もうネットの流行も終わりに近づいてるし、個人的にも疲れ果ててしまった♪
過去の頭脳王の問題も含めて、圧倒的に難しかったのは、アラビア語の解読。それに比べると、もっと難しそうな楔(くさび)形文字の「世界最古のなぞなぞ」はラクだった。というのも、解いた優勝者・木戸も、(おそらく)読んでないから。単なるクイズ関連の知識で答えただけだろう。
ちなみに今年書いた決定戦記事2本と、来年の予選記事1本は以下の通り。
『頭脳王2020』、日本からフランス凱旋門へのキックの時速&富士山サニブラウンの地球一周時間
『頭脳王20』、太陽がなくなったら地球の温度は&宇宙の星M13へのメッセージ(0、1の二進法)
『頭脳王21』謎解き問題(1次予選)、答えの考え方、解き方(ネタバレ控えめ)
☆ ☆ ☆
では、番組序盤の「準々決勝」から、アラビア語の読み方を問う問題。日本語テロップの質問は単に、「日本語で答えなさい」。
これは「東大文学部の語学王」、梶田純之介が答えて、唯一の得点10点をゲットした問題。要するに、スタッフが花を持たせたということだろう。本人のものらしきツイッターにも、番組出場の宣伝やつぶやき感想が載ってる。読めるんですか?と問われて、「読めます」と明言した後のカタカナ的発音は、私の耳にこう聞こえた。Google翻訳の発音とかなり違う。
マー・ホワ・アルナハロ・アルアトワル・アルメスリ・フィー・(最後だけ聞き取れず)
彼の説明はこうなってた。「世界で一番長い川は?、というふうに続いているので、ナイル川」。
私は、右から左に読むらしい・・という事しか知らなかった♪ その程度なら、左端のはてなマーク「?」の位置と左右逆向きの形だけでもすぐ分かる。
☆ ☆ ☆
知識ゼロからこれを読み取るために、ネットの色んな情報を参照したけど、一番役に立ったのは3つ。Google翻訳(特に英語&アラビア語の双方向の対訳)、英語版ウィクショナリー、『アラビア語基本単語2000』(amazonキンドル読み放題)。他に、NHKのテレビ講座とラジオ講座のテキストも参照(冒頭の無料サンプル♪)。
とにかく、文字そのものが非常に分かりにくい。言葉の語形が色々変化するというのはよくあることだけど、アラビア文字は、言葉のどの場所に置かれてるか、前後がどうつながってるかで、形が変わるのだ。
そしてもちろん、調べる時に、自分の端末で入力するのも極度に困難。キーボードの設定とか変更するのは怖いからパス。アラビア文字だらけになってしまったらお手上げだから♪
私が使った方法は、Google翻訳で色んな日本語や英単語をアラビア語に変換した後、それをコピペする方法。グニャグニャつながってるように見えるけど、実は一応、1文字ずつ切り取ることが出来るのだ。
ただし、それをいくつか貼り付けて合成しようとすると、他の文字に変換されることが多い。文字の自動的な変化がプログラミングされてるのだ。というわけで、文字化けやトラブルを避けるため、このブログ記事でもアラビア文字の入力はせず、画像を利用する。
☆ ☆ ☆
英語への翻訳文は、「What is the Egyptian longest river in the world?」(世界一長いエジプトの川は何ですか?)。
梶田の説明には、「エジプトの」という言葉が抜けてたのだ。右から5番目の、「s」みたいな文字で終わる長い単語(形容詞)。もう一度書くと、右から左の向きに読むので、念のため。端末で入力したり修正したりする時もとまどった。右向きの矢印キーを押すと、カーソルが左に進んだりする♪ しかもその動きは、サイトの入力欄によって違うようだ。
元のアラビア語の文を、右から単語別に日本語訳すると、こうなる。やっぱり日本語とは語順も大幅に違ってて、英語以上にフランス語に似た語順だと思う。
「何 ですか その川は 最も長い エジプトの で 世界?」
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ちなみに、小さい丸とか点とか、色んな発音記号(シャクル)が付いてて超ややこしく感じるけど、あれは読みやすくするための親切な補足らしい♪ フツーはあんなものは付いてなくて、読み手が推測して読み取る。おまけに文字ももっと分かりにくい省略された形みたいだから、アラビア語に深入りする気には全くなれない。アラブ好きや語学ファンにお任せしよう。
私が特に苦労したのは2ヶ所。まず、右から2番目の単語「フワ」(です)。これ、普通に調べると「彼」とか「それ」という代名詞しか出て来ないし、アラビア語にはbe動詞がないとかいう情報も目に入ってた。ところが英語版ウィクショナリーを見ると、be動詞のような働きをすることもあると書かれてたから納得。
もう一つは、右から3番目の単語「アルナハル」(その川)の綴り方。英語版ウィクショナリーに乗ってる語形変化と違ってる(ように見える)のだ。いまだに納得できてないけど、どちらの形でもGoogle翻訳させると同じ英文になった。ということは、書き方が複数あるのか。問題文の形は、broken(日常的で俗っぽいもの)なのかも。
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続いて、これも準々決勝の問題。古代(4000年~5000年前)の粘土板に刻まれた楔(くさび)形文字。
古代メソポタミア文明の遺跡から発掘されたこの粘土板には 世界最古のなぞなぞが刻まれています そのなぞなぞの答えは?
テロップには載ってないけど、出題ナレーターの佐藤真知子アナは「この粘土板」と言ってた(放送作家の台本通りに)。それは多分、ギリギリの演出であって、本当は「この粘土板」は単なるイメージ写真だと思う。
実際、「The Trustees of British Museum Iraq Museum」(大英博物館管財人、イラク博物館)と著作権表示してるけど、英語で検索語を変えながらかなり探しても、世界最古のなぞなぞ(riddle)としては出て来ない。画像検索しても、木の画像ばかりズラッと並ぶ♪ もし本物だと分かったら、ここで訂正・謝罪する。
問題を理解する際のポイントは、木戸直人がすぐ反応したのに、珍しく自信なさそうに答えたこと。しり上がりの質問みたいなイントネーションで、「学校(?)」。その後の説明も大まかなもので、「ある建物の中に入る前の人は目を閉じているが出てくると目が開いている、というようなことが書いてあって」、「見識 考え方が広がるという意味で学校」。
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これは、くさび形文字は読まずにクイズの知識だけで答えたなと思った私は、すぐ詳しい検索を開始。世界最古のなぞなぞで検索すると、出典なしの質問サイトの答えとか除いて、実質的には一つの知識系サイトがヒットする(あえてリンクは付けない)。
そのサイトの記事は、基本的には、英語の面白情報サイト「curiosity」(好奇心)の記事を訳したもの。そこは、数ある英語サイトの中ではかなりマシな部類で、一応学術誌を参照してた。
ところがリンク切れになってて、Google検索であらためて探しても出て来ない。ただ、一番最初の元ネタは、1960年のE.I.Gordonの学術論文だ。「A New Look at the Wisdom of Sumer and Akkad」(シュメールとアッカドの知の新たな見方)。専門雑誌「Bibliotheca Orientalis」(東洋の書物)17号所収。
これを日本語の知識系サイトは「『25のクイズ』という本を出版」と書いてるけど、英文和訳のミスだ。元の英語サイトは「published 25 translated riddles」であって、「翻訳した25のなぞなぞを発表した」と訳すのが正しい。本ではなくて、論文だからこそ、(ほとんど)だれ一人として元の原文を引用できてない。私も探し回ったけど発見できなかった。
☆ ☆ ☆
そんな中、ネット上の一番マシな学術的出典は、次のものだった。おそらく、ゴードンの論文を他の学者が引用したものを、さらに引用してるのだと思う。いわゆる孫引きで、学問的には二流か三流のやり方だが、英語圏では結構平気で行われてるのが実状だ。
前半の5行が例のなぞなぞの本文で、一番下は、ゴードンの論文を引用したシビルという学者の論文。それをさらに引用したのが上の論文ということ。世界的に拡散してるなぞなぞの形とは、ちょっと違ってる。例えば、目を閉じている人というような前置きの条件は付いてない。最初の一言と、最後の2行だけ英文和訳しとこう。
A house ・・・ One with open eyes has come out of it. Its solution: the school.
一つの家(または建物)。目を開いた人がそこから出て来た。その答は、学校。
☆ ☆ ☆
なお、番組のエンドロールに載ってた「問題作成」9人の内、最初の1人はクイズ作家。次の2人は東大の学生。「問題作成協力」2つはおもちゃ屋さんと個人の学習塾。他に、監修の専門家の名前は掲載なし。
情報バラエティだから、あくまでテレビ番組として面白がるのがフツーの見方だろう。ごく一部のマニアを除いて♪ あと、数列15パズルが気になる人が結構いるようなので、去年の記事に今年の解き方を追記しといた。
それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 3816字)
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