「灰色のサイ」(gray rhino)か「黒い白鳥」(black swan)か~株価の「冷たいバブル」、新型コロナと共に去りぬ
今日のブログ記事も軽く済ませよう。内容的には、マニアックなレベルで書いてもいいかなと思ってたけど、さっきスポーツ大会のエントリーをしようと思ったら、6月開催(!)の大会まで中止決定が出てる。手続き前にあれこれ調べたりしてる内に、時間がかかってしまったのだ。この緊急事態に、数千人規模のイベントに申し込むなんて甘いのか。
とはいえ、6月の大会の中止はある程度予想できてたことだから、「黒い白鳥」ほどのインパクトはない。むしろ、「灰色のサイ」と言うべき経験かも。個人的で小型のサイだけど。。
☆ ☆ ☆
まだ「暴落」のレベルには到達してないと思うけど、日米をはじめとする世界のマーケットが「急落」。昨日(20年3月10日)の日経新聞HPには、「暴れ出した『灰色のサイ』 リーマン危機なぞるか」という記事がアップされてた。
「黒い白鳥」という言葉なら知ってるけど、「灰色のサイ」が私の耳に留まったのは初めて。日経のサイト内で検索をかけてみると、前から時々この表現を使ってたらしい。
おそらく英語の経済用語の日本語訳だろうと思って、直ちに辞典をチェック。正直、「サイ」の英訳は知らなかったどころか、今まで一度も見てないような気もする。「犀」という漢字が動物のサイを表すことも知らず。室生犀星くらいしか思いつかない♪
最新のウィズダム和英辞典と英和辞典(三省堂)で引くと、「rhinoceros」(ライナサラス)。略して、「rhino」(ライノウ)。日本人ならリノと読んでしまう所だろう・・と書いて、念のために英語版ウィクショナリーを引くと、米国では「リノー」とか「リナサラス」という発音もあるらしい。
☆ ☆ ☆
で、「灰色のサイ」(gray rhino)とはどんな意味で、何を示すフレーズなのか。
英語版ウィキペディアの記事を検索すると、提唱者ミシェル・ウッカー(Michele Wucker)の項目のキー・コンセプト(鍵概念)のトップに出てた。なるほど、サイは沢山いるから、複数形でライノウズとしてるのか。いまだに単数・複数や冠詞の使い分けには慣れない。
段落の半ばまで大まかに訳すと、こんな感じになる。──「灰色のサイ」は、2013年のダボス会議で紹介した言葉。ほとんどあり得ない物事を表す「黒い白鳥」(black swan)とは違って、「とても高い確率であり得るしインパクトも大きいのに無視される脅威」のこと──。
highly probable, high impact yet neglected threats。短くて明解な説明文だ。確かに、動物のサイは草原でのんびり寝てそうなイメージで、ライオン、トラ、クマ、コブラほどの怖さは感じない。
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段落の下側には、2016年の『灰色のサイ: 我々が無視する明白な危険を認識して行動するには』という著書も紹介されてるから、こちらも早速検索。Google booksで少し公開されてた。邦訳はまだ無いみたいだ。
序文には、「黒い白鳥」との比較がある。段落の後半だけ大まかに訳すと、こんな感じだ。
── 非常に確率は低いけど衝撃が大きい「黒い白鳥」には、多くの人が注目してる。しかし、危険で明白で確率の高い物事はそれほど注目されてない。黒い白鳥の陰には、とても確率が高い色々な危機が1セットにまとまって潜んでると思われる ──。
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では、具体的に今回の急落における「灰色のサイ」とは何のことか。色んな見方があるだろうけど、私は、「人為的に延々と上がり続けて来たマーケットの急落」自体が最大の灰色のサイだと思う。
新型コロナCOVID19というウイルスの登場に限って考えると、それは非常に珍しくて予測不能な存在にも見える。しかし、リーマンショック以来、大きく見ると10年も続いて来た金融緩和&静かな株価上昇(冷たいバブル)が何かのキッカケで急激に反転することは、十分予想できたし語られてた。このブログでさえ、危ないという話を何度か書いてたほど。
上はリーマンショック以降の米国ダウ平均株価のチャート(yahoo! finance)。このグラフの右端の赤丸が今回の急落であって、私がまだ「暴落」とは呼ばない理由も明らかだろう。この程度の下げが生じるのはごく自然なこと。
その十分あり得る可能性、フツーにいる灰色のサイを、人間のトレーダーとAIの取引プログラムが無視して来ただけのことだ。両者の基本的な共通点は、トレンド・フォロー。流れに乗って取り引きすることだ。今まで上がってるから、この先も上がるだろうという賭け。右上に進んでるから、この先も右上という思考&行動パターン。
みんながやるから、その賭けはしばらく当たり続けるけど(予言の自己成就)、何かをキッカケにして流れが変わると、一気に反転する。急落したから、この先も下がるだろう。右下に進んでるから、この先も右下。。
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結局、黒い白鳥は珍しくても、「物事には例外がある」という一般原則ならフツーのことに過ぎない。ちなみに、日本語で「黒い白鳥」という表現、色的に矛盾してるように思える。しかし、英語だと「black swan」だから色の矛盾は含まれてない。フランス語やドイツ語でも矛盾はないから、欧米的には「黒い白鳥」というのは元々あり得る存在なのかも知れない。
またブログ記事が長くなって来て、私の睡眠時間を奪い始めたのも、個人的な「灰色のサイ」だ♪ 十分予測できたし、睡眠負債の蓄積は病気や突然死につながるハイリスクなのに、ブロガーはつい無視してしまうのであった。ではまた明日。。☆彡
(計 2317字)
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