哲学者ニーチェ「神は死んだ。人間は仲間と創造のゲームで遊べ」~『野ブタ。をプロデュース』第1話(再放送)
俺が思うに この世の全てはゲームだ
ガキが集まってるこんな中じゃ マジになった方が負けだ
・・・上手く立ち回って いいポジションを維持してれば
傷つくことなくゴールまで行ける
ねぇ 神様 死んじゃったんだって
ニーチェだっちゃ 哲学者のニーチェが言ってんだけどさ
でも 神さま死ぬか? 大体 死因は何だってんだ♪
☆ ☆ ☆
マニアックなお話の前に、まずは軽口を叩いとこう。あらためて見直すと、ホント可愛いね。キャサリン(夏木マリ)♪ 熟女マニアか! いや、超ミニスカ制服のいじめっ子、バンドー(水田芙美子)が。スタイルもいいのに、ケバイからゴーヨク堂店主(忌野清志郎)に投げ飛ばされて、宙に浮いてた(笑)
14年半前、私が本放送の初回をテレビで見た時は、本気でバンドーに激怒(笑)。子どもか! ところが彼女、当時ウチと同じくココログ(ニフティのブログ)をやってて、私とのちょっとしたやり取りみたいな事もあったから、一気に親しみが湧いたのだ♪ その頃はまだ、芸能人ブログのコメント欄で一般人が気軽にコミュニケーションできる雰囲気があった。
その時の様子はウチの記事に書き直してて、昨日から検索アクセスを集めてる。まあ、みんなバンドー目当てだろうから、私の理屈っぽい文章なんて読んでないだろうけど、彼女はわりとマジメに読んでくれたようだ(たぶん♪)。あちらの記事の文章も、バンドーのイメージとは真逆で、優等生の文学少女みたいな感じ。ドラマのバンドーを自分でたしなめてた(笑)
超個人的な思い出はともかく、野ブタ(堀北真希)も、まりこ・・じゃなくてまり子(戸田恵梨香)もホントに可愛いね ♡
エッ、それより主役の男子? ハイハイ。修二(亀梨和也)も彰(山下智久)も、今見るとカッコイイね。当時の私にとっては、全く知らないジャニーズの新人に過ぎなかったけど、いまや2人とも大物アイドル。単なる一般男性ブロガーの私もその後、大量の記事を書くことになった。
☆ ☆ ☆
さて、『野ブタ。をプロデュース』という2005年のドラマは、2004年の白岩玄の同名小説を原作として出来た作品(日本テレビ)。もとの小説はドラマとかなり違う内容で、根本的に暗い悲惨な物語だ。
題名はもちろん、つんくによる「モー娘。」の「プロデュース」を意識したもの。今ならタイトルは、『ABCをプロデュース』とか、『道玄坂を推す』とか♪ ちなみに道玄坂とは、渋谷109の横の坂(蛇足・・笑)。
原作が書かれた頃は、ちょうどモーニング娘。の(初期の)絶頂期が終わりかけた頃で、小説の最初にも反映されてる。ということは、そもそも題名には、「今さらプロデュース?」という自虐的な意味合いも込められてるのだ。そして実際、小説の中のプロデュースは失敗してしまう。
その原作については、当時わりと真面目にレビューしてて、今回の特別編・再放送が決まった直後から大量のアクセスを集めてる。わざわざ単行本を買って書いた記事で、本を読み終えた直後、ズ~~ンと落ち込んだのを覚えてる。
リアルな人間との向き合い方 野ブタ原作
☆ ☆ ☆
河出書房新社の文藝賞を獲得したその原作本を、脚本家の木皿泉(夫妻のコンビ名)が大胆に書き直して出来たのが、日テレのドラマ。だから時間的流れの順番としては、こうなる。
原作 → 脚本(台本、シナリオ)→ ドラマ
原作(マンガも多い)と脚本の違いを私が知ったのは、翌年だったか。確か、ココログのブロガー仲間の脚本家・キッドさんに教わったのが最初で、それ以降、原作と脚本とドラマ、3つの違いをハッキリ意識するようになった。
ちなみに野ブタの「シナリオBOOK」というものが出版されてて、今でもamazonで中古本が販売されてるけど、見たことはない。おそらく脚本をそのまま収録したもので、興味はあるけど、配送料込みで3500円くらいだとキツイかな(セコッ♪)。
ちなみに、脚本とドラマの台詞はビミョーに違うので、念のため。その点は色んなドラマで具体的に確認して来た。古くからのウチの常連読者さんなら、ご存知のはず。最近は調べなくなってるけど、違いやズレの意識はいつも持ってる。
原作との違いを生み出すのは、脚本家以外に、演出家(初回・岩本仁志)、プロデューサー(河野英裕・小泉守・下山潤)を始めとするスタッフ。そして、キャスト(役者)たち。彰の妙にフワフワしたキャラは、イヤイヤ期(笑)だった山Pが指示に逆らって生み出したという話だ。認めたスタッフもキャパシティー(許容度)が大きくて、いいね!
☆ ☆ ☆
で、いよいよ今回の内容について。ウチでは当時、第1話について2本の記事を書いてる。最初のちょっと恥ずかしいつぶやき記事と、全放映終了後の全体レビュー。
「野ブタ。をプロデュース」、面白い♪
生きる場所を求めて~野ブタ再考
今回はそれらとはかなり違う、マニアックな理屈を扱ってみよう。彰が冒頭でつぶやいてた哲学者ニーチェの思想・著作と、ドラマの関係だ。
脚本家コンビがどの程度意識してるかはともかく、ドラマのあらすじや台詞は、19c末のニーチェ(Nietzsche)の主著『ツァラトゥストラはこう語った』(Also Sprach Zarathustra)とかなり重なってるのだ。
☆ ☆ ☆
まず、あちこちで話題にされてる有名な台詞を、主著の翻訳(丘沢静也訳、光文社)とドイツ語原文(無料電子図書館グーテンベルク)で確認しとこう。主人公ツァラトゥストラの独り言。あるいは、著者ニーチェのつぶやき。
「以前は、神を冒涜することが最大の冒涜だった。だが神は死んだ。と同時に、神を冒涜する連中も死んだ。この地上を冒涜することが、いまでは一番恐ろしいことなのだ!」
上の箇所では、「神は死んだ」の原文は2行目の左側、「Gott starb」。英語訳(グーテンベルク)だと、「God died」。
ただ、その少し前の台詞では少し違う表現で、「Gott todt ist !」となってる。英語訳だと、「God is dead !」だから、こちらは「神は(既に)死んでいる、もう存在しない」とか訳すと分かりやすい。「いつまで依存してるんだ?、人間たちよ!」とか。
要するに、こうゆう事だ。もちろん、神は21世紀の今現在でも、世界中で信仰されてる。ただ、19世紀の末には、それ以前と比べると威厳が低下してたし、ニーチェはもはや自分で人間の道を歩もうとしてた。だから、「神は私にとってもはや重要でない。君たちも私と共に、人間として生きろ」ということなのだ。
人間より高い別次元の超越的な存在を信じたりせず、死後の理想的世界を夢見ることもなく。この地上で、私は人間として高みを目指して行こう。それが「超人」を目指すということだ。
もちろんそこには危険も伴うから、著作では「綱渡り」という言葉も使われてた。リスクを伴う遊びの移動、変化。そう言えば、彰が両手を伸ばしてヒラヒラさせる仕草は、綱渡りのバランス保持にも見える。
ドラマの場合、野ブタ(堀北)はまず、いじめっ子のバンドーがいない世界を望む。ところがその後、修二、彰、ゴーヨク堂らの寄り添いと支えを受けて、考えが変わった。バンドーがいるこの現実世界、この地上でも、自分が生きる場所は他にある。自分たちで新たに創り出せる。だから、バンドーがいない世界、単なる幻想を望んだことを、後で取り消したのだ。
ニーチェの「超人」を体現したキャラこそ、仙人みたいなゴーヨク堂。静かな古本屋の中で全然違う世界みたいだという野ブタに対して、私が作った世界だと語ってた。群れをなさない点、身体で闘う姿勢も超人と言える。忌野清志郎自身も肉体派(サイクリスト)で、登り坂という地上の高みを目指して必死に頑張ってた♪
☆ ☆ ☆
では、神なしで、人間はどのように生きるのか。人間ならではの特徴とは。
「創造する者が求めているのは、相棒だ。死体ではない。群れでもなければ、信者でもない。いっしょに創造する者を求めているのだ。」
一神教みたいな唯一の存在である神と違って、人間は「相棒」が必要なのだ。ドイツ語 Gefahrten、英語 Companions。これ、複数形になってる。
つまり、ドラマ的に言い直せば、「生きる場所を自分でプロデュースする修二が求めてるのは、彰と信子という仲間たちだ」ということになる。そもそも原作では、修二と彰は同一人物(修二)の2つの側面。一心同体だった。
☆ ☆ ☆
ニーチェはさらに、もう少し後で、ゲームとか自転車みたいな話まで書いてるのだ。
「・・・なぜいまさら子どもになる必要があるのか? 子どもは、無邪気だ。忘れる。新しくはじめる。遊ぶ。車輪のように勝手に転がる。・・・創造という遊びのために、兄弟よ、神のように肯定することが必要なのだ。」
ここで「遊ぶ」とか「遊び」と訳されてる言葉は、英訳だと「game」(ゲーム)。そして、「車輪のように勝手に転がる」と訳されてる箇所の英訳は、「self-rolling wheel」(自転する車輪)。短く言い直せば、自転車なのだ♪
ハッキリしただろう。このドラマ(特に初回)はニーチェ哲学の言い換えになってたのだ。『ツァラトゥストラ』全体の筋書は、実は山P『アルジャーノンに花束を』の原作小説の前書きにあったプラトン哲学・洞窟の比喩とも重なってる。ツァラトゥストラが山を降りるのは、チャーリイが元に戻ることに対応するのだ。ここでは指摘だけに留めよう。
ドラマの柳の木というのは、ニーチェ哲学というより、フロイト派精神分析的な「ファロス」(男性的象徴)。だからこそ男の子の修二は触らずにいられないし、引っこ抜かれる(去勢される)と修二は激しく動揺してた。女の子の野ブタの欲望も向けられてる。熱い視線と共に♪ 細長い木の丸い根っこにも注目。
ただ、ニーチェの場合、「引っこ抜く」という言葉にポジティブな意味(新たな収穫)を重ねてる。だからこそドラマでは最後、引っこ抜かれた柳の木が、修二と野ブタにとっての心の収穫になってたのだろう。
☆ ☆ ☆
なお、放映当時、修二の自転車がかなり話題になってた。スピードを求めるロードバイクと、どこでも自由に力強く走るマウンテンバイクを合体させた、クロスバイク。多分、この写真と同一の車種だろう。個人ブログの2005年の記事より引用させて頂いた。
米国西海岸のMarin(マリン)というブランド(メーカー)の、「larkspur」(ラーク・スパー)。2005年モデル。わりと安くて、実用的だ。マリンは、海とか海の男という意味。そう言えばドラマでも、海がポイントになってた。ラークスパーは直訳すると、ひばりの蹴爪、遊びの刺激とかで、直接的にはたぶん西海岸の地名から名付けてる(花の名前でなく)。
特徴としては、前のギアにガードが付いてて制服のズボンにからまないこと、サドルに多分サスペンションが付いてて乗り心地が柔らかいこと。水平に長く伸びるフラットハンドルだから遊びやすいこと。そして、ハンドルの位置が高めだから、見通しがいいことだ。一言でまとめると、実用的なスポーツ車。街乗り用、シティサイクル。
実はこのメーカーの基本的ポリシーも、「FUN」。つまり、楽しく遊ぶことなのだ。いつもの事ながら、ドラマというものはグッズの選択までよく出来てる。美術スタッフさん、グッジョブ!
☆ ☆ ☆
実はクロスバイクは、私の愛車でもある♪ 「テンメイのRUN&BIKE」のバイクとは、基本的に、エメラルドグリーンのクロスバイクのこと(オートバイの意味もあり)。ウチのブログが何でもあり状態になってるのも、「クロス」、複数のものの交差を目指してるからだ。
というわけで、長くなって来たからこの辺で終了。まあ、14年半前のつぶやき記事は大幅に補完できたから、自分では満足だ。寝落ちしそうで、綱渡り的な執筆ゲームだったけど♪
なお、関連する大量の過去記事の一部には、下でリンクを貼ってるので、ご参照あれ。15年弱のブログ遊びの記録だ。今週は大幅に制限オーバーで、合計17735字で終了。ではまた来週。。☆彡
cf. どんな服着てても笑える、好きな服ならもっと~『野ブタ』第2話(再放送)
真夜中に手をつなぐモグラ達、はかない奇跡の光~『野ブタ』第3話(再放送)
不意打ちのように訪れる、本当の心~『野ブタ』第4話(再放送)
「花の街」、七色の谷を越えて、リボンのキャッチボール~『野ブタ』第5話(再放送)
ちゃんとした人間になっても、道端の十円玉のままで~『野ブタ』第6話(再放送)
好きなものをあきらめて、自分という舟を好きになりたい・・~『野ブタ』第7話(再放送)
信じたいから信じる、本当の友達を~『野ブタ。をプロデュース』第8話(再放送の前♪)
闇夜に浮かぶ蒼い月、はるか遠い場所~『野ブタ。をプロデュース』第9話(再放送)
「山崎と海亀」がヤバイ♪、修二と彰は2人で1つ~『野ブタ』最終回(再放送)
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不幸な精神疾患の患者の(犯罪的)行為をどう扱うか~『ストロベリーナイト・サーガ』第1話
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(計 5653字)
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