「花の街」、七色の谷を越えて、リボンのキャッチボール~『野ブタ。をプロデュース』第5話(再放送)
七色の谷を越えて 流れて行く 風のリボン ・・・
(唱歌『花の街』、作詞・江間章子)
新型コロナで5週連続の再放送となった、2005年の人気ドラマ『野ブタ。をプロデュース』。昨日(20年5月9日)放送の第5話も、ドラマ自体で面白いけど、野ブタ。(堀北真希)が夜の公園で1人で歌ってた『花の街』(作曲・團伊玖磨)という曲も興味深い。
それだけでしばらく、ハマってしまったほど。曲名は完全に忘れてたけど、学校の音楽の授業時間に合唱した覚えがある。歌詞の意味を深く考えることなく、キレイなメロディに合わせて、大声を出して。
ちなみに私は、学校の音楽も合唱も好きで、音楽の科目は高校2年か3年までずっと選択してたし、高校2年のクリスマス前だけは、地元の合唱団に所属して「ハ~レルヤ!」と大声で歌ってた♪ 友人Hと一緒に、高校のY先生のもとで。あの録音はどこにやったかな。。
☆ ☆ ☆
さて、第5話全体はイメージ的に、唱歌『花の街』と重なってた。七色の谷を越えて、リボンが流れて行く。「春よ春よと」。
野ブタは健気に鼻歌を歌いながら、正確に七色(細かっ♪)の中傷ビラを切ってリボンに変えてたし、その後にはビラを丸めた紙のボールが宙を流れて行った。中傷イジメや修二(亀梨和也)とのケンカという「谷」を越え、「春」を目指して。
一見、「花の街」の明るい曲調と真逆のように思われる。でも、歌詞をよく理解すれば、ドラマと曲はぴったり重なるのだ。
暗い実生活の中で、少女が何とか明るい夢を見ようとする姿。私も本放送の時には気付いてなかった。そう言えば野ブタのハイソックスの色も、暗くて明るいグレー(灰色)で、他の女子の紺色とは違ってる。
☆ ☆ ☆
それでは、また当時の私自身の感想記事と比較する所から始めてみよう。
人は人間関係に何を求めるのか~野ブタ第5話
当時の私もそうだけど、テレビドラマの視聴者というのは一般に、登場人物とその物語を中心に見る。特に、主人公、ヒロインその他、全体の中心人物。『野ブタ。』なら、プロデュース3人組と、まりこ・・じゃなくてまり子(戸田恵梨香)。
あるいは、その回の重要な人物を見る。第5話なら、シッタカ=植木誠(若葉竜也)。そして、野ブタに突然出来た謎の女友達。彼女の映像には、修二の「絶対に負けたくない」というモノローグや、不気味なキャサリン・・じゃなくて九官鳥の笑い声もかぶせられてた。岩本仁志の親切すぎる演出。登場シーンの歩き方(再放送ではカット)も含めてテレビ的な説明過剰に近いかも。
あの女友達が誰だか知りたければ、普通のネット検索でも一瞬で分かるけど、公式サイトの2年B組クラスメート紹介で確認してみよう。多分、昔のままの内容だと思う。「普通の娘を演じます」(笑)
蒼井かすみ(柊瑠美)。「個人的にはディステニィと彰の動きに注目してます♡笑」とコメントしてる辺り、役者魂を感じる。「役者」という言葉は、俳優という言葉とビミョーに違ってて、「観客の目の前の舞台でお芝居する人」という意味合いが含まれる。2006年のフジテレビの連続ドラマ『役者魂!』も、舞台やお芝居が中心だった。
その場合、重要なものの一つは、発声と共に、身体全体の動き、身振り。そうすると、お笑いコンビ・ディスティニィや彰(山下智久)の動き(野ブタ。パワー注入その他)が注目点になるのは自然。柊瑠美はたぶん撮影現場で、観客として、彼らの生のアクションをジッと見つめてるのだろう。プロフェッショナル。
それに対して、ドラマの場合、圧倒的に中心人物の顔が強調されて、特にクローズアップされがちな目が重要。修二の場合、目の演技というより、目力(めぢから)を感じる映像になってる。
☆ ☆ ☆
話を戻すと、人物と物語を中心に見るなら、今回のポイントは、ダブルデート、シッタカのシッパイ(失敗)、修二とノブタのケンカと仲直り、そして、謎の女子高生がバラまいた野ブタ(&まり子)に対する中傷ビラだ。
ところで、倒れた男性の老人が吐いて野ブタの手についた吐しゃ物かヨダレみたいな白い液体。ドラマだけ見ると奇妙に浮いた存在で、シッタカじゃなくても「汚い!」と遠ざけたくなる。
あれ、実は白岩玄の原作小説の基本的な設定なのだ。修二はリアルな人間を避けたい傾向が強いキャラだから、あの身体的な排出物は嫌いなものの代表。つまり、ドラマのシッタカの感情的で否定的な反応は、原作の修二の性格を移し替えたものだ。14年半前に当サイトがアップした原作レビューを参照。デートのお弁当シーンで映った不気味な幼虫もその類だろう。
リアルな人間との向き合い方 野ブタ原作
実はドラマの彰もある意味、原作の修二の半面を別人格として独立させた分身的存在。ここ20年の日本のサブカルチャー用語を使うなら、彰は「擬人化」だ。そう考えると、フワフワした印象も納得しやすい。
☆ ☆ ☆
原作との関連はさておき、失敗したデート、シッタカの恋愛花占い、自己嫌悪、中傷ビラ、ケンカを全部まとめたイメージ的な言葉が、「七色の谷」ということになる。
心は谷底、沈んだ表情なのに、だからこそ、お花畑みたいにカラフルな映像のシリーズ。まとめて確認してみよう。
七色(青、緑、白、オレンジ、ピンク、イエロー、濃い黄色)の中傷ビラのリボン作り直前には、また分かりやすく、色とりどりの花に囲まれた信子が映されてた。
修二の母・伸子(ノブコ=ノブタン:深浦加奈子)が、緑一色のオクラ&ブロッコリーしゃぶしゃぶ(笑)を用意させてたのとは対照的。彼女の場合、性格がお花畑か♪
☆ ☆ ☆
その野ブタのアンバランスな状況が、『花の街』の歌詞と重なるのは、最後の3番を読むだけでも感じ取れる。
歌詞には何種類かあって、どれが正しいか論争が続いてるらしい。野ブタが歌ってた1番のラストの「春よ春よ」も、間違いだという説があるけど、3番はこれで正しいと思う。
すみれ色してた窓で 泣いていたよ 街の角で
・・・ 春の夕暮れ
ひとり寂しく 泣いていたよ
つまり、あの明るい七色のイメージの歌は、谷底で泣いてる女性の幻想なのだ。作者・江間章子は生前、次のように誕生秘話を語ってたとのこと。『日本の美しい歌』(新潮社)。ウェッブ『池田小百合なっとく童謡・唱歌』による(と書いて欲しいとの事)。
「私が乙女ごころに憧れていたのは神戸でした。でも一度もいったことはないんですよ。おまけに当時の東京(注.1947年)は焼け跡だらけ。ですから、いまだ見たことのない憧れの神戸は、さぞかしお花の咲き乱れている美しい街だろうと想像しましてね。早く日本のどこへ行ってもそうあってほしいという願望をこめて書いたんですよ」
花の街とは、焼け跡で幻想した神戸。別の本では、幻想の街、幻想の世界という言葉も使ってたらしい。そうした背景を理解すれば、3番まで歌うことが大事だと語ってたらしい作詞家の気持ちも分かるし、野ブタが1人で歌ってたのもよく分かる。
まるで、第3話の『真夜中のギター』みたいに、「淋しがり屋がひとり いまにも泣きそうに」(作詞・吉岡治)。
☆ ☆ ☆
最後は、珍しく野ブタが独白(モノローグ)してた、彰とのキャッチボール。たぶん、第3話のススキ摘みシーンを意識した撮影だと想像。芸術的な美しさで、いいね。
私はいつも 2人にボールを投げてもらってばかりなんだよね
でも 受けるのが精一杯。
だからいつか そのボールを投げ返したいと思っている
2人のグローブに スポンって届くように投げ返せたら
気持ちいいだろうな・・♡
なお、デルフィーヌ(忌野清志郎)が彰に近づいて歌ってた「しとしと ぴっちゃん」の曲名は、『子連れ狼』(作詞・小池一雄)。嫉妬嫉妬(シットシット)Pちゃん(ピーちゃん)とからかってた出来過ぎのダジャレ、視聴者に伝わったかな? 脚本家コンビ・木皿泉お得意の言葉遊び。
野ブタを好き過ぎて悶える彰を見て、ファンも悶えると♪ 一方、特殊な女子は、序盤の修二&彰BLラブラブシーンで悶絶リピートか(笑)
ゴールデンウィークだったはずの今週も結局、制限字数ぴったし、14960字で終了。男に媚びるキャピキャピしてた女子の名前は佐伯奈美(亜希子)かな?・・とか萌えつつ、また来週。。☆彡
cf. 哲学者ニーチェ「神は死んだ。人間は仲間と創造のゲームで遊べ」~『野ブタ』第1話(再放送)
どんな服着てても笑える、好きな服ならもっと~『野ブタ』第2話(再放送)
真夜中に手をつなぐモグラ達、はかない奇跡の光~『野ブタ』第3話(再放送)
不意打ちのように訪れる、本当の心~『野ブタ』第4話(再放送)
ちゃんとした人間になっても、道端の十円玉のままで~『野ブタ』第6話(再放送)
好きなものをあきらめて、自分という舟を好きになりたい・・~『野ブタ』第7話(再放送)
信じたいから信じる、本当の友達を~『野ブタ。をプロデュース』第8話(再放送の前♪)
闇夜に浮かぶ蒼い月、はるか遠い場所~『野ブタ。をプロデュース』第9話(再放送)
「山崎と海亀」がヤバイ♪、修二と彰は2人で1つ~『野ブタ』最終回(再放送)
(計 3518字)
(追記197字 ; 合計3715字)
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