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ペアノの自然数論、減法(引き算)、乗法(掛け算)、除法(割り算)~論文『算術原理』2

3ヶ月半も間が空いてしまったが、イタリアの数学者ペアノの『算術の諸原理』(ARITHMETICES PRINCIPIA、ラテン語)に関する記事の2本目を軽く書いとこう。時間が無いので簡単に書くが、数学の古典の原文に即したネット記事というのは世界的に非常に少ないので、多少の意味はある。

    

既に1本目の記事に書いたことは、基本的に繰り返さないので、いきなりこの記事にアクセスした方には、先に前の記事に目を通すことをお勧めする。独特な書き方の論文だし、邦訳のある2年後の論文「数の概念について」とも少し違ってるので、この種の話に慣れてる人でも戸惑う部分はあると思う。

   

 ペアノの公理、自然数の加法(足し算)、結合法則の証明~論文『算術原理』(1889年)

  

なお、ペアノの原論文(ラテン語)は、 Internet Archive で公開中。副題は「NOVA METHODO EXPOSITA」(新しい方式で提示された)。つまり、今までの算術(算数)と外見的に同じ式や定理などを、新しいやり方で示すということだ。ということは、同じ形の式でも意味は違ってる、とも考えられる。

   

      

    ☆     ☆     ☆

200511a

  

足し算に続く第2節、減法(引き算)について(De subtractione)。ペアノはいちいち、言葉の区切り目に点(ピリオド)を打ってる。最初は、説明(Explicationes)で、記号(Signum)の説明。

  

「-」は、「マイナス」と読む。「<」は「より小さい」。「>」は「より大きい」。

    

いきなり不等号や不等式が出て来るのは、引き算の結果が正の整数(自然数)になる場合からスタートするため。つまり、b-aは最初、b>aの時しか定義されてないのだ。

  

続いて、引き算の定義(Definitiones)。1番が核心だが、記号法が読みにくい。

  

aとbが自然数ならば、b-aは、x+a=bとなるような自然数xである」。

   

要するに、足し算の逆演算として引き算を定義。だから、引き算の定理の証明は、基本的には足し算から入ることになる。例えば、3-2=1を証明してみよう。

 

 1+2=3 ・・・① (前の記事で証明済)

∴ 3-2=1 (①と、引き算の定義1より)

  

定義の2は、「aがbより小さいならば、b-aは無ではない(つまり存在する)」。3の前半は、「a<bとb>aは同じことである」。3の後半は、3つの項がある場合、先に前の2つを計算するという決め事。例えば、a-b+c=(a-b)+c。

   

  

     ☆     ☆     ☆

200511b

     

続いて、第3節の最大値・最小値は飛ばして、第4節乗法・掛け算(multiplicatione)。これが一番、簡単な定義で、足し算をもとにしてある。

    

1. a×1=a

2. a×(b+1)=a×b+a

  

この2番の定義式の読み方は、そのすぐ下で補足してある。式変形の形で示すと、

 a×b+a=ab+a

     =(ab)+a

     =(a×b)+a

  

つまり、左側の掛け算を先に行うことになる。当たり前すぎて見逃しがちな部分だが、そこまで考えて定義の全体を構成してるわけだ。2×2=4を証明してみよう。

  

2×2=2×(1+1) (自然数2の定義より。前の記事参照)

  =2×1+2 (乗法の定義2より)

  =2+2 (乗法の定義1、2より)

  =2+(1+1) (自然数2の定義)

  =(2+1)+1 (加法の定義、前の記事参照)

  =3+1 (自然数3の定義、同上)

  =4 (自然数4の定義、同上)

  

確かに、数式「2×2=4」の左辺から右辺へと、論理的に証明できる。

 

  

    ☆     ☆     ☆

ただ、この論文での乗法の定義は2種類の式を用いてる。それに対して2年後の論文「数の概念について」だと、乗法の定義は1本だけ。

  

例えば、2×2=(0+2)+2。あるいは、3×1=0+3。

   

つまり、a×bとは、0にaをb回足したもの掛け算全体を足し算から一気に定義してるわけで、体系家の本質的で細かいこだわりに感心する。ただし、この場合は先に0(ゼロ)の定義と導入が必要となる。

    

ちなみに話題の京大・望月新一教授によるABC予想の証明(とされるもの)では、足し算とかけ算が分離されてるとかいう話だが、私はまだ全く理解してない。

    

というより、数学者にとっても難し過ぎる理論構成らしいから、今後もほとんど理解できないかも。少なくとも、かなり時間の余裕がないと無理だから、しばらく保留しとこう。証明が本当に正しいのかどうかも、まだ不明。世界的に見て、まだ認められたとは言えないような感じだ。

   

   

    ☆     ☆     ☆

200511c

  

200511d 

  

第5節の累乗は省略。最後は第6節除法(divisione)。妙な記号の数々は飛ばして、最初にある最低限の割り算記号、「/」だけに注目しよう。定義1は、

  

aとbが自然数ならば、b/aは、xa=bとなるような自然数xである」。

 

例えば、6/2=3(つまり 6÷2=3)を証明してみよう。先に、3×2=6を示す必要がある。

   

3×2=3×(1+1) (自然数2の定義)

  =3×1+3 (乗法の定義2)

  =3+3 (乗法の定義1)

  =3+(2+1) (自然数3の定義)

  =(3+2)+1 (加法の定義)

  =(3+(1+1))+1 (自然数2の定義)

  =((3+1)+1)+1 (加法の定義)

  =(4+1)+1 (自然数4の定義)

  =5+1 (自然数5の定義)

  =6 (自然数6の定義) ・・・②

   

∴ 6/2=3 (除法の定義と②より)

   

この後、さらに3本目を書くかどうかは未定。むしろ、他の数学者の原著を扱うべきかも。とりあえず、今日はこの辺で。。☆彡

   

  

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 引き算の証明、負の数~ペアノの整数論(減算=減法)

 集合論における自然数の表記と計算

 0、1、「次の数」に関する哲学的考察~フレーゲ『算術の基礎』

 デデキントの「切断」による実数の構成~対角線論法2

 「1+1=2」はなぜか~小学1年生の算数の教科書

 引き算、足し引き連続、0(ゼロ)~小学1年生の算数2

 掛け算の導入、足し算・引き算との関係~小学校の算数3

 同じ数ずつ分ける計算、割り算(除法)~小学校の算数4

 原始リカーシヴ関数と足し算(加法)、掛け算(乗法)

   

      (計 2540字)

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