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ALSの対症療法と、延命治療の拒否、鎮静、自己決定~林優里さんの選択、一般の人の最期

これもまた、ブログが関係してるから、ブロガーとして特別な関心を抱くことになる。もちろん、ブログ抜きでも、決して他人事ではない。

         

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性に対する嘱託殺人の容疑で、医師2人が逮捕された事件。ご本人・林優里さんのブログやツイッターについては、前からかなり具体的な情報が色々と出てたから、探せば見つかるんだろう・・と思ってたけど、今まで調べることまではしてなかった。

  

試しに検索してみると、一瞬でご本人のものらしきブログとツイッターに到達。両方ともまだ残されてるのか。基本的にはお父さんの意志なのかな? 運営者の方針も関係するだろうけど。ブログはランキング上位になってたから、世間的な関心も非常に高いということだ。

   

     

     ☆     ☆     ☆

軽く拝見・拝読してすぐ感じたのは、ご本人にとって、本当に全力の挑戦だったんだなということ。そもそもブログのタイトルに「安楽死を認めて!」と書いてる。副題にも、「人権を求める戦い」。

  

死の1年半前、最初のブログ記事から、「すごく辛い。早く楽になりたい。」と書き始めて、文末では「海外に行く」際の「付添い人」の扱いまで、激しい口調で記してる。その後の記事を読むと、スイスが希望とのこと。あくまで自分の話であって、他の人の話に対しては、もっと命を大切にするような考えも抱くようだ。

         

マスメディアは医師2人(大久保容疑者、山本容疑者)の犯罪行為を責めることに重点を置いてるけど、法律・判例の議論や金銭のやり取りとか、枝葉の問題にすぎない。ごく少数の悪人叩きで済ませてる場合ではない。

     

辛過ぎて、早く死んで楽になりたいのに、自殺さえできない状態が長く続いてる患者は、どうすればいいのか? これが問題だ。

     

自殺は犯罪ではないし、実行後に責められることも少ない。犯罪の隠蔽など特殊な例は別として、むしろ、やさしい言葉や反応に包まれる。ところが、自分で出来ないから他人に頼むと、嘱託殺人とか幇助として非常にネガティブな騒動になる。

   

  

    ☆     ☆     ☆

これは決して、ごく一部の気の毒な患者の特殊な話ではない。誰でも経験する可能性がある、一般的な話だ。

   

私が朝日新聞のニュースを読んでてドキッとしたのは、「鎮静薬」の成分が検出されたという箇所。ALSでなくても、末期ガンなど、死の間近でどうしようもない苦しみに襲われてる患者に対しては、治療よりも鎮静を自己決定で選ぶという選択肢が(実質的に)認められてる。

  

普通の鎮静は余命を縮めることはない、今回の鎮静薬投与(疑惑)とは全く違う・・というのが医師側の公式見解なのかも知れないけど、余命への影響はとりあえずおいとこう。今回の量が過剰投与といえるかどうかもまだ不明。

   

ハッキリしてるのは、単純な毒ではなく、医療の現場で使われてる薬だということ。抗てんかん薬や麻酔薬として使われてるという、バルビツール酸系の薬物。

  

  

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今回の場合、死の間近とは言いにくい側面もあったようだけど、2011年に発症して2019年の末に亡くなったということは、8年くらいもの間、闘病生活が続いたことになる。それはもう、十分すぎる生の努力だ。

    

担当医師への要望・依頼も繰り返してたけど、(当然)却下されてたらしい。難病の相談員とも具体的な話をしてたという話を、自分で書いてる。

       

1人暮らしで24時間介護。胃ろうで栄養補給。目の動きでパソコン入力。いくら、意識がハッキリしてて、病状は安定、人工呼吸器も付けてなかったとはいえ、特にもともと活動的な女性だったらしいし、人権侵害と訴えたくなる気持ちはよく分かる。

  

誤解を避けるために書いておくが、別に、医師2人が無罪とか言いたいわけではないし、私が担当医だったとしても、現在の社会状況なら断る(申し訳なさそうに・・)。仮にお金を受け取らなかったとしても、違法行為として犯罪扱いされる確率が高いのは明らか。自分自身でも、罪の意識は強いはず。

        

ただ、高齢の著名な宗教学者・山折哲雄も朝日新聞(20年1月24日・朝刊)で主張してるように、多少の「死の規制緩和」について、そろそろ本格的かつ慎重に議論すべき時期だと思う。人数の割合がどうかはともかく、誰もがピンピンコロリと死ねるわけではないのは間違いない事実だ。

                

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橋田壽賀子の『安楽死で死なせて下さい』(文藝春秋)や樹木希林『遺言 ~死ぬときぐらい好きにさせてよ』(宝島社)が好評だったのも、最後(最期)は延命治療よりも自分らしく、という意識の広がりによるものだろう。

  

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田辺三菱製薬のALSステーションというサイトを見ると、ALSの治療(対症療法)は苦痛を軽減し、生活の質(QOL:Quality Of Life)を維持するものとして重視されてる。それは決して、「延命」ではなくて、積極的治療であり、今後の病状改善につながるものとされてる。

  

もちろん、ポジティブな場合も多いのだろう。製薬会社と医師だから・・とも言わないことにしよう。ただ、ネガティブな延命治療かどうか、長期にわたる患者なら自分で判断する権利があってもいいとは思う。「患者さんが自分らしく過ごせる時間を延ばす」と書いてるのだから、患者本人が自分らしくないと強く主張し続けてる場合、積極的治療とは言いにくいはず。

   

そして、延命治療なら、本人(またはその代わりとなる家族)が拒否できるというのが今の時代の流れだ。法的にはともかく、実質的にそうなってるのはほぼ明らかだろう。

  

  

     ☆     ☆     ☆

たとえ辛くても、負担が大きくても、出来る限り長く生き続けたいという意志も尊重する。そうでない意志も、長期にわたって変わらないようなら、(やむを得ず)尊重する。

    

今回の事件が単なる嘱託殺人という話ではなく、本人の生き方・死に方、医療介護側の選択という、大きな視野の議論につながって欲しいと願ってる。もちろん、難病の根本的な治療薬・治療法の開発と共に。。

   

      (計 2424字)

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