お盆の由来、餓鬼道に落ちた母を救う目連と釈迦~盂蘭盆(うらぼん)経・原文&盂蘭盆会
昨日も触れたが、朝日新聞(20年8月13日)の朝刊コラム「天声人語」は、母と子とお盆の話で、ちょっとヒネリが効いてた。
「7世紀には『盂蘭盆会』(うらぼんえ)という仏事が営まれた。もとは中国から伝わった説話。釈迦の弟子が、陰暦7月15日に食べ物を供え、餓鬼道に堕ちた亡母を救ったという」。
一見、フツーのいい話のようだが、この後にオチみたいな展開がある。朝日の筆者がこの夏、お盆に帰省しようとしたら、伝染病を持って帰るなとか言われて、親に拒否されたらしい♪
お盆に息子が親孝行しようとしたら、逆に、親不孝扱いされたという話だ。いわゆる「自粛警察」どころか、肝心の田舎の家族にさえ嫌がられてしまうのが、今年の夏。それにしては首都圏は静かになってるけど、みんな、どこに行ったんだろう? 家で短期の引きこもり状態なのか。。
☆ ☆ ☆
さて、ちょっと興味を持った私は、色々とネットで調べてみたけど、情報量がかなり多いわりに、なかなか正しい解説らしきものが見当たらない。
そもそも、経典というものは日本人にとっては漢字だけど、元はサンスクリット語(梵語)と言われる。ところが、サンスクリット語の経典のさらに前、あるいは別の系列のものとして、パーリ語とか俗語とか色々あるらしい。
元に遡るとキリがないし、現在の定説らしきものも見当たらないけど、一応の基本としてはこうなってる。統合辞典サイト「コトバンク」の各種辞典の各項目を中心に、私がまとめた。
インド伝来ではない偽経とも言われる、盂蘭盆経(うらぼんきょう)というお経に、仏陀の高弟・目連の話が書かれてる。彼が特殊な能力で亡き母の様子を見ると、餓鬼たちの中で飢えて苦しんでた。目連が食事を運んでも、食べる前に火で炭になってしまう。
嘆き悲しむ目連が釈迦に相談すると、母の罪は非常に重いようだから、7月15日に大勢の仏僧たちと共に飲食して供養すれば、母も助かるとのこと。それが盂蘭盆会で、長い歴史を経て、今のお盆につながった。
上は、ウィキメディアの解説本の図より。多分、家の中で釈迦の右側に座ってるのが目連。家の外で右下に立ってる骨と皮の痩せた女性が亡き母か、それに似た境遇の現世の女性だろう。
ちなみに7月15日というのは陰暦(旧暦)で、僧たちが寺院や住居に留まる「安居」(あんご)の期間が終わる日。今の新暦だとかなり遅れて、例えば今年(2020年)だと、本当は9月2日の計算になるらしい。ただ、実際には慣習的に8月15日ごろに固定されたと。。
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この程度のお話なら、既にあちこちに書かれてるから、ここでは経典の原文をチェックしてみよう。浄土宗の高城山・十念寺HPより、「仏説 盂蘭盆経」の一部を引用させて頂く。ひらがなは消去した。
まず、目連、母、仏の文字の確認。漢字だから、日本人なら大体の意味が分かる所が凄い。
確かに日付けは7月15日と指定してある。「盆」という漢字が初めて登場するのがこの2ヶ所で、明らかに普通のお盆みたいな意味だろう。もちろん、漢字の経典として見るなら。
「盂蘭盆」という妙な言葉が登場するのは、上図の箇所が初めて。これだと、「盆」と何が違うのか分からない。
「盂蘭盆」と書かれてる残り2ヶ所が、上の図2枚。やはり、料理のお盆との違いは不明。この後はもう、一番最後に経典の名前として、再び「仏説 盂蘭盆経」と出て終了。
なお、全文でもかなり短いお経で、中国語版ウィキソースだと「仏説 報恩奉盆経」とされてた。
☆ ☆ ☆
この「うらぼん」は、サンスクリット語のullambana(ウランバナ)の音を写し取った訳だというのが、一応の定説みたいなものになってる。
この意味は「倒懸」(とうけん)、つまり、逆さ吊りのことで、母親が味わってた餓鬼道での過酷な苦しみを表してるとのこと。
でも、それだと漢字のお経の文章とほとんど対応してない。だから、「盂蘭盆」とは実は「ご飯をのせた盆」だろうとか(辛嶋静志氏)、別の原語が変化したものだとか、諸説があって、正直よく分からない状況だ。
英語版ウィクショナリーを見ると、パーリ語の「ullumbana」とか「ullumpana」とか、僅かに違う別の言葉も、語源の候補として挙げられてた。
☆ ☆ ☆
単なる普通の日本人の私としては、お話の流れから普通に考えて、色々ともてなしの料理をのせたお盆のことだろうと推測・想像しとこう。いずれにせよ、お盆という行事を身近に感じられるようになった。
来年の夏は、普通のお盆になりますように。それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 1891字)
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