神・AIを目指す超速の読み、盤面イメージでなく符号で~『藤井聡太二冠 新たな盤上の物語』(NHKスペシャル)
NHKの看板番組の一つ、NHKスペシャルだけでも、これで早くも3作目。異例の扱いになってる藤井聡太二冠については、当サイトでも記事が増え過ぎてるけど、せっかく見たから軽くまとめて感想を書いとこう。
「新たな盤上の物語」という副題は地味だけど、本人の「あたらしい景色」を見たいという言葉や、AIと共存しつつも人間の物語を見せたいというような言葉を受けたものになってる。
ちなみに過去の2回のNスペ記事(2017年、18年)は次の通り。
藤井聡太四段の弱点、母の野菜入りラーメン♪~NHKスペシャル『“進化”する14歳』
数学の問題と解答&『燃えよドラゴン』英語セリフ~NHKスペシャル『天才棋士15歳の苦闘 藤井聡太』
今回の最初の映像は、2010年、当時8歳の「泣き虫聡太」少年の可愛い姿だった。晴れ舞台の対局前に、「がんばります」。負けると、将棋盤の前でも舞台でも大泣き♪ うなだれる仕草は今でも残ってるけど、昔は肩をすくめるポーズもしてたわけか。
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藤井二冠の主要な対局については、自分でブログ記事を書いてることもあって、今回のNスペで語られた内容の大部分は既に知ってるものだったし、番組の演出で「天才物語」を作り過ぎてる感もあった。
例えば、終盤の王手の連続を切り抜けた、渡辺明棋聖との棋聖戦・第1局(記事はこちら)。自分の玉が詰まないことを見抜いたのが凄いと強調してたけど、それはAbemaライブ動画の解説者も見抜いてたこと。長いけど、それほど難しくも複雑でもない変化だった。
ただ、奥さんの伊奈めぐみが連載中のマンガ『将棋の渡辺くん』を紹介してたのは、いいね。あれはコミック(単行本)ではなくて、9月に発売された別冊少年マガジン10月号の内容。
怖いね(笑)。このマンガ、何気に絵が上手いと思う。藤井も渡辺も一目で頷けるし、ちょっと笑える。ちなみに「勝ちになってくるとぴたっと落ち着く」実際の映像はこちら。
マンガよりはうつむき加減だけど、藤井が難しい場面で本気で手を読む時には、もっと腰と背中を曲げて顔を盤面に近づけてることが多いから、これでも彼としては「すーん」とした姿なのだ♪ それでいて、内心は『北斗の拳』だったと(笑)。「お前はもう死んでいる」。古っ!
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第2局、伝説の受けの名手、後手3一銀も、対局中からネットでAI超えとか話題になってたこと(記事はこちら)。
ただ、最強AI「水匠2」が6億手読んで初めて最善手にした手だとツイートしたご本人へのインタビュー映像は、さすがテレビ局。開発者の杉村達也がパソコンの画面を見せて説明してた。
テレビでは27手先を読んだとしてたけど、Yahoo!の詳しい記事だと、読みの深さ(depth)は28手とされてる。
個人的には、テレビでもYahoo!でも語られてない本質的な事が気になった。なぜ6億手で止めるのか? まだAIやコンピューターの余力は限界に達してないわけで、7億手、8億手ならどうなのかといった話がされてない。
例えば、もし7億手読むと3一銀は最善ではないのなら、藤井はAIを超えたとか言いにくくなるはず(不可能ではないにせよ)。6億手で止めて凄いと感心するのは、あらかじめ藤井の3一銀を最善だと決めてるようなものだから、論理的にはビミョーなものがあるのだ。
厳密には、6億手「以上」読むと「常に」3一銀が最善手だったとか、そうゆう論証が必要になる。おそらく、AIの読みはそうなってないはずだ。
もちろん、他のAIの読みも問題で、テレビではherozのAIだと3一銀はイマイチだったというような映像を流してたけど、AIの形勢判断というのはabemaでも秒単位で刻々と変わるもの。だから、他の様々な強いAIで、色んな手数や時間において考える必要があるはず。もちろん、実際には人間がそうした考察を行うことは無理だけど。
ちなみに、3一銀に先手4四歩なら、同金、同角、後手1四角で、次の5七桂打の反撃狙いがキツイか。同角の代わりに同飛なら、同飛、同角、4九飛で、王手角取りとか。
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あと、私が非常に興味を持ってるのは、藤井が基本的に、盤面のイメージではなく、「符号」で読むということ。ちょっと信じられないから、本人に深く聞いてみたいほど。
私もそうだけど、普通、将棋で先を読む時には、頭の中に盤面をイメージして、そこで駒を動かして行く。そろばんの暗算と同様。
ところが藤井は、手を表す「3一銀」(横3列目、縦一列目に銀を動かすという意味)とかの符号で読み進めてるらしい。それは前から、ネットで見かけてた話だったけど、なかなか納得しにくいのだ。
実際、藤井は目で盤面をじっと見てるし、たまに手で顔を覆う時には、相手の側から見た盤面をイメージしてるとも語ってる。やっぱり、盤面イメージを使ってるんじゃないのかね? 誰か、その辺りを深くインタビューして欲しいもの。
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もちろん、普通の視聴者にとっては、そんな事より、日本一の詰将棋の実力を発揮する時に左手で消しゴムを回す仕草とか、悪手を指して(?)膝を手でパン!と叩いて記録係が驚いてる様子の方が面白いはず♪
藤井が将棋を始めた2007年(5歳)の映像で、「2017年 撮影」と間違えてた点を指摘するツイートも(ほとんど)無し♪ 細かっ! 数字にうるさい私は見逃さないのだ。NHKに電話しようか(笑)。クレーマーか、モンスター視聴者か!
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なお、「弘法も筆の誤り」、去年の広瀬章人・竜王相手の王将戦、終盤での致命的なミス(敗着)は珍しいね。6九飛成の王手に、6八歩と合い駒して、頓死(突然、詰まされること)してしまった。まあ、疲れてるし秒読みに追われてたんだろうけど、確かにあれだと、その夜は眠れなかったはず。
上図で私の第一感は、後手5六金だったけど、実際は7六金。同金に5六金ね。以下、手数はわりと長いけど、ピッタリ詰んでしまう。左上の桂馬や歩まで働くから、詰将棋みたいな感じ。
番組の最後は、私もお気に入りの言葉だった。もし神様がいたら、何を願うか? 「せっかく神様がいるのなら 一局お手合わせ願いたい」♪ いいね。神様も苦笑してるかも。
そして最後は、番組冒頭の可愛い姿とは対照的な、鋭い目線で終了。神様やAIをも遠くに見据える、天才のまなざし。みんな、驚異の「八冠」に輝く日を待ってるはず♪ 神の領域に近づいても、人に愛されるキャラを大切に。
王位戦の封じ手・8七同飛成については、こちらの解説記事を紹介しとこう。たまたま昨日、ヤフオクの入札が締め切られて、その時の封じ手(封筒入り、サイン付きの紙の書面)に1500万円(!)の値段が付いたらしい。九州豪雨被災地への支援金、提案者の木村一基・元王位も素晴らしいね。この大胆な攻めの手で、最年少二冠を決定した形。
首都圏は今年、まだ台風が来てないな・・とか思いつつ、それでは今日はこの辺で。。☆彡
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