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科学者の代表とされる「日本学術会議」、予算10億円と具体的活動(eスポーツ考察)の検証

日本学術会議が推薦した新しい会員の候補者の内、6人が任命拒否されたと伝えられる問題。政治とか歴史、法律の話より、そもそも日本学術会議とは何なのか。私も含めて、ほとんどの人は知らないだろう。

    

私は、名前は一応知ってて、科学者の代表とか言われてるのを何度か見聞きした程度。「15年間、6000本ほどの記事でも一度も触れてない」と書きかけて、念のためにブログ内検索をかけてみると、2本の記事に名前が出てた。

  

2013年の使用済み核燃料の最終処分場の記事と、2017年のNHKスペシャル・731部隊の記事。どちらも、非常に硬くて重い話題を扱ってる。そういった時に名前が出ることが多いからこそ、一般人の頭には残りにくいのかも。

   

  

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さて、その謎の組織について、まず辞典や辞書の類で軽く調べた後、公式サイトにアクセス。英語の「Science Council of Japan」の頭文字を取って、SCJが略称。

   

学者・研究者の団体のHPは、堅苦しくて表面的な内容に留まるものが多いが、このサイトの中身自体は、相対的に良い部類だと思う。文字だらけ、漢字だらけで、一般ウケはしないだろうが、シンプルで分かりやすいデザインで、サイトの動きも軽い。ということは、こんな騒動の中でもアクセスは殺到してないということの表れでもある。

   

いきなりブラウザの左上のタブに、「わが国の科学者の内外に対する代表機関」と表示されるのは、日本人として微妙な感もあるが、もし真面目に全部、目を通そうとすると、情報量が多くて大変だろう。

  

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組織図を見ると、会員210名、連携会員・約2000名。別に、全国100万人近い学者が投票する選挙で決まるわけではなく、基本的に、既に内部にいる人が新たな会員を呼び込むらしい。それは、良し悪しはさておき、閉鎖的な学者の組織にありがちな普通の事ではある。

   

個人情報の取り扱いが厳しい現在、全会員の名簿をネットで公表して、正会員については年齢まで公表。公の組織だから発表するということか。

   

  

     ☆     ☆     ☆

今回、正会員の半数・105名が新たに会議から推薦されて、菅義偉首相は6名を任命しなかったわけだが、それらはすべて人文・社会科学の候補者で、自民党政権に批判的な態度を示していた人達。

   

個人的な第一感としては、別に「学問の自由」が「全否定」されたわけではないと思う。そもそも「学問」など、少年少女も含めて無数の人が行ってるわけで、日本学術会議の正会員への任命などほとんど無関係。本来の所属機関で、あるいは個人的に学問をすればいいだけのこと。

      

学問の自由が「部分否定」されたというだけなら、誰でも常にある程度、経験していることに過ぎない。

   

例えば、コロナによる学校閉鎖で、大勢の生徒・学生の学問の自由は部分的に否定されたわけだが、彼らのほとんどは大掛かりな実名の抗議活動は行ってないし、メディアで個人的に大きく扱われることもない。経済その他、家庭環境で大学に行けない子ども達も大勢いる。あの6名はむしろ、非常に学問の自由に恵まれて来た人達のはず。

    

とにかく、この記事で政治・学術問題について論じるつもりはない。とりあえず、日本学術会議とは何なのか、誰が何をどのように行っているのか、少し知りたいだけだ。

   

   

     ☆     ☆     ☆

日本学術会議のサイトで私が一番不満だったのは、予算・会計の説明が見当たらないこと。どこかにあるのかも知れないが、しばらく探しても発見できなかったから、仕方なくウィキペディアを確認。すると、国の一般会計予算のデータを引用していた

  

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令和2年度、一般会計予算。日本学術会議の要求額は、運営に5億5000万円、審議などに5億円。合計10億5000万円で、国を代表する機関なら、それほど多いわけでもないと感じる。単純に200人で割っても、1人あたり500万円。トップレベルの全経費だから、そんなものか。

  

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予算の中身を項目別に見ると、職員の報酬に4億円、委員・会員の手当に2億円、旅費1億5000万円、庁費(その他的な細かい諸々の費用)1億円、国際的な分担金1億円。これらで10億円近くになる。

   

一般の職員が50人もいるのはやや意外だったが、非常に多いというわけでもない。ただ、金額も含めて、本当に必要なお金なのかは考え直してもいい点だ。そもそも、たまに活動するだけの学会、研究会なら、事務的作業の多くはボランティア的な活動のはず。大学その他、本来の職場だけでも十分な給与・手当を得ているのだ。

   

   

     ☆     ☆     ☆

一方、予算の適切さを考えるためにも、実際の活動内容を具体的にチェックする必要がある。その金額に見合うような活動なのか。

   

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「提言・報告等」をまとめたページには、上から、答申、回答、勧告、要望・・といった項目が並んでいる。おそらく、これは重要性の順だろう。

  

答申はよくニュースで見聞きする言葉だから、目新しい「回答」を表示してみると、1年に一つくらいの回答が掲載されていた。  

  

「『回答』とは、関係機関から審議依頼(政府からの問いかけを除く。)事項に対する回答です」。これ、日本語としてまず細かいミスがある。関係機関から「の」審議依頼・・と書くべき文で、「の」を忘れているのだ。

  

あら探しのようにも見えかねない細かい指摘だが、日本を代表すると自ら名乗っているトップの団体なら、誰か気付いて訂正するべきだろう。人文社会系の会員、提携会員も多いし、職員も50人いるのだから。単なるブロガーでさえ、一読してすぐ気付いた、日本語文法的な間違いだ。

     

   

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最新、令和2年(2020年)6月18日の回答は、科学的エビデンスに基づく「スポーツの価値」の普及の在り方。全体は28ページ構成のpdfファイル。実質的には20ページほどで、あまり長くない。

     

「科学的エビデンスに基づく」という言葉が、「価値」にかかるのか、「普及の在り方」にかかるのかが曖昧だが、深く考えないことにしよう。理系、スポーツ系の研究者が計25人ほど集まって、スポーツ庁からの問いかけに「回答」している。

     

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4つの審議の内、3番目は、科学技術の進展や情報技術環境の変化がもたらす「スポーツの価値」の多様化。非常に官僚的・学者的な言い回しだが、私なら明解にこう書く。「eスポーツをどう考えるか?」。

   

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少し「検討内容」を展開した後、回答は次のように13行でまとめられている。約500字。

  

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私が1文でまとめると、こんな感じの回答だ。「eスポーツは新たな多様性を生み出すが、ゲーム依存(特に青少年)には注意すべきだ」。

    

別におかしな事は書いてないが、普通で当たり前の内容であって、新聞の社説レベルだと思う。

    

その最後の回答よりも疑問を感じたのは、末尾の注に挙げられた文献。上の回答が最も依拠しているのは、兵庫県の「ケータイ・スマホアンケート」及び「インターネット夢中度調査」。継続的(5年連続)で本格的な調査ではあるが、あくまで兵庫県の調査で、日本全体でも世界でもない。

        

20年6月半ばの発表で、2018年版のデータを使用しているのも気になる。というのも、20年1月半ばには2019年版が発表されているからだ。まとめる担当者の職員だけでも3人いるのに、変化のスピードが非常に速い状況の考察で半年前のデータを使うことが難しいだろうか。

   

   

      ☆     ☆     ☆

もっと引っかかったのは、全部で19個の注の内の1つ、6番で、サンマーク出版の通俗的な一般書を挙げていること。アンダース・ハンセン、『一流の頭脳』。

  

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kindle本の無料サンプルを読んだ後、世界での論評も英語で探してみたが、ほとんど話題になってないし、ハンセンの英語版ウィキペディアの項目は暫定版のまま、公認されてないほど。ノーベル賞選定機関の研究者という肩書以外、学問的な信頼性や権威は感じにくい。

   

この本の帯だけでも、日本を代表する科学者集団が参考にするべき本とは思えない。「秘められた脳の力を最大限引き出し、あらゆる能力を最大化する、究極の英知!」。

  

そこから何を引用・参照したかというと、次のデータなのだ。「脳を最良な状態に保つためには、心拍数が高まる有酸素運動(ランニングを週3回、1回45分以上)を定期的に行うことが望ましいという報告もある[6]」。

   

「科学的エビデンスに基づく」と題する回答で、脳に対するスポーツの好影響を示す時の説明が、これなのだ。12回の委員会に加えて、フォーラム、シンポジウムも1回ずつ開催。

  

正直、日本のネットだけでも、遥かに信頼性のある詳しい説明が多数あるだろう。ちなみに今、私の環境で「脳 有酸素運動」のGoogle検索を行うと、ヒット550万件のトップは、「長距離の『有酸素運動』は脳を劣化させる」だった。データはともかく、昔からある説の一つに過ぎない。私自身はランナー&サイクリストなので、念のため。

   

      

     ☆     ☆     ☆

他にも、スポーツという言葉の語源(ラテン語)の通俗的解説など、指摘すべき点はあるが、このくらいにしておこう。もちろん、少しチェックしただけだし、内容よりも、大勢の有名知識人たちが連名で見解をまとめるという作業自体に意味があるのも理解できる。

  

しかし、国家予算10億円を投じて、大きく報道するほどの価値を持つ学術機関なのか、今後の精査や論議を待つことにしよう。ある意味、社会勉強になったのは事実。

  

なお、今週は計14968字で終了。ではまた来週。。☆彡

   

        (計 3835字)

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