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テレビ未放映、『カネ恋』幻の第5話~第8話における『方丈記』の引用と意味(大島里美『シナリオブック』)

ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』のシナリオブック発売(20年11月10日、角川書店)から、2ヶ月が経過した。

   

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既に三浦春馬ファンの方々は、本を手に入れてるか、情報を仕入れてるだろうし、そろそろ当サイトでも解禁していいと思う。そもそも、早く買わないと写真入りの帯が付かなくなるから、好きな人はすぐ買ったはず。

    

ちなみに上が、帯付きの表紙写真。表紙の下側に巻かれる帯は、何種類かに分かれてる場合もあるけど、この本は1種類だと思う。ネットに大量にアップされてる画像のすべてが同じだから。

  

帯なしだと、下の通り。アマゾンより。主演2人の写真ではなく、玲子(松岡茉優)がひっそり暮らしてた小さい部屋(方丈)の写真が印刷されてる。窓の下に置かれてるのが、鴨長明『方丈記』の本。

  

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中身はこんな感じで、台詞だけでなく、各シーンのタイトルや説明も書かれてる。

   

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例えば第1話の冒頭、玲子が手を合わせて拝む仕草は、シナリオには無い。これは私の予想通りで、既にレビューで指摘してたこと。おそらく、三浦を意識した監督による演出だろう。そうでなければ、松岡自身による演技か。

    

   

     ☆     ☆     ☆

それでは、書籍の販売に配慮して今まで延期してた記事をアップしよう。テレビ放送されてない第5話~第8話(本来予定されてた最終話)における、鴨長明『方丈記』の引用と意味の解説。ストーリー的なネタバレはなるべく避ける。

    

私は『方丈記』の引用が毎回楽しみで、ドラマ第4話まで毎回、解説レビューをアップ。オンエア中はかなりのアクセスを頂いて、ツイッターでもいくつもリンクを付けて頂いたし、今でも結構アクセスが入ってる。

   

 鴨長明『方丈記』と座布団、三浦春馬にたむけるラブコメディー~『カネ恋』第1話

 方丈記「かむなは小さき貝を好む」、『カネ恋』第2話に合わせた意味と現代語訳&プチジョグ

 方丈記「いかにいはむや、常に歩き」、『カネ恋』第3話に合わせた意味と現代語訳&プチジョグ

 方丈記「猿の声を聞いて 涙をこぼす」(原文「猿の聲に袖をうるほす」)、『カネ恋』最終回SPに合わせた意味と現代語訳

   

     

TBSのテレビドラマは、まさかの訃報を受けて予定を短縮、第4話で終了。しかし、テレビ未放映、第5話から第8話までのシナリオ(脚本)を書籍化して発売。

   

これを読むと、脚本家・大島里美の本来の筋書きや「本当の結末」も分かるし、ドラマ化された部分でも、「脚本」にない「演出」や「演技」がどのように行われてるのか分かるのだ。

   

   

     ☆     ☆     ☆

では、まず第5話。サブタイトルは、「その人と、未来を描けますか?」。要するに、好きな人との今後(特に結婚)を考えるお話。

    

テレビの第4話に挿入された『猿の聲に袖をうるほす』の部分が、元のシナリオではこの第5話に登場。既にウチでは第4話レビューで説明した箇所なので、ここでは省略する。

     

「故人を忍び」という引用は、もともと三浦の死とは関係なかったらしい。単に、三浦が演じた登場人物・慶太への思いを表したもの。

   

   

    ☆     ☆     ☆

続いて、第6話。「おこづかいとお誕生日」。以前と同じく、青空文庫『方丈記』で引用箇所を確認すると、真ん中を過ぎた辺りだ。

  

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春は藤なみを見る、紫雲のごとくして西のかたに匂ふ。夏は郭公をきく、かたらふごとに死出の山路をちぎる。秋は日ぐらしの聲耳に充てり。うつせみの世をかなしむかと聞ゆ。冬は雪をあはれむ。つもりきゆるさま、罪障にたとへつべし。

   

私が現代語に訳すと、こんな感じだ。直訳だと意味不明な部分なので、補足的な説明を加えてある。鈴木春治『方丈記の解釈』を参照。国立国会図書館デジタルコレクションで公開中。

  

春は、藤の花が咲いてるのを見る。死ぬ時に迎えに来てくださる仏様が乗って来る紫の雲みたいで、しかも極楽のある西の方に匂ってる。夏はカッコウの鳴き声を聞く。それを聞くたびに、自分が死んだ後の冥途の道案内をしてくれるよう、カッコウと約束する。

  

秋は、ひぐらしの声が充(み)ちてる。はかないこの世を悲しんでるようだ。冬は雪の景色を味わう。雪が積もって消える様子は、極楽浄土への往生の際に障害となる、人の罪が積み重なったり消えたりするように見える。

   

あまりネタバレにならないように言うと、会社で犯「罪」が発覚して、すべて終わりのような雰囲気が出て来る。そうした物語の流れと重ねてるわけだ。最初に罪に気付いたのは当然、「あの人」♪

    

古書のくずし字だとこんな感じ。以前の記事と同様、鴨長明学会『鴨長明方丈記』より。これも国立国会図書館にて公開中

  

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     ☆     ☆     ☆

さらに、第7話。「経理部のプライド」。真ん中より少し前側の箇所が引用されてる。

   

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もしおのづから身かずならずして、權門のかたはらに居るものは深く悦ぶことあれども、大にたのしぶにあたはず。なげきある時も聲をあげて泣くことなし。進退やすからず、たちゐにつけて恐れをのゝくさま、たとへば、雀の鷹の巣に近づけるがごとし。

   

もし、自分自身は大した事ないのに、たまたま権力の近くにいて助けられてる人であれば、心の奥で喜ぶことがあっても、思い切り楽しむことはできない。嘆いてる時でも、声をあげて思い切り泣くことはできない。身動きが難しく、恐れおののくように振舞う様子は、例えば、スズメがタカの巣に近づいてるようなものだ。

   

これは、遠回しに言うと、社内の「犯罪者」(悪者)がこそこそビビってる様子を表す引用。あえて、誰とは言わない♪

   

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     ☆     ☆     ☆

そして最後、第8話「ほころびの行方、ふたりのはじまり」。この場合のほころびは、2人の事だけじゃなくて、会社の巨大なほころびも指してる。

   

第1話で引用された方丈記の冒頭の有名な箇所が再び登場。その少し後、「あしたに死し・・・」という箇所も引用されてるけど、既に以前の記事で触れてるから、ここでは省略。

   

それ以外に、方丈記のラスト辺りが引用されてた。

  

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そもそも一期の月影かたぶきて餘算山のはに近し。・・・・・・月かげは 入る山の端も つらかりき たえぬひかりを みるよしもがな。

   

さて、自分の一生は、月の光が沈むような感じで、余命は終わりに近づいてる。・・・・・・「明るい月明かりは、山に沈んで消えるのが辛い。絶えない光を見たいものだ」。

   

最後の歌は、自分の命という儚い光と、仏様のありがたい光と、2つを掛け合わせてる。ドラマのシナリオ的にはさらに、会社の命運も掛け合わせてる。2人の命運は、ちょっとしか入ってない(個人の感想♪)。

  

ちなみに、なぜか最後の歌だけ、くずし字になってないのは、研究者が補った文字だからだと思う。

    

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     ☆     ☆     ☆

月の光。。 個人的には、当時(2020年の夏)、三浦春馬と共演中だったJUJUが、年末の紅白歌合戦で最初から最後まで見せてた瞳の光を思い出す所か。誰もいない真っ暗な観客席に向かって熱唱する姿が印象的だった。

       

 離れていても そばにいるよ ・・・

 ぬくもりはいつも この胸の中に

 決して失くさないよ ありがとう

    (『やさしさで溢れるように』 歌詞・小倉しんこう・亀田誠治

   

それでは今日はこの辺で。あらためて、合掌。。☆彡

    

         (計 2898字)

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