唐田えりか写真エッセイ「mirror」第3回・東京行き~『日本カメラ』21年3月号
(☆21年4月27日追記: 唐田えりかのエッセイ最終回を別記事でレビュー。
「唐ちゃんの綴る言葉が私は好きだよ」、写真も♪~唐田えりか「mirror」5(最終回)・海の幸(『日本カメラ』21年5月) )
☆ ☆ ☆
もう2回、記事を書いたから、今回はもういいだろう・・と思ってたけど、単純に写真とエッセイの出来がいいから、三度プッシュしとこう。
女優・唐田えりかのポエム(詩)に近い写真エッセイ、mirror=鏡。写真を撮ることは、鏡で自分自身を見つめること。特にフィルムカメラだと、スマホやデジカメと違って、1枚1枚に気持ちを込めて丁寧に写す=映すことになる。
ちなみに当サイトの過去2本の記事は以下の通り。昔の連載内容は、全く知らない。エッセイを書いてることも、写真好きということも知らなかった。
フィルムカメラで自分の心と向き合う~唐田えりか写真エッセイ「mirror」第1回・夕焼け(雑誌『日本カメラ』連載)
唐田えりか写真エッセイ「mirror」第2回・猫~『日本カメラ』21年2月号
☆ ☆ ☆
第1回は、ちょっと不気味な感もある、夕焼けの写真。第2回は、なかなか愛し合うことができない猫(たぶん拾って来た捨て猫)。
少しずつ落ち着いて来てるのか、今回は一見フツーの実家の(?)写真だ。しかし、よく見ると構図がそもそも独特。わかりやすくいうと、畳がメインの写真にも見えるのだ♪ タイトルは「畳」でもおかしくないほど。
その写真には、自分の家の特徴、らしさはほとんど写ってない。キレイだけど、どこにでもある畳と、縁側みたいな板張りの廊下。そこには、斜めに差し込む朝の光によって、影が出来てる。物干し竿と、四角い洗濯物ハンガーの影。そして、洗濯物のカゴと、干してる最中らしき1人の人物。
たぶん、最も身近な家族である、お母さんだろう。影には頭部もあるけど、実物が写った姿では頭部は隠れてる。これはプライバシーへの配慮とか個人情報保護というより、むしろ、唐田えりかの視線なのだ。
彼女は、その人の顔を見れなかった。地面を見つめてた。目が合うと、涙が溢れそうだから。気持ちが揺らぎそうだから。
ちなみに機材は前回と同じ。カメラは、Olympus Pen(オリンパス・ペン)F。63年5月発売。交換レンズは標準的な、F Zuiko(ズイコー) auto-s 38mm F1.8。フィルムはコダック・ポートラ400。
☆ ☆ ☆
「東京行き」と題するエッセイは、「行ってきます」から始まる。普通に考えると、デビュー時の最初の出発=旅立ちだろうけど、そこは意図的にボカしてある。
その後の何回かの「行ってきます」も重ね合わせてるのだ。おそらく、騒動が少し落ち着いた時の再出発も含めて。そして今、(東京の?)自分の部屋から、東京の仕事や職場に行くことも含めて。
たぶん、一番最初が真っ赤なトランクとリュックだったんだと思う。その派手で活動的な姿の描写は、写真のナチュラルな風合いとコントラスト(対比)をなしてる。写真の家はあくまで、自然で地味な色合いなのだ。畳、床、庭、洗濯物。
その対比はそのまま、場所の対比でもある。華やかな東京と、静かな田舎(もともとは千葉)。「東京行き」と言いつつ、家の畳の写真を選んでるということは、今の心の半分以上は田舎にあるんだろう。
☆ ☆ ☆
まだまだ、朝起きるのが憂鬱なことも多いはず。冷たい世間の視線の中で生きるだけでも、耐え難いほど辛い。特に、一度は軽く脚光を浴びた若手女優としては。
そんな起きれない朝でも、彼女の耳には田んぼの虫や蛙の鳴く声、鳥のさえずりが聞こえて来る。錯覚、幻聴とは思えないほどリアルな事実として。
続いて、朝ごはんの支度の音や香りがして来た後、「起きなさい」という声も聞こえる。少し前まで、ずっと過ごして来た日常が、今の支えになってる。
そして、また今日も目覚めるのだ。あんまし楽しい1日じゃないとしても、そろそろ起きないと。
最後は、家族への感謝と共に締めくくられる。おはよう。ありがとう。行ってきます。東京の仕事が無理なら、別に頑張る必要もないけど、このままでは悔いが残るだろうから、もう1回、もうちょっと頑張ってみよう。。
☆ ☆ ☆
そう言えば私も、実家にいた頃は、母や父の声でよく起こされてた。一番、効き目があったのは、私の部屋に近づく母親の足音だ♪ 田んぼは近くになかったけど、雀のさえずりはうるさいほど聞こえてた。
録音しとけば良かったな・・とは思うけど、当時は単なる日常生活だから、その貴重さが分からない。本当は今、この瞬間も、後から見れば貴重なのかも。
とりあえず、明日の朝は自力で早起きする予定(実話♪)。声の目覚ましとか探してみようかな・・とか思いつつ、ではまた。。☆彡
(計 1868字)
(追記101字 ; 合計1969字)
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