木片や枝葉を一つずつ見つめ、細い山道を孤独に~唐田えりか写真エッセイ「mirror」4・共生(『日本カメラ』21年4月)
(☆21年4月27日追記: 唐田えりかのエッセイ最終回を別記事でレビュー。
「唐ちゃんの綴る言葉が私は好きだよ」、写真も♪~唐田えりか「mirror」5(最終回)・海の幸(『日本カメラ』21年5月) )
☆ ☆ ☆
今回こそ、見るだけにしよう・・と思いつつ見た、唐田えりかの写真エッセイ「mirror」(ミラー)、第4回。個人的には、実に素晴らしい☆ これまでの4枚というか、4ページの中で最高だ。
ちなみに当サイトの過去のレビュー3本は、以下の通り。
フィルムカメラで自分の心と向き合う~唐田えりか「mirror」第1回・夕焼け(雑誌『日本カメラ』連載)
唐田えりか写真エッセイ「mirror」第2回・猫~『日本カメラ』21年2月号
「mirror」第3回・東京行き~『日本カメラ』21年3月号
☆ ☆ ☆
さて、個人的な絶賛から書き始めたけど、今回は一見、山登りの地味な白黒写真にすぎない。彼女のファンでさえ、何これ?と数秒見て終わりにしてしまう可能性がある。
カメラはいつものクラシックな愛用品。フィルムはコダック・ゴールド200だから、カラーフィルムのモノクロ現像ということかな? まあ、カラー写真をデジタルでモノクロにする方が簡単だけど。
そこで、初めて、非常に大まかな手書きイラストを添えて解説してみよう。元の写真はグチャグチャした光景で、空白部分はほぼ無し。空さえ、僅かに写ってるだけだ。元は白黒だけど、黒ペンで書くと殺風景すぎるので、淡いピンク、桜色を選択。
本来なら今は、桜の時期なのだ。季節的にも、若い彼女の年齢的にも。実際、今回の雑誌は写真専門誌の4月号だから、唐田のエッセイの直前には、11ページにわたって綺麗な桜の写真特集が続いてる。
ところがその直後、唐田の雑然とした山道の白黒写真が挿入されて、その後はまた普通のカラーの内容に戻るのだ。地味で無味乾燥な外見が逆に目立って、輝きを放ってる。
☆ ☆ ☆
これまでの4回を見ると、意識的か無意識的かはさておき、少しずつ人間に近づいてるのが分かる。とりわけ、自分自身に。夕焼け、猫、家族(お母さん?)らしき人のかすかな影、そして今回が、1人の女性。
友人だろうか? 唐田本人には見えない女性が、たった1人で鬱蒼(うっそう)とした山の斜面に向かってる。手前の辺りには、丸太(短く切った木)や小枝みたいな物が沢山、ゴロゴロ、グチャグチャと地面を覆ってる。
最初は分からなかったけど、よく見ると、左に大きく曲がる細い山道が上に伸びてて、女性はリュックだけ背負ってそこへ分け入ろうとしてるのだ。
これは、まだ秩序だってない混沌とした山と向き合い、一体化しようとする彼女の姿。だから、エッセイの題名(タイトル)は「共生」となる。
☆ ☆ ☆
強くなりたい。強くならなければいけない。
ここ1年半ほどの激動を何とか生き延びて来ただけで、十分、強い女の子だと思うけど、本人によると、強い「ふり」をしてただけらしい。フリをしてれば本当に強くなれるかと思ったら、そうではなかった。
孤独になることを恐れ、相手(おそらく非常に身近な人々)に言いたい事もハッキリ言えず、「なんか・・」「なんとなく・・」と自分の思いをボカしてしまう毎日。それが続く内に、言葉は消えて、心の息の根も止まってしまう。
周囲には無数の物事が雑然と絡まり合ってて、混沌から目を逸らしてしまいそうになるけど、それら一つ一つが必然的に全体とつながってる。私はその中で生きるのだから、どんなものでも見過ごすわけにはいかない。たとえ、あまり綺麗には見えなかったり、トゲがあったりしても。
人として生きていくために。
人と生きるために。
☆ ☆ ☆
ポエム(詩)に近いコラムだから、細かい形式の指摘もすると、最後の言葉を2行にするのなら、最初の言葉も改行した方がより美しかった。
強くなりたい。
強くならなければいけない。
短・長の2行で始めて、最後は長・短の2行で締めくくる。aB・・・B´a´の様式美。
広い道路が整備されてない山奥に一人で分け入ると、ヘビや猪、熊が出て来たり、がけ崩れがあるかも知れないから、いざとなったら助けを求められるように、準備だけはしとく方がいいね♪
順番的に、来月は複数の人間か、こちらを向いた人間の写真が来るのが自然だけど、はたしてどうか。硬派の本格的写真雑誌だし、自分を入れた写真はもう少し後に回した方がいいと思う。12月とか、最終回とか。
ともあれ、今後も楽しみにしとこう。それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 1790字)
(追記101字 ; 合計1891字)
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