藤井二冠の竜王戦・4一銀、「神の一手」というより「次の一手」か(vs松尾八段)
ウチは将棋サイトではないし、なるべく将棋の話は書かないようにしてたけど、天才少年・藤井聡太の登場以来、度々記事を書いて来たし、Abemaの無料動画も時々見てる。
今回、3月23日の竜王戦の4一銀という好手については、その日の夜中に知ったけど、普通のメディアの記事を読んでも棋譜も盤面の図も載せてなかったし、Abemaは既に有料だったからパス♪ その後、断片的な情報を色々集めて、ようやく内容がほぼ分かった。
今までなら私もすぐ感動を記事にしてたけど、今回は正直、初めてそれほど感動しなかったのだ。前評判が高過ぎたから期待し過ぎたというのもあるけど、「神の一手」とか歴史的な名手とまでは思わないし、「百人いたら百人」別の手を指すとも思わない(カッコはプロ棋士の言葉)。
もちろん、「次の一手」として出題されるような鮮やかな妙手で、鋭いのは確か。プロ棋士やセミプロのような人達が将棋界を盛り上げようと頑張ってるのもわかる。
ただ、ここでは単なる将棋好きブロガーの意見(異見)を書いとこう。ちなみに、今まではずっと天才の絶賛記事を書いて来たので、念のため。先日なんて、不二家チョコレートのCM記事まで書いたほど♪
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上図が55手まで進んだ局面。手前の先手が、藤井聡太・二冠。向こう側の後手が、松尾歩・八段。居飛車同士で、共に飛車が高い位置に浮いてる、派手な空中戦になってる。
たぶん、先手の藤井がわざと4四角を打たせて、3四飛と一マスだけ飛車を進めた局面だと想像する。アマチュアの初級者の対局なら、56手目の8八角成で一気に後手の勝ちになる所だろう。
しかし、アマでも上級者なら、この種の変化はあちこちで経験してるはず。私が小学生の頃、自分のお小遣いで買った将棋の本でも、似た変化の解説が載ってたし、実戦の経験も何度もある。角の成り込みも、飛車同士のぶつかり合いも、珍しくはない。
上図で、先手が同金と馬を取るのは、同飛成ですぐ負け。一方、先手・8四飛と、後手の飛車を取って馬に当てると、7八馬と金を取られて、1手負けてる気がする(変化は複雑)。後手に3八金と挟みうちされる前に、先手は「詰めよ」(次に詰ませてしまうよという局面)をかける必要がある。
ポイントは1手稼ぐこと。「終盤は、駒の損得よりスピード」とか、よく言われる。上図でもし「次の一手」の問題を出されたら、アマチュア強豪だと少なくとも一応思いつくだろう。飛車がぶつかってるし、自玉も危ないから、王手をかけるのが第一候補。すると可能な手は限られる。
☆ ☆ ☆
もちろん、答は57手目、4一銀。アベマの解説用AIもそう示してたらしいけど、あのAIが示す最善手は秒単位で刻々と変化するから、詳しい事は動画を見ないと分からない。双方の評価値の数字もコロコロ変わる。
この手を、「タダで取れる飛車を取らず、持ち駒の銀をタダで取られる場所に打って王手をかける」と評したプロ棋士がいた。それは間違いではないけど、ややミスリーディングな(誤解を招きやすい)褒め方だ。もちろん意図的な脚色だろうけど。
飛車を取る前に、持ち駒の銀を捨てて1手稼ぐ。これが本質であって、飛車を取らないわけではない。4一同玉なら、3二金をきかせた後で、8四飛と取れば、次に「詰めよ」をかけれる。挟み撃ちに出来るのだ。
そこで、後手の松尾は4一同金だけど、後手の玉は逃げ道を壁でふさがれた形。この壁の解消に1手かかるのが致命的。
☆ ☆ ☆
4一同金とさせて、先手は8四飛。後手は今さら仕方ないから、7八馬。おそらく、すぐに負けを悟ったはず。
ここで先手は7五桂。これは、次に詰めるよという「詰めよ」の手だから、後手は5一金で逃げ道を開けた。この金は元々、5一にあったのだから、1手損したということ。終盤の貴重な1手を稼ぐ捨て駒が、4一銀。発想としては基本的なものだ。ちなみに後手は2手損ではない。先手も1手使ってるから。
この後はもう、6三桂成から6六飛で勝ち。2枚の飛車は右に回して使うことも可能だし、右には2四歩も待ち構えてる。角もよく効いてる。もう後手玉は逃げられないし、先手玉はすぐには詰まない。飛車さえ渡さなければ。
ともあれ、今年度は藤井聡太二冠が一段と飛躍した年になった。名人位挑戦にはまだ時間がかかるけど、とりあえず竜王のタイトル獲得に期待しよう。ではまた。。☆彡
(計 1817字)
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