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『レッドアイズ』第9話のチャーチル名言「地獄の真っ只中にいるのなら、そのまま突き進め」、ほぼ間違い

☆追記: 最終回のチャーチルは本物の名言で、別記事としてアップした。

 「これは終わりではない。終わりの始まりですらない」、英語出典と原文、意味~『レッドアイズ』最終回 )

  

 

     ☆     ☆     ☆

チャーチルの名言もどきなんて、あんまし話題になってないだろうな・・と思って、ツイッター検索をかけてみると、あんましじゃなくて、ほとんど話題になってない。みんな、物語の進展や真犯人探しに夢中らしい。

   

ただ、予告が始まる直前の心理カウンセラー・鳥羽(高嶋政伸)の言葉は、合計で30人くらいがつぶやいてた。その統計が面白い。「記憶を楽しめ」説がやや優勢だけど、「地獄を楽しめ」説をとる人も結構いる。

  

私は最初、「記憶を楽しめ」に聞こえたし、意味も一応分かる。ただ、あまりに深層心理学的な言葉だし、直後のチャーチルの言葉は「地獄」、その後の予告編のテロップでも「地獄」と書いてたことを考えると、ビミョーな所だ。

  

10回くらい聞き直すと、「ジオクを楽しめ」が一番近い発音だと思う。冗談ではなくて、本来の台詞は「ジゴク」だけど、「キオク」に聞こえるように演技・演出した可能性はある。高嶋の活舌の問題もあるのかも。

  

ちなみに、脚本は酒井雅秋、演出は水野格。

   

   

     ☆     ☆     ☆

では、今週の名言について。第7話のバルザック半ば間違いだと指摘したけど、予想通りアクセスは少ないし、間違いの訂正も公式には出てない。

  

そこで、もう1回、ポイントだけ書いとこう。ドラマのテロップは有名なバルザックの名前を書いてた。ところが、あの言葉は別の無名のバルザックの言葉だ。別人である2人を混同してしまってる。

     

調べるということをしてないから、今回はほぼ完全に間違えてた。脚本家も演出家も、第7話とは別人だけど、要するにスタッフ全体による検証システムが機能してない。

   

下が証拠の静止画キャプチャー。主人公・伏見(亀梨和也)が、仲間の小牧(松村北斗)を銃で撃った後に逃走(?)してるエンディング。

   

210323a

    

 地獄の真っ只中にいるのなら、そのまま突き進め

       ウィンストン・チャーチル

   

   

     ☆     ☆     ☆

この言葉、検索すると日本語の個人サイトがズラッと並んだので、最初の10以上をチェックしてみたけど、どこにも出典が書かれてない。英文は書かれてるけど、どのメディア、何の本に書かれてるのか、ソース(情報源)が全くないのだ。

     

もちろん、これだけではまだ間違いとは言えないけど、かなり怪しい。ちなみに、1つのサイトだけ、この格言は間違い(偽物)だと指摘してた。

   

私はいつものように、英語版ウィキクォートをチェック。ウィキの引用句版。今回は元の文が英語だし、英国の超有名人(元首相&有名作家)だから、ここが一番信頼できるメジャーなサイトだ。

    

わざわざ赤茶色にしてある「Misattributed」(間違ってチャーチルのものとされてる言葉)の枠組に、例の言葉の英語が入ってた。

  

  

    ☆     ☆     ☆

210323b

   

 If you're going through hell, keep going.

 もし、あなたが地獄を通過してるなら、そのまま進みなさい。

   

  

ドラマのストーリー的には、婚約者を殺された伏見が、信頼してた仕事仲間を撃った後に走り去ることを示してる。

    

この言葉は、ウィンストン・チャーチル協会の雑誌『ファイネスト・アワー(最も輝かしい時)』が調べた所では、どこにも見当たらない。本当の源泉である発言者も不明。

    

さらに、ウチでも以前、高く評価したことがあるマニアックな調査サイト「Quote investigator」(引用調査人)でも、たぶん間違いだとしてる

  

   

     ☆     ☆     ☆

日本では珍しく、間違いを指摘してたサイトは、協会HPが間違いを指摘してる記事を根拠に挙げてた。実はその協会の記事こそ、英語版ウィキクォートが挙げてる雑誌の4つ前の号(141号)なのだ(ネット公開)。

    

ただ、英語版ウィキクォートが挙げてる145号の雑誌の方がハッキリした指摘になってるので、そちらの原文を引用させて頂こう。これもネットで無料公開されてる

   

210323c

  

 (Finest hour, The Journal of Winston Churchill, number 145, 2009-10, p.9

   

チャーチルによる言葉ではないし、少なくとも、関連する5000万の単語を調べても彼のものだとは確証できなかったと書いてる。

   

   

     ☆     ☆     ☆

時々、言われるように、一般に何かが世の中に「存在しない」ことの証明は非常に難しい。不在の証明はほぼ不可能なのだ。逆に、存在なら1つ見つければいいだけ。

   

数学などの理論的・人工的な世界は例外だから除くとして、普通の経験的世界には、いつ、どこに、何があるか分からない。その意味で、チャーチルの例の言葉も、ひょっとすると本当はどこかにあるのかも知れない。

  

ただ、専門家も含めて誰一人として出典を挙げれないような引用句は、ほぼ間違いとすべきだろう。ということで、日テレには訂正をお勧めするけど、ほとんど可能性ゼロかも。

    

マニアック・ブログとしては、この程度の根拠を示して間違いを指摘した所で終わりにしよう。ではまた。。☆彡

   

      (計 2096字)

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