コンセプトは「Worlds we share」(私たちが共有する多様な世界)~東京2020オリンピック閉会式
コロナ禍で激しい反対世論の中、無事にすべて終了した東京五輪の閉会式。私はリアルタイムではあまり真面目に見てなくて、録画しながら流し見しつつ、他の事をやってた。下は最初の控えめな花火。
そういった気軽な見方だと、確かに「暗い」、「退屈」、「つまらない」、「分からない」といったネガティブな感想を持つのも自然だと思う。ネットの様子では明らかに、開会式よりさらに不評に見えた 。
ただ、暗さと分からなさ(混沌=カオス)は演出側が狙ったもので、必ずしも悪いものではないし、必要なものでもあるし、現実でもある。
その点はもう少し説明があっても良かった。NHKのライブ中継で、桑子真帆アナらがもっと丁寧に解説するとか。公式サイトの説明も、奇妙に長いpdfファイルになってて、ほとんど読まれてないはず。企画会議の資料の提示で終わってる。
閉会式のコンセプト(根本的な概念、考え)、「Worlds we share」は、英語を日本語に訳すと、「私たちが共有する多様な世界」。意味的には、無数の世界とも訳せる。彼岸、あの世や、未来・過去も含めて。
フレーズの先頭に持ってきた名詞、World「s」の複数形のs、多数性を強調してたから、共有(シェア)するのが難しいのは当然。まさに現代社会の実状の反映だ。
☆ ☆ ☆
混沌の対立概念は、秩序であって、それは必然的に一様性、同一性、分かりやすさへと向かう。分かりやすい方が、秩序は保てるのだ。
例えば、国立競技場の周辺で混雑する「密」な群衆も、SNS映えするものとして分かりやすい花火が上がると、一斉にそちらへスマホを向ける。みんなの行動が一瞬で揃うのだ。読売新聞HPより。
非常口の色・デザインとか、警察・警備員・スタッフの制服、ブランドのロゴ、説明書(マニュアル)などを考えても、すぐ分かる。
典型的なのが、閉会式の後半に挿入された、次回の五輪の開催地パリの紹介映像。青・白・赤の国旗の3色と、エッフェル塔のもとに「密」で集う人々の熱狂に溢れてた。その裏側には、実は日本より遥かに多様で困難な社会状況が隠されてる。ちなみに塔の旗はCGのはず。
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東京五輪の閉会式は、全く別の方向性を目指してる。典型的なのが、東京の日曜午後の公園をテーマにしたとされるパフォーマンス。バラバラの派手な衣装に身を包んだ多数のパフォーマーが、バラバラに楽しむ様子を表してた。
もちろん、表面的・外見的にとらえると、東京の現実とはかなり違ってる。ただ、みんなバラバラで好き勝手に楽しんでるのは事実。
例えばジョギング・コースの周回路を、本来の左回りとは逆向きに人や自転車が進む姿も見かける。大きな犬をリード(紐)なしで走らせる人も、禁止のスケボーをする若者もいる。
整然とした五輪の競技会場の風景とは真逆のもの。それを閉会式で見る選手や視聴者がバラバラなのも、祝祭から日常への帰還ということ。
一人一人がバラバラに小さく輝いた後は、すべてに暗い闇、死が訪れる。閉会式のラストはまさにそうした演出で、その前に宮沢賢治の「星めぐりの歌」が登場したのも自然なのだ。
多数の星をそれぞれ巡った後で、遥か遠くの場所に向かおうとする歌詞なのだから。決して1つの場所に到着して集まることなど無いまま。その遥か遠くの最後の目印を会場で象徴するものこそ、炎が消える聖火台だった。。
☆ ☆ ☆
では、花火に続く閉会式の流れを、NHKの中継映像の縮小キャプチャー画像で振り返りつつ、短い感想を挿入。
秋篠宮さまと同時に、IOCバッハ会長が入場。続いて、菅首相。そして、小池百合子・都知事。キレイな色(ライトブルー)の着物が目立ってた。
国旗の入場の手前、左はパリ五輪で採用されたブレイキン(ブレイクダンス)の河合来夢(らむ)、20歳。既にユース五輪で二冠らしい。神奈川県出身。
医師を挟んで、右には義足のモデルとしてお馴染みとなった海音(あまね)、19歳。初めて歩く姿を見たけど、自然で滑らかな動きで驚いた。次のパラリンピックも意識。
国旗掲揚、国歌「君が代」斉唱。一同、起立。小池知事だけは左の胸(心臓の上)に右手を当ててた。秋篠宮は身長が高くて、178cmとか言われてる。
日の丸は上手くはためいてなかったけど、宝塚歌劇団の君が代はさすがに華麗で風格もあった。そう言えば、表彰式の女性スタッフの衣装はこんな感じでも良かったのに(まだ言うか!♪)。
☆ ☆ ☆
そして、まず国旗の入場行進。中央でパステルカラーのアシスタント・スタッフが目立ってたのは、意識的な演出だろう。普段は目立たないけど、大切な大会参加者。この衣装は明るくて多様で、選手との区別もついて、いいと思う。
中央の円と、外側の長方形の枠に沿って、ボランティアが並んだ後、国旗を旗手からスタッフが受け取ったらしい。そして、各国の選手団が入場。競技終了後、原則48時間で選手村を出るルールがあるから、直近の競技の選手が中心。
音楽は、古関裕而・作曲のオリンピック・マーチ。自分の運動会を思い出す、懐かしいメロディー♪
ドイツは日の丸の小旗も一緒に振ってくれてた。さすが、敗戦から立ち上がって来た仲間。
「ARIGATO! KONICHIWA!」と掲げる外国人も。「ありがとう」はいいとして、「こんにちは」のローマ字表記はこれで通じるのかね? これだと「こにちは」だけど♪
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そして、日本選手団の入場。90人くらいとか言ってた気がする。開会式の天皇陛下は笑顔を見せてたけど、秋篠宮の笑顔は映らなかったかも。
スポーツ・クライミングの野口(左)と野中(右)の区別がやっとつくようになった♪ 清楚な美人系が野口で、ギャル女王様が野中(笑)。それぞれ、銅メダルと銀メダル。長く先頭を走って来た野口は引退、お疲れさま。
マーメイド・ジャパンは、「開催して下さり ありがとうございました!」と手書きした日の丸で挨拶。桑子アナは新体操と紹介して、後で訂正。イラストを見れば分かる通り、本当はアーティスティック・スイミング(旧・シンクロ)。
イギリス選手のシャツの背中には、「ありがとう東京」。こちらこそ♪
何気に目立ってたのは、ウクライナの片足開脚女子♪ 体操の選手かな? ウクライナは、ウェアもオシャレで、綺麗な女子選手が多めだった。中でも柔道・銅メダルのビロディトは長身でスタイルも良くて、いいね ♡ まだ20歳だからパリ五輪も期待。
選手の入場を周りで盛り上げるスタッフ達。女性が大部分かな?
☆ ☆ ☆
選手たちのスマホの光も含めて、無数の小さな光が上空に舞い上がって五輪マークを作るシーンは、最も華やかだった。技術的にどうなってるのかは、また後ほど。ここでも花火は短く控えめ。
そして、バラバラの大道芸みたいな公園パフォーマンスのシーン。演奏は、東京スカパラダイス・オーケストラ。久々に名前を聞いた。
世界一とか言われるDJ松永は、ソロ映像だと短かったけど、実は映る前から参加してたらしい。ブレイクダンスとDJのスクラッチは、当初からヒップホップで一体となってた。
フランスの「愛の讃歌」を熱唱した、東京出身のmilet(ミレイ)。見るのは紅白歌合戦に続いて2回目だけど、可愛くて美人で、いいね。年齢非公表だけど、やや童顔のアラサーかな。タイトルはフランス語「Hymne a l'amour」の直訳。
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そして、今大会から男子と共に閉会式での実施となった、女子マラソンの表彰式。米国の銅メダリスト・セイデルの満面の笑顔が印象的だった。誰も予想してなかった見事な走りも印象的。ヘソ出しウェアの腹筋もハッキリ割れてた。表彰台の段が低いのは、なるべく平等ということか。
そして、男子マラソン。王者キプチョゲを挟んで、お友達同士のソマリア難民2人。銀・ナゲーエ、銅・アブディ。
ちなみに、閉会式でもマスコット・キャラクターのミライトワの出番が無かったとか言われてるけど、小さい花束の下側でミライトワは結構、映ってた。みんな、メダルと花に目を取られてるんだろうけど♪
選手の表彰の後は、スタッフの表彰。まずは映像で、メッセージ・ボード(Welcome to JAPAN)とか、五輪のロゴ入り折り鶴とか、色々と紹介されてた。あまりコストをかけない手作りの、おもてなし。
表彰式では、IOCの新しいアスリート委員(太田雄貴ら)から代表者に花束贈呈。花の下のミライトワが、ウェアの青色と保護色になって隠れてる (^^ゞ
上のコが一番強調されてたから、カメラマンが選ぶ一番可愛い子か♪ 右隣の右隣も可愛く見えた。ルッキズム(外見主義)とか叩かれるから、もちろんNHKの解説では触れられない。いまや民放の情報バラエティでも言いにくいはず。
その後は、この世を去った人々に思いを馳せるシーン。緑の衣装もちょっと不気味なアオイヤマダのコンテンポラリー・ダンスは、死者の概念を広げようとしてたらしい。この世に居場所を失った様々なものへと。
アイヌ古式舞踊や沖縄エイサーなども、その種の日本人でさえ分かりにくい文化だけど、東京音頭はカナダ人にも分かりやすかったと♪ そう言えば、賑やかな盆踊りも、死者を意識したものだった。
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その後は、オリンピック旗をパリに受け渡す儀式。パリの女性市長・イダルゴが着てたのは、何気にディオールのドレスだったらしい。この女の闘いは、着物の勝ちか♪ 続く映像は、確かに地味めの閉会式の中で目立ってた。
旗がCGだから、このアクロバット飛行の3色の煙もCGかも。全く同じ映像が繰り返されてた。ちなみに開会式の前に航空自衛隊ブルー・インパルスが描こうとした五輪マークは、すぐに風で流されて崩れてた。
「ありがとう、東京!」、「MERCI(メルシー)」。
パリからのメッセージに、東京のスカイツリーも3色で応じる。
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この橋本聖子・組織委員会会長の挨拶の時、五輪の赤い輪の左上に蛾(ガ)がとまってた♪ 空気を読まない虫。ライブ動画だから、CGでは消せなかったか。
仕方なく、バッハ会長が後ろを向いてる隙を狙って、黒い服に黒マスクのスタッフが黒っぽいタオルを振り回す♪ 5回くらい振って、ようやく蛾も退散。多様性の調和というのはあくまで人間中心の考え。目障りなガは仲間外れなのだ。
この辺りになると夜10時を過ぎてて、静かに退場した選手も少なからずいたけど、上からの映像で確認する限り、意外と残ってたと思う。
そして、クライマックス間近。大竹しのぶと子供たちが、宮沢賢治『星めぐりの歌』を歌った後、聖火台に目を向ける。
「あかいめだまのさそり」で、さそり座からスタートして、最後は「そらのめぐりのめあて」。夜空の星巡りの最後に向かうのが、こぐま座の北極星だと。
細かい指摘を入れると、ウィキペディアの「『あかいめだまのさそり』とはさそり座の心臓アンタレス」という説明は、語順を間違えていて、意味的にも変。
正しい説明は、「アンタレスを中心に持つ、さそり座」。最後を除くと全て、星ではなく星座を対象にした詩だ。
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聖火も含めて、ほとんど全ての光が消えた後、残るは北極星みたいなパープルの輝きと、電光掲示板の「ARIGATO」の文字。
64年の東京五輪のサヨナラと同じフォントらしい。1文字あたり、横5コ×縦7コ、合計35ピクセルの小さい正方形ライトで構成されてる。原始的な電卓モニターの数字1コを示す、7セグメント(7区画)の改良版みたいなもの。
例えば、Aというアルファベット大文字は、下の右側の7セグメントだと、Dを除く6つの細長いライトを光らせることに対応してる。英語版ウィキより。
ボランティアが掲げる旗には世界の言葉で、感動をありがとうとか色々書かれてた。ハングル「カムサ(感謝)」の上は、ポルトガル語でObrigado(オブリガード)。右下は、インドネシア語とマレーシア語のTerima kasih(テリマ・カシー)か。
放送最後のカットも、あくまで静かにひっそりと。夜空の月の光のように。もう二度と、東京五輪を見ることはないだろう。
さようなら。ありがとう!。。☆彡
(計 4929字)
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