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東京2020パラリンピック開会式「WE HAVE WINGS」、片翼の小さな飛行機は飛べ立てなかったけど、飛翔☆

先天性(生まれつき)の障害で、左手も自由に動かせない和合由依(わごう・ゆい)さん。13歳の中学2年生。パラリンピック開会式のショーの最後、見せ場では結局、飛び立てなかったけど、「飛んだ」。ショーの大成功という意味での見事な飛翔。

   

実際、直後のネットには絶賛の言葉が並んでた。オリンピックより遥かにいいとかいう言葉はともかく、可愛い少女が演じた片翼の小さな飛行機が見事に飛び立つ物語が一貫して描かれてた、といった感じの称賛の嵐になってた。

   

下は一例、直後の日刊スポーツの記事。見出しの最後は、「空へと飛び立つ」。

  

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     ☆     ☆     ☆

ただ、そうした記事をザッと流し見するだけで、私が見るとたぶん違う印象だろうな・・とは感じてたから、4日遅れのNHKプラスで開会式をじっくり視聴。ポイントは、ウォーリー木下らによる劇の演出と演技。

   

式のコンセプトは、「WE HAVE WINGS」。これ、「私たちには翼がある」というのが公式の日本語訳のようだけど、それでは複数形の「S」が訳されてない。

    

より正確には、「私たちには多様で多数の翼がある」と訳すべきだろう。「WING(翼)」に関する多様性と多数性が本質なのだから。もちろん現場的には、長すぎて複雑すぎて却下なのは当然として♪

   

とにかく、最後は片翼でも飛び立つ様子が感動的に描かれるはず。そう思ってたら、式終了の15分前、アレッ?!と驚いた。

   

クライマックスで、小さな片翼の飛行機は、大空や空中を飛んでない。舞台に接地したままの車椅子で、右手を伸ばしてるだけ。左手を懸命に上げようと頑張ってる姿は胸を打つけど、流れとして、それまでの動きとの対比、コントラストがちょっと弱い。

         

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      ☆     ☆     ☆   

感動的な音楽が流れて雰囲気を盛り上げる中、滑走路を勢いよく進む姿の直後にメインステージに上がるのだから、離陸して飛び立つ様子を描こうとしてるのは分かる。

   

ただ、NHKの杉浦友紀アナが台本通りに「今、飛び立ちました」と説明した瞬間では、まだハッキリ分からない状況だった。空の空気の流れが、プロジェクション・マッピングで表現されてるとしても。

         

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まだ滑走路か空港では?、また躊躇(ちゅうちょ)して止まったの?、というのが映像の正直な印象。風を表現する青い衣装のダンサー達が車いすを囲んで舞ってる状態で、それもかなりよく見ないと分からない。

     

すぐネット検索をかけたけど、その点を指摘するメディア報道はほとんど見当たらず。そんな中で、スポニチはハッキリと書いてた。

  

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「・・・本番直前の演出変更に『涙を流してしまって』」

  

式の3日後、日テレ『スッキリ』のインタビューで舞台裏を語ったらしい。1週間くらい前までは、ダンサー達が車椅子を持ち上げて飛ぶ演出になってたけど、安全面を考慮して予定変更。最も楽しみなシーンが無くなって、涙を流したとのこと。

   

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     ☆     ☆     ☆

この点をYouTubeの日テレ公式動画で確認しようとしたら、見事にその証言はカットされてる。そこで、他のネット情報やツイッター検索をかけると、情報は少ないものの、変更という話が番組で出たことは確認できた。

   

持ち上げるのが危険なら、小さなスロープでキャスト達がサポートして、高い場所に押し上げる方法もあったと思う。「上」への挑戦、変化はそれでシンプルに示せるし、お金も時間もかからない。

    

やはり、自分自身の目で見て正解。世の中ではほとんど認識されないこと、ほとんど語られない事実があるのだ。

  

別に、飛べなかったから失敗とか主張してるわけではないので、念のため。パラ開会式は全体的に、フツーに楽しめた。1ヶ月前のオリンピック開会式と同様に。

   

ただ世間的には、「障がい者の統一された活躍物語」の方が、「健常者の混沌とした苦悩の現実」よりも評価されるということだ。もちろん、五輪のおかげで、世論の反対ムードの大合唱が一気に少数派に転じてたのも大きいはず。

   

   

      ☆     ☆     ☆

では、最初から簡単に振り返ってみよう。NHKプラスはEテレの手話付きの映像になってて、なぜか手話の人が映像の右下部分と重なったままだったから、気になった。3人とも同じ位置に立ってたから、何か特殊な理由があるんだろう。

   

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20時スタートの1分半前から、カウントダウン開始。NHK実況アナウンサーは、杉浦アナと中野淳アナ。

   

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開会式のコンセプトが台本通りに説明される。聖火台の下が、珍しく四角い螺旋(らせん)形のスロープになってるのは、最後に分かった。和のデザイン様式を意識したのか、あちこちに残る障害の象徴なのか。

   

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オープニング・ビデオでは、1枚の小さな羽が、様々な力(歯車)と一緒にプロペラ飛行機になって飛び立つ様子が、ひそかにヒントとして織り込まれてた。たぶん、ほとんどの視聴者の目線は、人間(アスリート)の方を追ったはず。あるいはシンボルのスリー・アギトスの巨大バルーン(赤・青・緑)とか。

   

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そう。飛行機は空を飛ぶ乗り物なのだ。このオープニング・ビデオの構成から考えても、片翼の小さな飛行機は飛ぶ方が自然な流れだった。劇・ショーとしては。しかし現代社会、特に日本は、そうした芸術的な要素や側面よりも、安全性を重視。

   

   

     ☆     ☆     ☆

1分半ほどのビデオが終わった直後、まさかのアップ映像から開会式スタート。はるな愛!☆ 障害者ではないけど、性の多様性を表す有名人か。チャチャチャの手拍子のリズムと共に、上手い入り方だと感心。自分で公募を見て、応募したらしい。

   

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5(ファイブ)!、チャチャチャ♪、フォー!、チャチャチャ♪・・・リズミカルなカウントダウンの後、華やかな花火と航空映像で開幕。

       

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まずは、天皇陛下とIPC(国際パラリンピック委員会)会長がご登場。手を振る天皇の横で、菅義偉首相は深々とお辞儀。後ろの小池百合子・都知事は映らず。天皇は全体的に、五輪の時より表情が明るく見えた。国民の雰囲気の変化を反映してるのかも。

   

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続いて、開催国・日本の国旗、日の丸の入場。この辺り、旗の受け渡しも含めて、五輪とよく似た進行。ただ、この後のショーの大道具(気球、風車、スロープ)がアースカラーで目立ってるし、折り畳み椅子が並んでるのもパラの特徴。

   

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国旗掲揚、国歌・君が代斉唱。全盲の武蔵野音大生、佐藤ひらりさんが、キレイな声を響かせてくれた。最高の晴れ舞台。

  

  

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みんなが力を合わせて、ウブロの高級腕時計みたいな大きなムーブメント(歯車の動き、装置)になって、大きな風をおこす。そしてパラリンピックのシンボル、3つのアギトスのバルーンが浮かぶ。こんな感じで片翼の飛行機も持ち上げられる予定だったはず。

   

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ちなみに、アギトス(agitos)というラテン語の意味が、「私は動く」(I move)という公式解釈とは必ずしも合ってない点は、先日の記事に詳しく書いた。羅和辞典、羅英辞典で複数チェックしてある。

   

  

     ☆     ☆     ☆

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花火の後、国立競技場は暗転。地面にプロジェクション・マッピングで、

In just a few moments, athletes from all over the world will be arriving at the National Stadium.

(まもなく、世界中からのアスリート達が国立競技場に到着します)。 

日本語は「アスリートという名のさまざまな飛行機」となってて、分かりやすい翻訳&解釈。

  

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選手入場の最後は、日本選手団。陛下も都知事もにこやかに拍手。首相は、いつも表情が暗すぎて変化も乏しくて損してる。誰か指導者をつけた方がいいね。次の総裁選も狙ってるんなら。

  

  

    ☆     ☆     ☆

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そしていよいよ、物語のスタート。映像の英文でもあらすじが紹介されてた。

  

Welcome to Para Airport, where you are about to witness the arrival of a variety of unique aircraft carried to us on the three-colour winds of change.

ようこそ、パラエアポートへ。ここで皆さんは、様々な個性的エアークラフト(航空機、空の乗り物)の到着を見ることになるでしょう。3色の変化の風に乗って運ばれて来るのです。

  

Now let us begin with a story about a little one-winged plane. 

さあ、小さくて翼が1つの飛行機の物語を始めましょう。

  

細かい文法の話をすると、最初の文の aircraft に複数形のsが付いてないのは、集合名詞扱いということか。

   

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物語の途中には、橋本聖子・組織委会長と、IPCのアンドリュー・パーソンズ会長の挨拶。そして、「#WeThe15」というキャンペーンの紹介。世界で15%のわれわれ障がい者たちが、もっと輝けるように。

      

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円グラフのマークで、扇形の中心角は確かに15%くらいに見える。360度×0.15=54度♪

  

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天皇(HIS MAJESTY THE EMPEROR NARUHITO)の開会宣言、選手・審判・指導者の宣言なども終わった後、飛行機の物語の後半がスタート。

   

  

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片足の飛行機や、小さな身体の飛行機の励ましだとまだ勇気が湧かなかったけど、布袋寅泰ひきいるロックバンドの演奏とか、片足のダンサー、両脚ないダンサーの踊りに励まされて、遂に片翼の小さな飛行機も滑走路を加速。そして、宙に浮かずに飛行。

      

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そういえば、このプロジェクション・マッピングの飛行機も宙に浮いてない♪ 地面を流れてるだけ。五輪閉会式の五輪マークなら宙に浮いてた。

   

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WE HAVE WINGS。 私たちは多様で多数の翼を持ってる。最後は、3台の車いすのアスリートが力を合わせて聖火台に火をともして、式典は終了。番組も終了。いよいよ競技がスタート。

        

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     ☆     ☆     ☆

ある意味、予定変更で飛べなかったのはむしろ良かったとも言える。実際、空は飛べないし、地上のままでも、ベッドの上のままでも「飛ぶ」ことは出来るから。

     

と言いつつ、今のところ健常者のつもりの私も、まだ全く「飛び立って」ない。そのまま人生を終えて、最後だけ空に飛び立つというのも淋しいから、もうちょっと頑張るとしよう♪ 激励も力添えも無くても。

     

なお、今週は計16990字で終了。ではまた来週。。☆彡

     

       (計 4147字)

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