「ワクチン離婚」と「放射能離婚」の違い、ワクチン派vs反ワクチン派の対立・分断
コロナ問題が放射能問題(特に大震災以降)に似てるという指摘は今まで何度か書いたけど、もちろん、違いも大きい。
例えば、コロナウイルスの変異の仕方は分からないけど、放射性物質の変化は物理学的にかなり正確に分かる。コロナ感染症の患者は世界中に大勢いるけど、放射能の被害を認められた患者は少ない。原爆を含めても、割合的には。
夫婦の離婚について考えたことは無かったけど、たまたま昨日ネットで「ワクチン離婚」の記事を見かけたので、ちょっとだけ説明してみよう。大震災後の「放射能離婚」と同じような部分もあるけど、かなり違うものだ。
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普段ほとんど見ない、日刊SPA!の記事。「ワクチンを打つ=知性がないと主張する夫。“ワクチン離婚”を考える妻たち」。終盤の小見出しでは、「夫は洗脳状態にある」。
私は男性だから、まず気になるのが、この見出しの付け方やサンプル(事例)の取り方だ。愚かな男のせいで女が苦労してる・・といった感じの見出しや文章は、当然(?)、女性の執筆者に目立つものだ。
もちろん、それが正しいかどうか、良い記事かどうかは別の問題。この記事は、全体的にはビミョーな内容だった。
参考やキッカケにはなるけど、仮名の妻2人に取材した(形になってる)だけで、悪しき反ワクチン派として扱われてる夫には取材してないし、統計データや他の報道への目配りもない。
ただし、最後のまとめ方はパランスが取れて穏当だった。「ワクチンに対する考え方は人それぞれであり、現時点では『これが絶対に正しい』というものもない。・・・・・・一刻も早いコロナ収束を願うことしかできない」(終)。
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これを読んだ男性ブロガーの私は、直ちにGoogleの検索オプションを使って、「ワクチン離婚」の完全一致検索を実行。今現在、実質的にはほとんど、この合成語の使用例がないことを確認した。
続いて、「ワクチン離婚」の普通の検索を実行。めぼしい記事は少ない中、目立ってるのがNHKの記事。21年8月10日の番組『フェイク・バスターズ』、「新型コロナワクチンと誤情報」をわりと詳しく紹介してた。
こちらは取材ディレクターが男性で、一つの家庭だけを紹介してるけど、夫と妻の両方の意見を聞いてる。スパの記事とは逆に、妻が反ワクチン派で、夫が困ってるパターン。子どもや両親にまで影響が及んでるらしい。
さすが、国営テレビの記事。イラストも多くて分かりやすいし、最後には救いもあるし、よく出来た記事とも言える。
☆ ☆ ☆
しかし私にとっては、NHKの記事は、スパよりも致命的な欠陥を持ってるように感じられた。やや遠回しながら、反ワクチン派が間違いだと決めつけてるからだ。
それは、「誤情報」、「科学的根拠」、「フィルターバブル」という言葉の使い方にハッキリ表れてる。記事の最後あたりで、こう書いてた。
「ユカリさんは今もまだ、ワクチンへの不安がぬぐいきれたわけではないと言います。それでもジュンさんのすすめに応じて、科学的根拠に基づく情報に意識的に触れるようになりました。少しずつですが、『フィルターバブル』から抜け出しつつあります」。
つまり、妻のユカリさん(だけ)は、怪しい情報や誤情報に触れてる内に、ネットでそういった情報ばかりに囲まれてしまって、外部の正しい科学的情報が分からなくなってるというのだ。悪しきフィルターで作られたバブル(泡)に閉じ込められてるみたいに。
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誤解を避けるために書いておくと、私は反ワクチン派ではないし、twitterやYoutube動画のコロナ情報など、ほとんど見てない。
ただ、私は高齢者ではないし基礎疾患もないしBMI(体格指数)も低い健康体だから、(自分にとって)ワクチン接種が正しいともあまり思ってない。実際に打つ、打たないはまたちょっと別の問題として。
NHKの主張に対しては直ちに、「あなた達『も』、フィルターバブルに閉じ込められて、他の情報が見えなくなってるのでは?」とか、問い返したくなるのだ。理屈や議論に慣れてる人なら、すぐ機械的に生じる疑問だろう。
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公平に見るなら、誰もが色んなフィルターバブルの中に入ってるし、それでも外の情報には時々少し触れることが可能だし、泡の種類が変わることもある。「フェイク・バスターズ」と名乗るのなら、まず自分たちを囲んでる微妙な情報やバブルと向き合うべき。
NHKというより、このディレクターや番組自体は、主流専門家バブル、政府公式発言バブルの中にいるわけだ。その泡の外をよく見ると、専門家にも非主流の人達がいるし、政府の公式発言もよく読むと微妙な内容を含んでる。
例えば「政府 ワクチン」で検索してトップに出る官邸ページから、厚生労働省の説明に飛ぶと、「・・・・・・こうしたことをまとめると、日本において、新型コロナワクチンの接種が原因で多くの方が亡くなったということはありません」という結論で締めくくってる。
このまとめ方自体が政治的で一方的なもので、主流専門家たちと共通の特徴なのだ。
同じ文脈から、別のまとめ方をすることも可能。例えば、「接種が原因で『少数』の方が亡くなった『可能性』は残されています」とか。非常に大勢の人(数十%)に副反応が見られてるのだから、死ぬ人が少数いる方が自然。
そもそも、接種の直後、急に死んだとされる人なら色々実在する。因果関係は不確定にせよ。
違う方向からの異論・反論も可能だ。「接種しないことが原因で多くの方が亡くなったということはない(全国で1日に数十人ほど)。」とか、「接種したことが原因で多くの方が副反応に苦しんだということはあります」とか。
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話が「ワクチン離婚」からズレて長くなって来たので、ここで統計データを見てみよう。政府CIO(主要情報管理部)ポータルで、21年9月6日時点でのワクチン接種状況を見ると、男女別の接種率は次の通り(小数点以下は四捨五入)。
1回目 2回目
男性 51% 39%
女性 54% 44%
女性の方が接種率が少し高いけど、その差は小さい。しかも、ワクチンの優先接種の対象となった65歳以上の高齢者人口で、女性が男性より500万人近く多いことを考え合わせると、ワクチン接種への積極性に男女差はほとんど無いとも言える。
この点から考えると、ワクチン離婚騒動における男女の立場は、あまり大きくは違わないだろうと思われる。他の様々な要素を考慮しても。
☆ ☆ ☆
一方、放射能離婚はもっと男女差が大きくて、女性の方が放射能を嫌がる。だから、それほど嫌がらない男性とは意見が合わなくて、子どもを連れて遠くに自主避難する女性も出て来る。
放射能に対する抵抗感は、各種の統計データで女性の方が高いことが示されてる。例えば、世論調査で反原発・脱原発の割合を見ると、男性が5~6割、女性が7~8割くらい。私の周囲を見ても同様。
放射能の場合、別に物理的に新しい物質や現象ではないので、ある程度の計算や予測が可能で、結果的には大体合ってた。要するに、いわゆる「低線量被ばく」のダメージを合わせても、それほど大きな実害は無かった(と思われる)のだ。
だから放射能離婚騒動には、理論的・学問的な対立はほとんど無かった。単なる一部の家庭内の主観的・感情的対立に近かったのだ。
☆ ☆ ☆
ところがコロナの場合、生物学的・医学的に「新型」のウイルスで、いまだに分からないことが色々あるし、変異も複雑多様。したがって、ワクチン離婚騒動も微妙で複雑になる。
そうなると、NHKの「国営放送」的な記事にも、意外と実用的な意味が出て来るのだ。要するに、相手の立場に寄り添って、本気で話を聞くこと。聞いて正しい応答を返せるわけではないけど、聞くこと自体が和解や妥協、納得の糸口になることは期待できる。
何とか我慢してる内に、やがて(数年後には?)新型コロナもただの風邪みたいになるだろう。離婚せずに我慢するか、離婚した後の生活で我慢するかはさておき。
短いコネタとしてトッピングするつもりだったのに、長くなったから独立した記事としてアップしとこう。あっ、恋愛の「コロナ別れ」みたいな記事もall aboutにあった・・とか思いつつ、ではまた明日。。☆彡
(計 3361字)
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