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地球環境保護と反原発、半世紀前のSF小説の21世紀的変奏~新ドラマ『日本沈没』第1話

このドラマ初回の5日前、ノーベル物理学賞が地球物理学に対して授与されたのは、偶然ではないだろう。20世紀末から21世紀の現在まで、地球レベルの非常に大きくて複雑なシステムが注目を浴びるようになってる。

    

日本沈没という(架空の?)現象も、地球レベルのプレート・テクトニクスが大きな原因となってる。これ自体は人間がどうすることも出来ない自然現象だが、沈没の人為的な原因なら対処可能。

   

人為的な原因は、ドラマだと、東山首相(仲村トオル)と世良教授(國村隼)が開発を先導するCOMS(コムス:Celstec Origin Mining System)とされてる。実質的にCO2を出さない海底のクリーンエネルギー、セルスティックをポンプで抽出するシステム。

   

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     ☆     ☆     ☆

これは脚本家・橋本裕志らが、原発を婉曲表現して敵役にしたものに見える。ドラマの日本民政党のCOMS=現実の自由民主党の原発。処置に困ってる放射性廃棄物を安全な(?)地底に埋める案なども意識してるだろう。

       

ドラマの企画の進行中、自民党の菅首相らは炭素を減らすエネルギーとして、原発にも注目してた。ドラマと同様、2050年の温室効果ガス実質ゼロを目指すグリーン成長戦略。そして、TBS・毎日グループは、基本的に反原発のリベラル・メディアなのだ。

  

ちなみにセルスティックという言葉の意味と語源は、まだ不明。セルには、天国という意味もあるようだから、天国のテクノロジーという意味合いかも。そこにアトミック(原子力の)を掛け合わせたとか。

   

   

     ☆     ☆     ☆

さて、このドラマは、何度も映像化されて来た小松左京の同名のベストセラーSF小説が原作。1973年に刊行で、当時は分かりやすい公害を受けて、環境「庁」が出来た頃だ(1971年)。しかしまだ、分かりにくい地球環境の保護という動きは強くない。

    

原作はまだ読んでないが、当時としては最新のプレート・テクトニクスの理論を既に重視してたようで、文学部出身(京都大学)としては先進的な知性の持ち主。死の直前に起きた原発事故については、遺稿で人災だと語ってたそうだ。

    

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上は、ドラマの中での解説シーン。北から延びる北米プレート、東から広がる太平洋プレート、南から延びるフィリピン海プレートが、関東の南岸あたりでぶつかり合ってる。高校の地学か何かで習った話で、私は驚きながらも半信半疑だった。

   

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上は、日本列島を(南東くらいから?)水平方向に見た断面図。地球温暖化によって、海面が上昇し、海水圧が増加して、その負荷が海底プレートをより不安定なものにしてしまった。そして、スロースリップ(ゆっくりした滑り)現象によって、プレート上部に亀裂が生じる。

  

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これまた素人には真偽不明の説明だが、エンドロールの「地震学監修」には、山岡耕春、篠原雅尚という名前があった。山岡は名古屋大学大学院教授で地震予知連絡会会長、篠原は東大教授で海底の構造や変動が専門。信頼できるのだろう。予知はともかく。

   

   

     ☆     ☆     ☆   

ただ、プレート・テクトニクスという考えは、今でもそれほど確立した理論ではないような印象がある。有力で主流の仮説といった所か。

     

地球の表面を少数のプレートが覆っていて、そのゆっくりした移動と接触、ズレによって陸地や地震を説明するものだが、その前からあるマントル対流説との関係が曖昧に見える。下はマントル(mantle)の対流と、それに連れた表面のプレートの動き。英語版ウィキペディアより。マントルの下、内側が、核。

  

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今では日本の学者が、マントル対流などをプルームと呼び直して、プルーム・テクトニクスというものを新たに提案してるらしい(仮説)。

     

このプルーム(plume:羽毛)という言葉は、マントルの上昇流を、羽毛みたいに舞い上がる煙に例えたもの。そういえば、ドラマの主人公、環境省の天海啓示(小栗旬)がスキューバ・ダイビングで日之島の近くに潜った時、海底の裂け目から煙が吹き上がってた。あれはプルームのイメージも入ってるのかも。

   

下図は、拡散してるが出典不明。岡山大学と書いてるサイトもあるがリンク切れで、インターネット・アーカイブで見ても自作の図かどうか微妙。プルームのことがプリュームと書かれてるのは、フランス語読みだろうか。

              

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     ☆     ☆     ☆

ところで、伊豆大島の東に、「日之島」という小島は実在しない。もちろん、あれは「日本列島」の象徴、シンボルだ。

   

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変人研究者の田所(香川照之)が、最初に沈むと予言して、第1話の最後に本当に沈んでしまった島。

   

沈む前に天海がスキューバで潜った時、不気味な黒い裂け目を発見。実はあれが、一番最初の日本列島の象徴になってた。

   

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青森(または北海道)から、中国・四国あたりまでを暗示した映像。ここから関東の部分にクローズアップして、そこから黒い煙が噴き上げて来た。したがって、物語の全体は大きく次の流れになってる。

   

 日之島の海底の「日本列島・関東」の異常 → 日之島の沈没 → 関東の沈没 → 日本の沈没

    

最後に、日本列島の全体が沈没するのかどうかは不明。エンドロールでは、「今後の展開」として、沈没の確率らしきものが下のように示されてた。北海道50%、東北70%、関東・東海・北陸・近畿80%、中国・四国70%、沖縄60%。九州は見えず。

      

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北海道だけ残るとすると、例の怪しい企業がボロ儲けすることになりそうで、物語的にはちょっと変な感じもある。果たして、どうなるか。。

  

  

     ☆     ☆     ☆

いずれにせよ、ドラマの副題にわざわざ「-希望の人-」と入れてるのだから、何か希望が残るのだろう。

  

初回放送当日の朝日新聞・朝刊、テレビ欄コラム「試写室」も、「今後描かれるだろう『希望』に期待が膨らむ初回だ」と締めくくられてた(野城千穂・記者)。

   

切ないストーリーが好みの私としては、むしろ絶望的な悲しいエンディングを希望。しかし、一般にはどうしてもハッピーエンドや明るい話が好まれるようで、特にドラマは明らかにその傾向が強い。例外は、同じ脚本家で同じ時間帯の『華麗なる一族』とか。

   

代わりに、もっとマニアックな科学理論が描かれることに期待を膨らませるとしよう。暇が出来たら、原作小説やマンガも読んでみたい。どちらもキンドル読み放題のリストに入ってた。1973年の映画も、動画配信で見たいと思ってる。それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

       (計 2600字)

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