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日本人を新型コロナウイルスから守るファクターXの1つ、ヒト白血球抗原HLA-A24~理化学研究所の論文発表の簡単なまとめ

日本で一般的に発表されたのが21年12月8日。メディア報道の多くが9日と10日。既に1週間遅れとなったが、マニアック・ブログなりの独特のこだわりを入れつつ、新たな仮説をまとめてみよう。

   

理化学研究所(=理研)の主張は、最も簡単にまとめるなら、次のようになる。

  

 日本人を新型コロナウイルスから守る謎のファクターXの1つは、日本人の多くが持つ「HLA-A24」だろう。

    

その鍵となる物質、日本人の6割近くが持ってるが、欧米人は1割~2割にすぎないとされる。TBSのニュース記事より。

  

   

    ☆     ☆     ☆

この妙な名前の物質が何で、どのように働くのか? 最も簡単に言うと、人体を守る白血球の型の1つだろう。しかし、もう少し説明し始めると、かなり難しい話になって行く。

   

以下、基本的には、理研による解説に即して説明する。理研の解説を普通に聞くだけ、読むだけだと、引っかかるポイントがあるので、そこは私が補足する。

  

ただし、先に書いておくと、この研究では、なぜ今年の夏の「第5波」が急上昇して急降下したままなのか、という最大の疑問点には答えてない。

    

あくまで、過去2年間、日本で新型コロナの被害が海外より少なめだったのはなぜなのか、その全体の理由を少し説明する話にすぎないので、念のため。

   

  

     ☆     ☆     ☆

まず、YouTube「理研チャンネル」、プレスリリース解説vol.8、「新型コロナウイルスに殺傷効果を持つ記憶免疫キラーT細胞 -体内に存在するもう一つの防御部隊-」から。動画はこちらから

  

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上図をフツーに見ると、中央にある不気味な大きな球体がウイルスに見えてしまうが、これは人体の細胞。その下側に、パープルに光るウイルスが付着(感染)したから、右側から、人体の防御部隊である水色のキラーT細胞が攻撃。よく耳にする抗体と共に、免疫機能を担ってる。

   

上図にいたる前の動きを、時間の流れに沿って図示してみよう。

  

① 紫色のウイルスが、右上から人の細胞に接近。

   

エピトープと呼ばれる小さな赤い粒々を、トゲトゲの先に持ってる。ウイルスのトゲトゲは、スパイクたんぱく質という呼び名でお馴染みの悪役。

  

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一方、HLA-A24というのは、人間の細胞が持つ色々なツノ(角)の1種で、善玉(良いもの)。例えば、電車内で暴れる乗客を駅員や警備員らが捕まえる時のさすまた(刺股)みたいなもの。図では、ピンク色のツノがHLA-A24で、他の色のツノは別のHLAだ。この時点でまだ、HLA-A24の先に赤い粒々は無い。

    

   

    ☆     ☆     ☆

② 紫のウイルスが人の細胞にくっついて感染すると、トゲトゲの先に持ってた赤い粒々(エピトープ)が細胞内に侵入。ピンク色のツノ(HLA-A24)の先に集められて、右側から水色のキラーT細胞が攻撃。

     

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③ キラーT細胞が、感染した人間の細胞とウイルスを破壊。1つの戦いが終了。

   

  

     ☆     ☆     ☆

理研の解説を読んで引っかかったのは、ウイルス、ウイルスのエピトープ、人の細胞、人のHLA-A24、人のキラーT細胞という5つの要素の結びつきが、今一つハッキリしてなかったことだ。

   

①ウイルスが人の細胞に感染。

②ウイルスのエピトープが、人のHLA-A24に集められる。

③そこを人のキラーT細胞が攻撃して破壊する。

  

もう1つ、なまじ「抗原」という言葉を知ってると、引っかかる点がある。抗原というものは、辞書・辞典・報道の説明の大部分では、「外側から入って来て人体に抗体などを生むもの」といった感じになってる。

   

ところが理研の説明では、最も重要な人体の善玉、HLAというものが、「ヒト白血球抗原」とか「ヒト白血球型抗原」と書かれてる。これは「Human Leukocyte Antigen」の直訳だが、「ヒト」と言いつつ、まるで外から来た悪役みたいに聞こえてしまう。

   

この場合の Antigen とは、語源のまま、「Anti」(抗する)「gen」(もとになる物)。対抗するもとになる物、抵抗を生み出すものという意味で、外からではなく体内で待ち構えてるのだ。

  

その辺りの分かりにくさや混乱を避けるため、例えば日経新聞の報道では、HLAとかその訳語の代わりに、「『A24』という白血球の型」とだけ書いてた。

   

  

      ☆     ☆     ☆

最後に、英語の原論文も見ておこう。オンラインの『Communications Biology』、21年12月2日。著者、清水佳奈子、藤井眞一郎ほか。わずか12日で、既に8000近いアクセスだから、科学論文の発表としては成功。内容のチェックは今後、世界中で行われるはず。

           

 Identification of TCR repertoires in functionally competent cytotoxic T cells cross-reactive to SARS-CoV-2

 新型コロナウイルスに対して交差反応する、機能的に優れた細胞傷害性T細胞における、T細胞受容体の諸特性の同定

  

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論文タイトルの日本語訳は私のものだから、専門的にどうなのかは不明。超訳すると、「普通の風邪のコロナだけでなく新型コロナにも効く、T細胞の仕組みを発見」といった感じか。手助けするHLAではなく、防御部隊であるT細胞がメインになっていた。日本人特有のファクターXといった、日本人好みの話も避けてある。

  

  

     ☆     ☆     ☆

なお、善玉のHLA-A24が、悪役のウイルスのエピトープを捕まえたようなイラストも添付されていた。

  

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上側にある、緑色の小さな細い線が、エピトープらしい。一般向けの解説では赤い粒々だったが、実際は線状の形なのか。それより、HLAの方が遥かに複雑で大きな形になっていて、色々と意味が含まれているのだろう。

    

今後は、今回の発見を治療薬、予防薬の開発につなげたいとのこと。一般市民としては、あまり日本人の幸運な体質に頼り過ぎることなく、変異株オミクロンに警戒しよう。今日の所はこの辺で。。☆彡

    

        (計 2426字)

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