歩行者と自転車、移動と停止の折れ線グラフと数列の連立漸化式~2022年・共通テスト・数学ⅡB・第4問
令和4年の大学入学共通テストが終了して、1週間が経過。数学Ⅱ・Bの平均点は、中間集計だと100点満点で46点。数学Ⅰ・Aの40点ほどではないけど、かなり低い点数になってて、ネットでも難しかったという情報が多かった。下は大学入学センターHPより、1月19日の発表pdf。数学ⅡBの受験者数は14万人弱。
どのくらい難しかったのか、数学好きとしては興味があるので、ⅡBでも1問だけ記事にしとこう。解答と解説・感想。
☆ ☆ ☆
個人的に、ランニング・ウォーキング・自転車が趣味なので、やはり第4問に目が行く。選択問題、配点20点。
一見、非常に変な設定で意味不明だけど、20kmとか50kmとか、長距離の個人的ウォーキングの補給を身内が自転車でやってると思えば、一応の筋は通る。スポーツドリンクとか、軽い食べ物とか。ウェアや雨具の受け渡しもあり。
新型コロナで普通の大会はほぼ中止が続いてるから、個人で地道に運動する人が多いのだ。ひょっとすると出題者は、長距離の散歩かジョギングが趣味なのかも。私も去年と一昨年は、1人でフルマラソンを走ってるから、誰か補給してくれればな・・とか思う気持ちはよくわかる。
ちなみに、試験終了後すぐアップしてある数学ⅠAの記事は次の通り。他に、国語の小説記事も2本アップしてある。
共通パラメーターを持つ2次方程式・2次関数のグラフ・2次不等式の関係と必要十分条件~2022年・共通テスト・数学ⅠA・第2問〔1〕
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(1) 解答
最初、歩行者の直線の式は、y=x。
また、点(2,0)を通る自転車の直線(右側)の式は、y=2(x-2)
連立して、交点の座標を求めると、
x=2(x-2) ∴ x=4 ∴ y=4 ・・・アの答
よって、そこから右に1だけ進んだ点(自転車が歩行者と別れて自宅に戻り始める時)の座標は、(5,4)。
そこを通る自転車の直線(右側)の式は、y=-2(x-5)+4=-2x+14。
よって、x切片(x軸との交点のx座標)では、-2x+14=0 ∴ x=7
よって、a₂=7+1=8 ・・・イの答
また、自転車と別れる点(5,4)より右側の歩行者の直線の式は、
y=1(x-5)+4=x-1
よって、x=a₂=8における歩行者のy座標は、
b₂=8-1=7 ・・・ウの答
(解説・感想) 上では図形の式と方程式できっちり解いたが、試験場なら、図を見て直感的にすぐ数値を見抜く方が速い。マークシート試験の基本戦略の1つ。数直線の図が無いので、xy平面のx軸(時刻)と混同した人もいるはず。
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点(an,0)を通る自転車の直線(右側)の式は、y=2(x-an)=2x-2an
点(an,bn)を通る歩行者の直線(右側)の式は、y=1(x-an)+bn=x-an+bn
連立して、交点の座標を求めると、
2x-2an=x-an+bn ∴ x=an+bn ・・・エの答
y=(an+bn)-an+bn=2bn ・・・オの答
(別解: 本当は、自転車が点(an,0)で歩行者が点(an,bn)だから、自転車が追いつくまでに時間bnかかると考えた方が速い。追いつく点のx座標は、an+bn。追いつくまでに歩行者はbn進むから、追いつく点のy座標はbn+bn=2bn。これは花子さんの考えの応用。)
上で求めた交点のすぐ右側の点は、(an+bn+1,2bn)。
そこを通る自転車の直線(右側)の式は、
y=-2{x-(an+bn+1)}+2bn=-2x+2an+4bn+2
よって、x切片では、0=-2x+2an+4bn+2
∴ x=an+2bn+1
したがって、an₊₁=an+2bn+2 ・・・カ、キの答
また、点(an+bn+1,2bn)を通る歩行者の直線(右側)の式は、
y=1{x-(an+bn+1 )}+2bn=x-an+bn-1
x=an+2bn+2とおいて、bn₊₁を求めると、
bn₊₁ =(an+2bn+2)-an+bn-1 =3bn+1 ・・・クの答
bn₊₁+1/2=3(bn+1/2)
∴ bn+1/2=(3のn-1乗)×(b₁+1/2)=(5/2)(3のn-1乗)
∴ bn=(5/2)(3のn-1乗) -1/2
よって、ケの答は、7。
数列{an}の漸化式にbnの一般項の式を代入すると、
an₊₁=an+2{(5/2)(3のn-1乗) -1/2 }+2
=an+5(3のn-1乗)+1
よって、階差数列の一般項は、 an₊₁-an= 5(3のn-1乗)+1
∴ an=a₁+Σ{5(3のk-1乗)+1 } (k=1からn-1まで)
=2+5{(3のn-1乗)-1}/(3-1)+(n-1)
=(5/2){(3のn-1乗)-1} +n+1
=(5/2)(3のn-1乗) +n-3/2
よって、コの答は、9。
(解説・感想)
誘導や選択肢があるとはいえ、共通テストの配点20点の問題としては確かに難しい。20点ということは、時間配分は12分間しかないし、問題を読むだけでも時間がかかってしまう。bnはともかく、anを試験場で正確に求めるのは大変だろう。
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(2) (解答)
b₅=(5/2)(3の4乗) -1/2 =(5/2)×81-1/2=202
b₆=(5/2)(3の5乗) -1/2 =(5/2)×243-1/2 > 300
よって、bn=(5/2)(3のn-1乗) -1/2が初めて300以上になるのは、n=6の時。
その直前について調べてみる。
a₅=(5/2)(3の4乗) +5-3/2=206
点(206,0)を通る自転車の直線(右側)の式は、
y=2(x-206)=2x-412
また、(a₅,b₅)=(206,202)を通る歩行者の直線(右側)の式は、
y=1(x-206)+202=x-4
両式を連立して交点の座標を求めると、
2x-412=x-4 ∴ x=408 y=404
(別解: (交点のx)=206+202=408。(交点のy)=202+202=404 )
これは既に、歩行者がy=300の位置に到着した後。
したがって、歩行者がy=300の位置に到着するまでに、自転車が歩行者に追いつく回数は、4回。 ・・・サの答
さらに、a₄=(5/2)(3の3乗) +4-3/2=70
b₄=(5/2)(3の3乗) -1/2=67
点(70,0)を通る自転車の直線(右側)の式は、
y=2(x-70)=2x-140
点(70,67)を通る歩行者の直線(右側)の式は、
y=1(x-70)+67=x-3
連立して、交点のx座標を求めると、
2x-140=x-3 ∴ x=137 ・・・シスセの答
(別解: (交点のx)=70+67=137 )
(解説・感想)
やはり、これをわずか12分間で試験場で完答するのは難しい。たぶん、anの式以降が出来なかった学生が大部分だろうし、それが出来たとしても、サの答をうっかり5としてしまうミスが多かったと思う。
配点20点の内、3点+2点+2点で7点失うか、4点失うか。最難関の大学を目指す受験生の多くは、満点を目指してただろうから、試験直後にはショックを受けたはず。泣き出した受験生がいたとかいう目撃情報は事実だろう。
とはいえ、条件はみんな同じで、全体の出来も良くなかったのだから、あまり気にしなくていい。ただし、来年の出題者はこの厳しい結果をフィードバックして、多少は問題を簡単にするべきだ。
自暴自棄になった学生は、何をするか分からない。そう、まざまざと教えてくれたのも、今回の共通テストだった。まさかの刺傷事件のショックで実力を十分発揮できなかった学生も、少なからずいるはず。それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 3084字)
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