普通の文字列を回文の連結へと分解する方法と、回文ファンの「幸いさ」~2022年・共通テスト・情報関係基礎・第2問
これは正直、記事タイトルに「奇問」とか「悪問」という言葉を入れたくなったほど、顔をしかめてしまった問題だ。
こんな問題、教室内で制限時間内に受験生が解けるのか?、と疑問に思って調べると、中間集計の平均点は約60点。私がそれほど苦にしない数学IAの平均点40点より、はるかに高い。わずか数百人しかいない情報関係基礎の選択者にとっては、普通の問題らしい。
ということは、単に、私がこの種の問題に慣れてないということか? 実際、去年の情報関係基礎の第2問は、そもそも問題を読んでなかった。たぶん、長過ぎて読む気がしなかったんだと思う。
去年の第2問は4ページ。今年の第2問は5ページを少し超えてる。60分の試験で、100点満点中の配点35点だから、単純計算すると、持ち時間は実質21分。確かに、設問の1つ1つは簡単だが、この長くて奇妙な問題文を読むだけで精神的に疲れてしまった。
逆順にしても元と同じになる「回文」を数学的に考えたことなど一度もないし、そんな作業に「幸いさ」を感じるような人間は、回文を名前に持つ「小池ケイコ」さんくらいだろう。コイケ・ケイコ。しかし、少しでも頭を慣らすために、記事を書いてみる。検索アクセスはほとんど期待できないにせよ。。
☆ ☆ ☆
問1 (解答)
回文でない選択肢は、「えのとらとらえ」だから、1。 ・・・アの答
長さ8の文字列「とらのこのこのこ」は、最少で4つの回文の連結となる。分解の仕方は、「と・ら・の・このこのこ」、「と・ら・のこの・このこ」、「と・ら・のこのこの・こ」の3通り。
よって、「とらのこのこのこ」の「幸いさ」=8÷4=2 ・・・イの答。
長さnの文字列の幸いさは、
それ自身が回文であるとき、最少で1つの回文(の連結)だから、
(幸いさ)=n÷1=n ・・・ウの答
長さ1の回文しか現れないとき、最少でn個の回文の連結だから、
(幸いさ)=n÷n=1 ・・・エの答
☆ ☆ ☆
問2 (解答)
回文「ばししば」は、文字列「しばししばまた」の2文字目から5文字目までだから、対応するのは、
(x,y)=(2,5) ・・・オ、カの答
x文字目からy文字目までが回文のとき、その両隣のx-1文字目とy+1文字目が「同じ文字」(0・・・キの答)ならば、x-1文字目からy+1文字目までは回文となる。
(x,y)=(4,4)から始めると、このマスは〇なので次は(3,5)(ク、ケの答)のマスの〇、×を考える。3文字目は「し」、5文字目は「ば」だから、(3,5)のマスは×と決められる。
すると、左下の(2,6)(コの答)のマスは、文字を調べずに×と決められる。よって、さらにその左下の(1,7)(サの答)のマスも、文字を調べずに×と決められる。
この方法で図1を作成するとき、文字を調べずに×と決めるマスは、右上に×があるマスだから、全部で8個である。 ・・・シの答
☆ ☆ ☆
問3 (解答)
最後の「タ」で終わる回文は、「タイガーガイタ」と「タ」だから、「⑤→⑫」と「⑪→⑫」。よって、スの答は、後の選択肢の5。セの答は、後の選択肢のb。ただし、スとセの答は交換可能。
「ガ・タ・イイ・イタイ」は、「⓪→①→②→④→⑦」に対応するから、ソ、タの答は後の選択肢の2、4。
⓪から②へは、「⓪→①→②」のたどり方だから、最短距離2 ・・・チの答。
⓪から③へは、「⓪→①→②→③」のたどり方だから、最短距離3 ・・・ツの答。
⓪から⑤へのたどり方は、最後に矢印「②→⑤」(テの答は2)をたどるのが最短で、最短距離は3 ・・・トの答
結局、⓪から⑫へのたどり方は、最短距離4 ・・・ナの答。
そのときのたどり方は、「⓪→①→②→⑤→⑫」と「⓪→①→⑥→⑪→⑫」の2通り。 ・・・ニの答
☆ ☆ ☆
この記事の入力終盤、4回もWindows10(またはIE11)がフリーズしてしまった。これは滅多にないことで、ここ1年では最悪。おそらく、記号(特に番号と矢印)と色使いと図の組合せが複雑だからだと思うが、よほど私と相性が悪い問題ということかも。
それはさておき、問2と問3が上手くつながってないのは気になる。問2を活かすのなら、問3は番号付きの区切り線を導入するのではなく、普通の線分の連結にすればいい。
上のように分割すれば、問2を活かして、(1,1)+(2,2)+(3,5)+(6,12)のように書けた。+の記号の代わりに、→を用いてもよい。ここで再び、図1のような表を書かせることもできたのだ。
他にも、「最短距離」という言葉の導入が役に立ってないどころか、非常に考えにくくしている。というのも、「最短距離」の分割では、矢印が「長く」なるのだから。普通に「矢印の最小本数」と呼ぶ方がはるかに良い。
☆ ☆ ☆
ひょっとすると、わざと考えにくい書き方を用いて、考える力を要求してるのかも知れないが、ただ単に考えにくくするだけなら、もはや学問ではない。
「しばし柴又」はともかく、「コイケケイコ」や「がたいのいいタイガーがいた」といった回文の面白さが消えてしまうような問題設定は残念だ。
とはいえ、元をたどると、要するに受験者が非常に少ない分野だからこそ、こうした出題でも許されてしまったのだろう。その意味では、真の問題点は、科目選択の極端な偏りかも知れない。大学の側の要請にせよ、受験生の側の好みにせよ。
それでは今日はこの辺で。。☆彡
(計 2230字)
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