ポリュビオスの暗号(表)と解読方法の実例・解説~江戸川乱歩『黒手組』&ドラマ『真犯人フラグ』第14話
昨日(22年1月30日)の23時過ぎから、当ブログの6年前の記事にアクセスが急増した。
点字を「南無阿弥陀仏」で表す換字式暗号~江戸川乱歩『二銭銅貨』(追記:頭脳王)
このアクセス急増パターンは、過去の経験上、テレビ番組の影響がほとんどだ。若者のテレビ離れとか、よく話題になるけど、まだテレビの影響力は圧倒的。例えば個人視聴率5%なら、視聴者は約500万人。その内の100人に1人がネット検索するだけで、5万人になる。しかも、SNS(ライブは別)と違って、テレビはほぼ同時にみんな調べるのだ。
テレビ番組表で調べても、何の影響なのか分からなかったから、「二銭銅貨」とかでツイッター検索。ところが、めぼしいツイートはほとんどヒットせず。諦めかけた時、ようやく分かった。
日テレのドラマ『真犯人フラグ』第14話の後半、江戸川乱歩の別の短編小説『黒手組』とポリュビオスの暗号が登場したらしい。TVerで動画をチェックすると、簡単な暗号を丁寧に解いてたけど、ドラマだけだと正確にはよく分からないはず。ここで簡単にまとめ記事を書いとこう。
以下、(1)ポリュビオスの暗号表、(2)江戸川乱歩『黒手組』の暗号、(3)ドラマ『真犯人フラグ』の暗号、3つに分けて説明する。
☆ ☆ ☆
(1)「ポリュビオスの暗号」
ドラマでこの名前で呼ばれてたものは、英語だと「Polybius square」(ポリュビオスの正方形)とか呼ばれてる。暗号を作る表が正方形になってるのだ。下は英語版ウィキペディアより。
上図が、もとのギリシャ文字の変換表。ちなみにポリュビオスは、発明者ではなく、この暗号を完成させて有名にした古代ギリシャの歴史学者らしい。詳細は不明ながら、ポリュビオス自身の主著『Histories〔歴史〕』にそんな話が書かれてた。いずれにせよ、例えば「B」なら、上から1段目、左から2列目だから、「12」と表す。
(☆追記: まんたんウェブが軽い記事で「ポリュビオスが発明した」と書いてるが、おそらくライターは主著や英語情報を調べてない。上の主著の引用文に、「クレオクセヌスとデモクレイトゥスが考案して、私が完成させた・・」と書かれてる。)
逆順で「21」にしてもいい。要するに、表の縦と横の並びを使って、元の1文字を2つの数字に分解して、暗号とする。文字を交換(入れ換え)するタイプだから、「換字式暗号」の一種。公務員試験にたまに出題されてる。
なお、英語のアルファベットだけ見ると「ポリュビウス」と読みたくなるけど、元のギリシャ文字を普通に読むと「ポリュビオス」になる。どちらでもいいような事だけど、気になる人は気になるはず。海外の人名・地名の日本語表記で「あるある」の話だ。この「あるある」は、ドラマの暗号シーンで芳根京子が語ったセリフ。
☆ ☆ ☆
(2)江戸川乱歩『黒手組』の暗号
これは、無料の電子図書館・青空文庫で公開されてる短編小説だから、誰でも自由に読める。ただ、かなりヒネリが入ってるので、ドラマより分かりにくい。
これは、文学作品とテレビの差でもある。一部の人(作者自身も含む)に高く評価されたいか、それとも、大勢の人に気に入ってもらいたいか。簡単に言うと、10万人が相手か、1000万人が相手か。その違い。
上が、手紙の形の暗号。基本的には、左端の漢字1文字だけで解読する。
それぞれの漢字の偏(へん)と旁(つくり)がそれぞれ何画かをまとめたのが、上の表。名探偵、明智小五郎が書いたらしい♪
偏は1~11、つくりは1~4まで登場してるから、あいうえおの五十音に関するポリュビオスの表(広い意味)を使う。正方形ではなく、長方形で、その方が応用範囲が広い。
上の解読表は私が作ったもの。先ほどのギリシャ文字の時と違って、右から左へと進んでるのは、ドラマの映像がそうなってたから、向きを合わせただけ。別に左から右に進む形で書いても同じことだ。ちなみに、アは11ではなく、単なる1になってる。これは、11だと、漢字と対応しないから。
アスイチシシンハシエキ
実は、元の手紙だと、シとハに対応する漢字の右側の文字にバツ印が付いてた。それは濁点を表すものと考えると、「アスイチジシンバシエキ」。
「明日一時新橋駅」。これが解読後の文で、それを使ってさらに名探偵の推理が続いてた。
☆ ☆ ☆
(3)ドラマ『真犯人フラグ』の暗号
上が元のメール文で、「ひかりんご」とかが暗号なのではなく、下の数字がポリュビオスの暗号。2215433311135143・・・。長々と数字を書いてると、Googleの検索ロボットに、怪しい記事だと誤解されてしまう♪ 主人公の西島秀俊らはすぐ気付いて、原稿用紙で解読してた。
解読表は、あいうえお五十音ではなく、アルファベット26文字。上下5段、左右6列だから、正方形に近い長方形。「ポリュビオスの暗号」という台詞を入れたかったということか。
ただし、ツイッター検索だと、「ポリュビオスの暗号」と書いたツイートはたかが20ほどしかヒットしなかった。みんな聞き取れなかったのか、入力が面倒だからか。下は、私が実際に解読してみた結果で、内容的にテレビ画面と一致してる。
GUNMAKEN SHIMODAGUN FULUMACHO ICHIKYUNANAHACHINOROKU 。
当ブログでは、以前はよくテレビドラマのこの種のネタを記事にしてたけど、映像に細かい書き間違いが混ざってることがよくある。
ところが今回は、長い暗号なのに1つも間違ってなかった。脚本家の高野水登と監修担当スタッフが優秀というか、マジメなのか。番号の切り方がちょっと変なのは、もともと暗号という設定だから、良しということで。
ひらがなにすると、「ぐんまけん しもだぐん ふるまちょう いちきゅうななはちのろく」。
群馬県 下田郡 富留間町 1978-6 ということか?
芳根京子のスマホの画面の左下に、「群馬県」という文字は確認できたけど、その右の町名がTVerでは読み取れなかった。地デジのテレビ画面なら読み取れたのかも。ちなみにツイッター検索で「真犯人フラグ 群馬県」を調べると、たった1人しかツイートしてなかった♪ まあ、実在しない町名だし、江戸川乱歩とポリュビオスの方が食いつきやすいのは当然。
というわけで以上、元のポリュビオスの暗号、乱歩『黒手組』の暗号、ドラマ『真犯人フラグ』の暗号について簡単に説明をまとめてみた。ではまた。。☆彡
(計 2664字)
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