連続する3つの整数の関係(高校・大学の三項間漸化式、不定方程式)~桜蔭中学2022入試問題・算数1(3)
新型コロナで混乱する中、女子の最難関と言われる桜蔭中学の入試が2月1日に行われました。いつものように、朝日新聞の朝刊(2月5日)で算数の問題を紹介。中学受験でおなじみ、SAPIXの全面広告です。
私の目にすぐ留まったのは、問題1の(3)。これは、見た目は全く違ってますが、もともと数学(=中学以上の算数)では有名な話だし、男子の最難関・開成中学の入試問題3の最後と似たタイプです。要するに、連続する3つの数の間に関係があって、前の2つから次の1つが次々と決まる数の列の話。
ちなみに開成中については、既に先日、記事をアップしました。
マス目をぬる暗号の作り方は何種類か(高校・大学の3項間漸化式)~開成中22年入試、算数・問題3の解き方
☆ ☆ ☆
本来は高校や大学の数学で習う話ですが、全国トップクラスの小学生なら、ハイレベルな問題でも解いて欲しいということなのでしょう。
では、これから解き方を解説しますが、私は大人なので、小学生がどう解くのか、どう教えられてるのか、よく分かりません。中学・高校だと、分からない数をx(エックス)と表して、それについての等式(=でつないだ式)を書いて、そこからxの値を出します。方程式を解く、と呼ばれる基本的な操作です。
小学校でも、分からない数を四角で表して、その値を求めるという問題は時々あるでしょう。実際、今年(令和4年)の桜蔭の問題1(1)はこうなってました。
だから、この記事でも、分からない数をまず丸(〇)や三角(△)で表して、後でその値を求めるやり方で解いてみます。本当は、まったく違う小学校の解法もあるのかも知れません。
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(3) 次のようなルールで整数を1つずつ選んでいきます。1つ目は1以上の整数を選びます。2つ目は1つ目より大きい整数を選びます。3つ目以降は、直前に選んだ2つの数の和である数を選びます。 たとえば、1つ目の数が1、2つ目の数が2であるとき、 3つ目の数は3、4つ目の数は5、5つ目の数は8、 ..... となります。
① 1つ目の数が2、4つ目の数が24であったとき、2つ目の数は、〔エ〕です。
② 8つ目の数が 160 であったとき、1つ目の数は、〔オ〕、2つ目の数は〔カ〕です。
(解答)① 1つ目の数が2、2つ目の数が 〇 とすると、3つ目の数は、2+〇。4つ目の数は、2+2×〇。
よって、4つ目の数が24のとき、 2+2×〇=24。 だから、〇=11 ・・・エの答
② 1つ目の数を〇、2つ目の数を△とすると、3つ目の数は、〇+△。4つ目は、〇+2×△。
(5つ目)=2×〇+3×△ 。 (6つ目)=3×〇+5×△ 。 (7つ目)=5×〇+8×△ 。 (8つ目)=8×〇+13×△。
よって、8つ目の数が160のとき、 8×〇+13×△=160
この式で、△は〇より大きいので、8×〇よりも13×△の方が大きい。したがって、13×△は160の半分(=80)より大きいので、△は7以上。
△=7のとき、8×〇+91=160 これをみたす〇は整数でない。
△=8のとき、8×〇+104=160 よって、〇=7。確かに〇は△より小さい整数なので、〇=7、△=8は答の1つ。
念のため、他には答がないことを確認する。
△=9のとき、8×〇+117=160 これをみたす〇は整数でない。
△=10のとき、8×〇+130=160 これをみたす〇は整数でない。
△=11のとき、8×〇+143=160 これをみたす〇は整数でない。
△=12のとき、8×〇+156=160 これをみたす〇は整数でない。
△が13以上のとき、13×△は160を超えてしまうので、不適当。
以上より、答はただ1通りのみ。 〇=7、△=8 ・・・オ、カの答
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上の解答で、△=8で上手く行った後、小学生なら、それを答として終わりです。どうせ、答は1通りのみだし、時間もないし、説明も書かなくていいから。
でも、高校や大学以上では、そこで止めずに、他にも答があるのではないか?、と考えることが大切。そこで実力に大きな差がつくのです。
△=8なら「十分」、問題に合ってる。でも、△=8は「必要」なことなのか? 実は他の△の値でもいいのではないか? こうした考え方は、論理的な算数(中学からは数学)の基本の一つです。一昨年まであった大学入試センター試験では、毎年のように出題されてました。
ちなみに、パズルや詰め将棋の問題を自分で作る場合も普通、答が1つでないといけないので、他の余分な答がないように注意して作ることになります。
☆ ☆ ☆
なお、(次の数)=(直前の数2つの和)という関係を、高校以上では次のように書きます。
(n+2番目の数)=(n+1番目の数)+(n番目の数)
例えば、nが1なら、
(3番目の数)=(2番目の数)+(1番目の数)
nが2なら、
(4番目の数)=(3番目の数)+(2番目の数)
今回の桜蔭の問題と同じことですね。
☆ ☆ ☆
上の難しい式で、もし最初の2つが、順に0と1だったら、0,1,1,2,3,5,・・・で、「フィボナッチ数列」と言います。
最初の2つが、順に2と1だったら、2,1,3,4,7,11,・・・で、「リュカ数」(の列)と言います。どちらも数学者の名前から来てます。
開成中学で出た話は、次の式で表せるものでした。
桜蔭と似たやり方で、次の数を、直前の2つの数で作って行く式。これを高校以上では、「三項間漸化式」と言います。来年の中学入試でも出るかも知れませんね。
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最後に、8×〇+13×△=160という式は、中学以上では、アルファベットのxとyを使って、こう書きます。
8x+13y=160
これだけだと、xとyが何なのか、定まらない式。「不定方程式」と呼ばれるもので、高校や大学入試でも、整数であるとか、yの方が大きいとか、色々と条件をつけて答を出す問題が出てます。
それでは、今日はこの辺で。。☆彡
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