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「テルアビブ空港乱射事件」50年、出所した日本赤軍の元最高幹部・重信房子が「リッダ闘争(斗争)」と呼ぶ理由・背景

この記事を書く直前、念のために日経新聞HPと読売新聞HPで「テルアビブ」の検索をかけると、50周年に関する記事はそれぞれ1本しかヒットしなかった。NHKだと0本で、重信房子の記事に「イスラエルの空港」と書かれてるだけ。

   

ところが、私が購読してる朝日新聞だと、紙面掲載記事だけで4本、他にサイトの記事もある。なるほど。やはり朝日は左派・リベラル新聞なんだと改めて確認できた。

   

今回、私が気になったのは単純なことで、「テルアビブ空港」という名前の空港は存在しないらしい。22年5月27日の朝日新聞の記事は、大見出しが「日本赤軍 テルアビブ空港乱射50年」となってるが、本文では「テルアビブのロッド国際空港」と書かれてる。

  

日本語のウィキペディアだと、項目名は「テルアビブ空港乱射事件」となってるものの、続く冒頭の要約文では、「イスラエルのテルアビブ近郊都市ロッドに所在するロッド国際空港(現:ベン・グリオン国際空港)で発生した・・・」と書かれてる。

  

それなら「ロッド空港乱射事件」とか呼ぶべきでは?・・と思ってたら、重信房子が「リッダ闘争」と呼んでるのを見て、単純な疑問がさらに深まったのだ。この錯綜した呼び名には、何か意味や背景があるはず。。

   

   

      ☆     ☆     ☆

というわけで、まずイスラエルの詳しい地図をネット検索してみると、意外なほど見当たらない。これは政治的な理由なのか? 安全保障とか、国家としての承認の問題とか。

   

英語で検索すると、ウィキメディアの地図が一応ヒット。テル・アビブ(TEL AVIV)と空港のマークならあるが、ロッドという都市名は無い。

           

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ところが、あの事件は、英語版ウィキの項目名だと「Lod Airport massacre」(ロッド空港虐殺)なのだ。そこから「Lod」に飛ぶと、アラビア語でリッドとかラッド、リッダと読むらしいことは分かった。

  

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ただ、グーグル翻訳で発音を聴くと、冠詞付きで(?)「アラッド」と聞こえる。リッダとか、アラッダには聞こえない。パレスチナ的な発音がリッダということか?

    

英語版ウィキには、位置もごく簡単に示されてた。確かに、テル・アビブの近郊(南東)の市らしい。

   

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これがどうして「テルアビブ空港」となったのか。おそらく、テルアビブの方が大きくて分かりやすいということだろうが、50年前の日本人のほとんどは「テルアビブ」と言われても分からなかったはず。

   

マスメディアの判断かと思って、当時の朝日新聞を調べてみると、第一報は1972年5月31日の夕刊。イスラエルの現地時間なら5月30日、日本時間だと5月31日の午前5時半過ぎだったらしい。小見出しにも、続くリード(要約)にも、テルアビブ空港と書かれてた。この表記が、現在まで続いてるわけか。

   

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ただ、その後の新聞報道も見てみると、大がかりな続報というわけでもなかった。はるか中東の事件ということもあるし、既に連合赤軍のあさま山荘事件も解決した後で、新左翼の過激派に対する社会的な関心が薄れていたことの表れかも知れない。

    

    

      ☆     ☆     ☆

一方、2022年5月28日の朝、出所した、日本赤軍の元最高幹部、重信房子(76歳)。下は、読売新聞HPより

  

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重信の直接の容疑は、オランダのハーグ事件への「間接的」関与だが、確定判決は懲役20年。その他諸々の事件が影響してるのは間違いない。ちなみに上の読売の記事では、「イスラエルの空港」という表現がある。

    

重信の出所直後の質疑応答では、「リッダ斗争」という表記があった(産経新聞HP)。出所に合わせて公刊された著書『戦士たちの記録』(幻冬舎)では、帯や本文で「リッダ闘争」と書かれてる。もちろん、そんな堅苦しい闘争用語より、美人とか可愛いと言われてたらしい顔写真に目が行く人が多いだろうが。

          

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       ☆     ☆     ☆

「リッダ」は「ロッド」だとしても、「闘争」という呼び方にはかなり違和感がある。しかし、彼女的にはあれは闘争らしい。 「斗」争という漢字の使い方は、彼女の個人的な好みだろうか。

    

一応、出所の際の手記、質疑応答と、上の著書の試し読み部分を軽く読んでみると、それなりに筋が通ってるような気もしてしまった。

  

要するに、人を大量に殺したのは悲惨な事実だが、それを「乱射」「虐殺」「テロ」などと呼ぶかどうか。その点が問題、論争点なのだ。

  

   

     ☆     ☆     ☆

確かに、ロシアの侵攻を受けてウクライナは激しく応戦してるが、ウクライナがロシア兵を「虐殺」したというような否定的表現は全く見かけない。それどころか、日本や欧米では、拍手するような雰囲気もある。

        

また、過去のアメリカの歴史を見ても、人を大量に殺してるのは間違いないが、それはあまり(orほとんど)問題視されない。それどころか、空港乱射の1万倍の死者を出した広島・長崎の原爆投下でさえ、米国的には正当化されてる。

    

それなのに、どうしてパレスチナのために行ったイスラエルへの「報復」攻撃だけが、ネガティブに、乱射・虐殺・テロとされるのか? 重信が「ダブル・スタンダード(二重基準)」だと批判するのは一理か半理ある。彼女に言わせると、テロリズムとかテロリストなどという言葉自体も、非常にアメリカ的なものらしいのだ。

  

  

      ☆     ☆     ☆

とはいえ、戦争にせよ、抵抗・解放運動にせよ、それぞれ特有の複雑な事情があるので、一概に同一視することもできない。日本赤軍が本当にパレスチナ解放のために戦ったのかどうかもまだよく分からないというか、かなり疑問ではある。

      

とりあえず、報道における殺傷行為の呼び名には注意することにしよう。なお、アラビア語のウィキペディアで空港の事件を見ると、非常にあっさりとした説明しかなかった。パレスチナでは日本赤軍が英雄視されてるという情報には、ちょっと注意が必要かも知れない。たとえ、岡本公三が今でも亡命先のレバノンで厚遇されてるのは事実としても。

  

それでは今日はこの辺で。。☆彡

   

   

P.S. 22年6月1日の朝日新聞・夕刊では、1面トップで生き残りの岡本の記事が大きく掲載された。見出しの2行目には、「テルアビブ空港」乱射事件50年と書かれてるが、次のリード冒頭では「ロッド空港(現ベングリオン空港)」と書かれてた。

      

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        (計 2555字)

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