令和3年度、文科省・情報活用能力調査の調査問題例と正答(小中高、4年1~2月)、感想とレビュー
ネットを適当に飛んでたら、たまたま、文部科学省の情報活用能力調査のニュース記事を発見。軽い記事にちょうど手頃の内容なので、感想記事にしとこう。今週は月火の2日だけで7000字超も書いてるから、ごく簡単なレビュー。単なるまとめや紹介ではなく、批判も織り交ぜる。
約1年前に行われた、情報活用能力の調査結果「の一部」が、令和4年(2022年)12月27日に公開された。小学5年生、中学2年生、高校2年生が対象。「速報結果」だから、後ほど詳しい分析も示されるのかも知れない。実際、前回の同種の調査(平成)については、詳しい結果が公開されてる。
ただ、今後の調査も考えて、基本的には問題は非公開とのこと。コンピューターを利用するCBT形式だから、小学生にとっては端末の操作だけでも大変。
問題には、小中高の共通問題が多いが、中高のみの問題もある。多数の問題から、生徒ごとに問題のセットを変えて出題。これでは、普通に考えれば、各生徒が異なるテストを受けたことになってしまうが、IRT(項目反応理論)によって「同一尺度で得点化」できるとのこと。
このIRTの信頼性や公平性に疑問を感じるが、その点はここでは省略。今回、公開された3問を見てみよう。どれも小中高の共通問題。
時間は30分×2とだけ書かれてるが、その時間で何問解くのかも公開すべきだろう。情報処理では速度が大切で、人それぞれの差も開く。1人あたりの問題数さえ公開したくないということだろうか? 受験者や実施した学校は把握してるはずだから、それで十分だと。配点も総得点の計算方法も書かれてないのに、総得点の分析だけかなり詳しく公開されてる。
☆ ☆ ☆
では、調査問題例1。環境問題のウェブページの正確な理解。
残念ながら、5項目のリンク先の内、最初の1項目である「オゾン層の破壊」しか公開されてない。要するに、これだけで正しい選択肢が1だと分かる、と担当者は考えてるのだろう。2~5の選択肢は明らかに間違い、という考えもあるのかも。
ポイントは、最後の1文。「フロンガスは温室効果ガスでもあり、地球温暖化を防ぐためにもフロンガスの規制は重要です」。これを読んで、最も適切な選択肢が「フロンガスは地球温暖化をもたらす」だと判別させる。
既に、環境の知識をかなり学んでる中高生ならともかく、小5の生徒には内容自体が分かりにくいと思うし、項目名と選択肢の内容もズレてる。この量の説明があと4項目分もあるのなら、情報量も多過ぎ。社会人でも、それら全体の説明を正確に理解する機会はかなり少ないはず。クリックして、全員にすぐリンク先が表示されたのかどうかも気になる所だ。
正答率は、小学生32%、中学生58%、高校生73%。小数点以下は、引用者が四捨五入。3問中、この問題で最も小中高の差が開いてるのは、環境問題の知識が響く問題だからだろう。
☆ ☆ ☆
次に、調査問題例2。明るさセンサーのプログラム(フローチャート)の完成。将棋の藤井五冠王を意識してるのか、「聡太」が主人公。
これは、AとBの両方が合ってる場合のみが正解だろうか? 結果に明示されてないが、正答率が2つに分かれてないので、そう考えるのが自然か。正答率は、小学生41%、中学生62%、高校生69%。高校生の低さがやや目立つ。
おそらく、間違いの多くはBだろう。明るさセンサーが「明るい」と感知した時、「ライトが消える」を正答としてるが、問題文にそのような事は書かれてない。「暗くなったらライトが光る」と書かれてるだけだから、不十分か不親切な問題文だと感じる。
それ以上に間違いを増やしてしまったのでは?と思われるのは、センサーとライトを分けてること。家庭向けだと、それらは一体化されてるのが普通だろう。そう思ってる生徒にとっては、AもBも「明るさセンサーが・・」と書かれたカードを選んでドラッグするのは自然なこと。そちらが先に挙げられてるし、問題文の主体もセンサーだし、時間がないからだ。
私が出題者なら、問題文に、センサーとライトが別物であることを明記。また、「暗くなったらライトが光る」ではなく、「暗いならライトが光り、明るいならライトが消える」と書く。
「暗くなったら」と「暗いなら」が別の条件だということ、「暗いなら」の方が明確だということは、日常言語の論理における基本的知識だろうが、正確に理解・区別してる人は少ない。
☆ ☆ ☆
最後に、調査問題例3。フォルダの正しい理解と選択。
携帯端末(スマホ、タブレット)を軽く使ってるだけの生徒だと、フォルダ自体が分かりにくいはず。フォルダではなく、「アルバム」という名前で呼ばれてることも多い。
例えば、iOSの「写真」アプリも、Androidの「フォト」アプリも、「アルバム」という名前を使ってる。デスクトップのフォルダの中のフォルダ、という三重の入れ子構造も、基本的にPCの特徴だろう。携帯端末では、二重の構造を使う程度。
これは、旅行フォルダを開くだけで正解と判定されるのだろうか? 正答には、「『旅行』フォルダを開いた状態で『次へ』ボタンが押されているもの」と書かれてるが、問題文には、「進む」を押してくださいと書かれてる。
「次へ」と「進む」の関係の曖昧さが気になるが、正答率は高いから、誤解は少なかったのだろう。小学生52%、中学生76%、高校生84%。
☆ ☆ ☆
以上、情報活用能力を求めることも、調査することも正しいと思うが、問題や調査、公開には気になる点も多かった。今後の改善に期待しよう。
1人1台の学校用タブレットが確保されてる場合、PCとは別に、タブレットの調査もあっていい。それに対して、スマホは個人的な物だから、調査には使いにくいかも知れない。
なお、キーボードによる1分間あたりの文字入力数は、小学生16文字、中学生23文字、高校生28文字。3分間で、総文字数285文字の入力を求めたそうだが、これも具体的な入力内容が全く書かれてないので、何とも言えない。
あまり入力が速くないのは確かだろうが、漢字が多いとか、英字の大文字・小文字・半角・全角の切り替えが多いと、面倒だと思う。入力しにくい記号もある。多数の変換候補が並んで、下の方でようやく表示されるとか。数字の半角・全角の区別は微妙だが、正しく指示されてただろうか。
ともあれ、いつの間にか長くなったので、今日はそろそろこの辺で。。☆彡
(計 2649字)
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