アナログの音のデジタル化(標本化=サンプリング、量子化、符号化)~高校『情報Ⅰ』(新必修科目)
前から気になってたが、高校の新しい必修科目『情報Ⅰ』の授業内容が分かって来たので、とりあえず簡単な記事を1本書いとこう。これを機に、記事のカテゴリーに「情報」を新設したので、今後は関連記事が増える予定。
ちなみに先日、共通テストの試作問題の記事ならアップしておいた。参考までに。
データの正誤のパリティチェックと16進法、論理回路と真理値表
~2025年(令和7年度)共通テスト試作問題・情報Ⅰ
☆ ☆ ☆
さて、文科省の新学習指導要領に基づく情報Ⅰのカリキュラムは、一言でまとめるなら、広く浅い内容になってる。
ただ、浅いといっても新しい科目なので、生徒はもちろん、大人の多くもよく知らないと思われる話が多数入ってる。現役の高校1年生がどう感じるのかは分からないが、半ば理数系の大人の私にとっては、全体的にとても興味深い内容だ。
例えば、文字情報や画像の扱いについては、今までも何本か記事を書いてるし、ある程度の知識やイメージは持ってる。しかし、音声の具体的な処理方法についてはほとんど理解してなかった。アナログの音をデジタル化するとか、0、1の2つの数字で表すといった話なら何となく分かるが、理論(の初歩)は最近はじめて知ったこと。
自分の復習も兼ねて、自作の図と共にまとめ直してみよう。参考にしたのは、最大手・東京書籍の教科書『情報Ⅰ』。2章・情報デザイン、17節・音のデジタル表現。数学で昔からある2進法の話と、文字コードの話の次に置かれてる。
☆ ☆ ☆
今、上のようなアナログ波形の音があったとしよう。横軸は時間(右向きが正)。縦軸は音の大きさでもいいはずだが、ここではカリキュラムに従って、電圧としとこう。普通の空気振動としての音を、マイクで機械に入力して、電気信号の波に変えた所から考える。
適度な時間間隔で、飛び飛びの電圧の値を獲得する(赤い縦線の長さ)。この作業が「標本化」(サンプリング)。時間間隔が標本化周期で、上図では1マス分の横の長さで表されてる。
標本の電圧(赤い縦線の長さ)に最も近い整数値(ここでは0以上7以下)を求める。これを「量子化」と呼ぶ。例えば、3.7なら4にして、7.2なら7にする。
上図では左から、1 4 5 7 5 2 2 5 4。これらは3ケタ(=3ビット)の2進数に直せるので、「量子化ビット数」は3。
ちなみに、たまたま2.5とかの中途半端な値になった時は、2とするか3とするか、あらかじめ決めておけばよい。ただ、完全に真ん中の数になることは確率的にほとんど無いはず。
最後に、それらの数字を3ビット(=3ケタ)の2進数で表す。これが「符号化」で、結局こうなる。
001 100 101 111 101 010 010 101 100
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続いて、計算問題を解いてみよう。音楽CDの1分(=60秒)あたりのデータ量を求めてみる。
1秒間に44100回のサンプリングで、それぞれ16ビットの数値で表す。さらに、左右2つのチャンネルで録音すると考えて、
(1分あたりのデータ量)
=16×2×44100×60 bit(ビット)
=84672000 bit
=10584000 B(バイト)
≒ 10000 KB(キロバイト)
≒ 10 MB(メガバイト)
ちなみに、性格には1KB=1024B、1MB=1024KBだが、1024だと単位変換の計算が面倒だから、1000で済ませることは珍しくない。テストでは、1024で割り切れる値を出題するか、近似値計算にするか、変換不要にするか、どれかだろう。
とにかく、50分あたりだと約500MBだから、確かにCD1枚分の容量に近くなる。なるほどと納得。といっても、実際にはまだここからデータを圧縮するのかも知れない。
☆ ☆ ☆
最後に、サンプリングの周期について。つまり、どのくらいの時間間隔で電圧を獲得するか。
上図の青丸のように、音の波と同じ周期(横2マス分の時間)で電圧を取ると、青丸が横に並ぶだけで、上下の波にならない。ちなみに曲線は、英語版ウィキペディアのsin(サイン)曲線。すなわち、高校数学や物理の正弦波。
そこで、上図のように、元の音の波の半分の周期(横1マス分の時間)で電圧を取ると、青丸だけで上下の動きを再現できる。ただし、最善のタイミングで取る必要がある。
慣れてないと分かりにくい話なので、上図では周期を矢印で示した。赤い矢印の長さが、元の周期。青い矢印の長さが、サンプリングの周期。
☆ ☆ ☆
元の波の周期は一定とは限らないので、元の最小の周期の半分以下でサンプリングする必要がある。さらに、最善のタイミングで取るのはほとんど不可能だから、半分「未満」にすべきはず。要するに、なるべく細かく電圧をサンプリングするということ。
アナログ信号をデジタル信号へと変換する時、元の最小周期の半分未満の周期でサンプリングする必要がある。
ところで、周波数は周期の逆数。つまり、「周波数=1/周期」だから、周期が半分未満なら、周波数は2倍超。
というわけで、「標本化定理」(サンプリング定理)が導かれる。
「アナログ信号をデジタル信号へと変換する時、元の最小周期の半分未満の周期でサンプリングする必要がある」。
大まかに言えば、なるべくきめ細かくサンプリングしないと元の音が再現できないということ。これだけで既にかなりの時間を取られてしまったので、今日のところはこの辺で。。☆彡
(計 2225字)
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