バスケットボールのシュートの軌道(リングへの放物線)、高身長プロ選手と普通女子~23年共通テスト数学ⅠA・第2問〔2〕
2023年1月15日(日曜)に実施された大学入学共通テストの数学ⅠAは易しくて、去年より大幅に平均点が上がるらしい。
河合塾の予想では、前年の平均38点から19点も上がって、今年は57点。5割増しの大きな変化だから、出題者サイドもレベル設定に苦労してるようだ。来年はまた少し難しくなるのかも。
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そんな中でも、あくまで高校3年生くらいの若者が興味を持てそうな問題作りが意識されてる。今回、扱う数学ⅠAの問題は、バスケットボールのシュートの軌道。背が高くて腕も長くてジャンプ力もある(?)プロと、わりと普通の女子の比較。わりと普通といっても、この女の子もかなり背が高い選手だろう。
バスケットボールやバレーボールは、明らかに身長が高い方が有利で、トップ選手は極端に背が高いことが多い。野球もしばしばその傾向があるから、私はサッカーや卓球の方が公平なスポーツだと思う。あるいは、体重別の格闘技とか。
もちろん、そんな事は問題を解くのに関係ないので、さっそく問題と解答、解説に移ろう。問題文は長いが、面倒な数式変形や計算の結果は教えてくれてるので、かなり親切な問題だと思う。平均点を上げるための工夫や努力が見られる。
ちなみに、私は受験生ではないブロガーなので、家で気楽にやってるが、記事を書く前に、何も書かずに暗算で解いてる。今回なら、最後の小数とルートの計算まで。朝日新聞のパズルを解く時もなるべく頭の中だけで解く。詰将棋みたいなもので、頭の体操。脳トレ。慣れると、頭で解く方が速いことも多い。
ただし、先日、記事にした漢字抜け熟語(難易度5)は難し過ぎたので、解く時に文字を書いてしまったし、ネット検索も何度もかけてしまった。さすがに、59コの漢字と63コの熟語が相手だと、脳内メモリーが不足する。
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問題文は、河合塾(産経)のHPから借用した。
第2問 〔2〕
(1)(解答)
y軸方向に-3、平行移動した放物線を考えると、点(0,0)、(4,0)を通るので、
y=ax(x-4)=ax²-4ax
よって、C₁の式は、上の放物線をy軸方向に+3、平行移動して、
y=ax²-4ax+3 ・・・キ、クの答
∴ y=a(x-2)²-4a+3 ・・・ケ、コの答
(感想) 軽いウォーミングアップだが、平行移動せずに解くと、少しパワーと時間をロスするかも。キ、クの答と、ケ、コの答が全く同じなのも、試験場では不安になるはず。
C₂の式は、y=px²+qx+3とおいて、点(4,3)の座標を代入すると、q=-4p+1/4と求められる。
∴ C₂: y=px²-(4p-1/4)x+3
a=-2、p=-1とすると、グラフは下の通り。関数グラフソフト「GRAPES」使用。C₂の頂点の方が僅かに右にあるのが確認できる。
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(2)(解答)
C₁の平方完成した式より、「プロ選手の『ボールが最も高くなるときの地上の位置』」は、2。Mのx座標4との距離は2。
C₂の平方完成した式より、「花子さんの『ボールが最も高くなるときの地上の位置』」は、2-(1/8p)。これはリングの左側のはずなので、Mのx座標4との距離は、2+(1/8p)。
C₂の2次の係数pは負の数だから、2+1/8p < 2
よって、「花子さんの『ボールが最も高くなるときの地上の位置』の方が、つねにMのx座標に近い」。サの答は、選択肢の2。
(感想) 計算しても簡単だが、計算しなくても2つの放物線のグラフを大まかに(頭の中で)書くだけでわかる。特に、花子さんのシュートの軌道が低い場合をイメージすると、最高点がリングに近いことが分かりやすい。計算で解く場合、pがマイナスの値だということを忘れてしまうと間違える。
なお、「花子さんの『ボールが最も高くなるときの地上の位置』」2-(1/8p)は、pがマイナスのまま0に近づくと、無限に大きくなる。これは、ボールがリングの下から上に通る場合なので、ゴールやシュートとは認められない。また、それが可能なのかどうかも微妙になる。ボールの上側がリングの下側に当たりそうなので。
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(3)(解答)
再び、y軸方向に-3、平行移動した放物線で考える。
y=ax(x-4)が、点(3.8、(√3)/15)を通るので、
(√3)/15=-0.76a
∴ a=-(√3)/(15×0.76)
=-(√3)/11.4
=-(5√3)/57 ・・・シスセソの答
(1)のC₁の式(平方完成)より、シュートの高さは、-4a+3。
上のaの値を代入して、
20√3/57+3≒3.6
よって、シュートの高さは、プロ選手が約3.6、花子さんが約3.4。
したがって、プロ選手の方がボール約1個分(直径0.2)、高さの値が大きい。
タの答は、選択肢の0。チの答は、選択肢の0。
(感想) ADの長さくらいは受験生に求めさせたくなる所だが、そこで間違えるとその後も全滅するから、平均点が大幅に下がってしまう。それを避けるために、丁寧な誘導やヒントが付けられてる。ただ、√3の値は、1.732だけで十分のはず。近似値1.73でも問題は解ける。
数学好き、理屈好きにとっては、線分DMが円と接するという考えが引っかかる。それは、わりと考えやすい十分条件であって、必要十分条件を求めるには、放物線が円と接して、しかも常に放物線の方が上にあるための条件を計算することになる。その場合、この問題設定よりは、放物線の軌道が僅かに低くなる。
ただ、計算が面倒だし、実はセンターや共通テストの数学記事はアクセスがかなり少ないので、これ以上は止めとこう。国語の方が遥かにアクセスが多いし、情報の記事も数学よりはアクセスが多いのだ。数学の解答や解説は誰でも書きやすいし、予備校や塾と似たものになるからだろうと想像。
それに対して、情報の記事は珍しいし、国語は内容的に全く独自のものを書くことが可能。ともあれ、今日のところはこの辺で。。☆彡
(計 2456字)
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