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羽生・元七冠、筋悪の好手8二金で勝利!、藤井五冠の終盤の猛攻・10回連続王手も逃げ切る~王将戦・第2局

この対局の前まで、羽生善治九段(元・七冠)は藤井聡太五冠に1勝8敗。公式戦でほとんど負けてた上に、最近の藤井はますます強くなってるので、今回の王将戦は藤井の4-0を予想してた人も少なくないはず。

     

ところが実際は、第2局(2023年1月21日・22日)で、早くも1勝1敗の五分になった。羽生はあらかじめ研究してたのか、中盤でリード。そのままキープして、終盤の藤井の無理攻め(?)を誘い、一気に勝利につながった。大阪府・高槻市、山水館にて。

   

  

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無理攻めと書いたのには、3つの理由がある。まず、結果的に失敗で、終局まで挽回のチャンスは全く無かったから。次に、2種類のAI(白ビール&水匠電竜)の評価値をじっと見てても、常に先手・羽生が有利という形勢判断になってたから。さらに、藤井自身の対局後の感想で、早くからダメそうだと思ってたことを告白してたから。

     

藤井の最後の王手10連続は、ほとんど単なるファン・サービス、メディア・サービスだろう。まあ羽生も、逃げ切れる自信はそれほど持ってなかったらしいけど。

   

視聴者は今だと、特に終盤、AIの評価を見てれば形勢が分かってしまう。少なくとも、即詰みがないことは100%分かるのだ。攻め続けてもダメだということも分かる。AIが示す手が、途中で受けに回るから。

      

ただ、AIやプロの解説なしに、終盤の形勢判断が正確にできる人は、ほとんどいないはず。見た目よりも変化が非常に多くて、AIの評価値や最善手も秒単位で刻々とあれこれ変化してた。

      

    

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上図は26手目。後手の藤井が7七角成で角交換した局面。毎日新聞HP、棋譜速報より。一応、戦型は普通の相懸かりだけど、この時点で早くもわりと珍しい変化になってる。先手の羽生の誘導に、藤井が乗った形か。盤面が見づらい程度まで縮小してるのは、意図的な配慮なので、悪しからず。

   

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羽生が1筋で端攻めを仕掛けて、藤井は角打ちで防御。8筋での飛車交換になる。上図(47手目)の時点で既に、先手の方が指しやすいと思う。後手は、持ち駒だった角を自陣に打ってしまってるし、2二歩がジャマになってる。この歩を打ってないか、2三歩だったら、後の展開は全く違ってた。

   

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右上で飛車交換&角金交換になった直後、羽生の59手目はまさかの8二金! こんな場所に打ち込むのは普通、角か歩だけど、大事な金駒(かなごま)の金(きん)を打つのは見覚えがない。筋が悪いし、普通の筋ではないから思いつかないのだ。

    

筋悪なのは、外見上、玉から遠い隅っこで遊んでる銀・桂・香しかない場所に、大切な持ち駒の金を手放して打ってるから。打った後なら、狙いは分かる。7二金、同金、5二飛車で、3二銀の1手詰めを狙う「詰めよ」であると同時に、7二の金取りにもなってる。

    

形ではなく、実利を重視するAI的な手だろう。羽生がAIで研究済みだったのかどうかは分かってないけど、実戦のこの局面でAIは8二金を推奨してたらしい(私は未確認)。

   

藤井が、4二玉で飛車打ちを防いだところで、第1日が終了。羽生の封じ手は、予想通り、2一飛の打ち込みだった。先手が指しやすい局面で、AI的には評価値300点前後のリード。勝利の確率なら、58%前後か。もちろん、人間同士の対局だと、プロ棋士でもまだ互角に近い。すぐに逆転可能な局面。

  

   

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先手は竜を作って攻勢。後手は馬を作って自陣に引き付けた後、さらに攻防の2四角で先手の玉頭をにらむ。そして上図が74手目。後手・藤井が7七銀。

  

ここはAI的には、後手が4一飛と自陣に打って、先手の竜を消せば、ほとんど互角だったらしい(水匠電竜)。元奨励会員アユムの将棋実況のYouTube動画より。

  

ただ、藤井は既に悪いと見てたようで、7七銀は逆転の望みをかけた勝負手だったようだ。先手が受けを間違えれば勝てると。

  

しかし、羽生は間違えなかった。同金、同馬に、5七銀打。先手の玉はかなり危なく見えるけど、何とか受かってるらしい。ただ、変化は膨大。途中で後手が受けに回る変化もあった。少なくとも、その方が手数は伸びたはず。

   

  

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上図の78手目、後手・藤井の7八飛。引退した大御所の「ひふみん」加藤一二三は、この手を批判してた。離して、9八飛と打つのが当然だと。

  

しかし、先手の間違いを誘う意味もあったらしい。例えば、すぐに6九銀と受けると、後手6六金。あと、この辺りはAIの評価も激しく揺れ動いてた。証拠のAI評価値の画像を2枚、載せとこう。順に、白ビールと水匠電竜。

  

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ただ、揺れ動く中での全体的な傾向としては、9八飛の方が評価が高かったと思う。いずれにせよ実戦では、7八飛に対して、羽生が最善手の4六歩で防御。同角には6九銀。ここでの6九銀なら大丈夫。4七の地点に玉の逃げ道が出来たのが大きい。後手が6六金と攻めて来ても、同歩、6七金に、4七玉と逃げれる。

     

6九銀以下、5七角成から、10回連続の王手を受けたけど、101手目・4八香と受けた所で藤井が投了。羽生は持ち時間もまだ1時間残ってた。藤井は残り9分だから、ほぼ使い果たしてる。

   

   

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終局図は日本将棋連盟の王将戦ブログより。時刻は17時56分。

   

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後手にもう1枚、香車か桂馬があっ「たら」、持って「れば」、2七銀打から詰みだったけど、勝負事に「たら」「れば」は禁物なのであった。先手に大量の持ち駒を渡してるから、後手陣はもはや防御不能。今さら4一銀とか受けても、2四角とかで簡単に詰み。

   

というわけで、元・七冠王の羽生が見事な勝利を収めた会心の一局だった。第3局は1月28日、金沢市にて。それでは今日はこの辺で。。☆彡

    

      (計 2334字)

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